カールから 聞きますソフィの 婚約者
「ソフィが呪われた女だと?」
「村で知らない奴はいない!本当だ!ちなみに、村長のステラも呪われた女だ!」
脳裏を、ソフィが俺と婚約したと聞いて驚き慌てふためく村人達、意を決して俺に何かを伝えなければならないソフィの涙が横切る。
「どういう事だ?カール!」
「エイジ、落ち着いて下さい!」
リックに言われて一息吐く。そして気が付いた。カールがすっかり怯えている。
「カール、すまなかった。話してくれないか?」
「ああ、だからもう骨は折らないで下さい、旦那!」
カールに対する態度は反省すべき点が多い。これでは俺がパワハラになっている。猛省だ。
「ステラは32歳、未婚です」
「ソフィは娘だろ!」
「ソフィはステラの兄夫婦の娘なんスよ」
「それじゃ、ステラは叔母さん?ソフィのご両親は?」
「死んだッス。8年くらい前に」
「それでソフィはステラが引き取ったのか?」
「ええ、正式に養女にしたそうです」
「それが何で呪われてるんだ?」
「ステラは4回、ソフィも2回、婚約者を亡くしているんスよ!」
ソフィに婚約者がいた事にショックを受ける。それで言う事に決心が必要だったのか!
「ステラの4人目の婚約者はソフィの両親と一緒に亡くなりました。その時にステラは結婚を諦めたらしいスよ」
「たまたまだろ!それにまだ若い!」
「呪われてるっていう噂が立って、それっきり縁談も無くなっているそうです」
8年前っていう事は、24歳!
いくらこの国の女性が早婚とはいえ、諦めるには早すぎでしょうに!
「なぁカール、ソフィも2回婚約者を亡くしたのか?」
「最初の婚約者はよく知っています。ソフィより5歳上の奴で、徴兵で隣国との紛争で戦死したそうです」
「それ、いつだ?」
「3年前ッスね」
ソフィ15歳の時に婚約者を亡くしたのか。
ん?
「リック、ソフィより5歳上って事は20歳だった筈だ。男の結婚はもっと遅いんじゃないのか?」
「社会的地位の低い職業はその限りではありません」
リックは感情を込めずに淡々と言う。エリートたる王宮魔術師からすると軽蔑視する事なのだろうか?
「次は領主の家来と婚約したんですけど、コイツも去年死んだそうッス」
「具体的にどんな奴だ?」
「それは知らねぇッス!ソフィだって数える程しか会ったことない筈ッスよ!」
カールから聞けるのは、これくらいだろう。
「ありがとう、カール。また何か有ったら頼む」
「旦那の言う事は何でも聞くから、あれはもう勘弁して下さい」
俺はカールの家を出て、村を回ってみる事にした。
リックはリックで見て回りたいらしく、それぞれ1人で村を回る。というより、ソフィの過去を知って多少なりともショックを受けた俺を1人にしてくれたのだろう。
気遣いに感謝だ。
村を見て回るといっても特に当てなど無い。考えを整理する時間が欲しかっただけだ。
ソフィに婚約者がいた、しかも2人共に死んでいる事は軽くショックである。実際は俺をどう思っているのだろうか?
経験不足にて、恋愛面のメンタルは硝子細工、というかプラモ並だ。
気が付くと今朝ソフィが連れて来てくれた麦畑を見下ろせる丘に来ていた。
麦畑では村人総出で刈り取りをしている。日本でもトラクターとかが導入される前は地域総出で田植えと稲刈りはしていたそうだ。
あの村人は機械なんか見たら腰抜かすだろうな。
収穫は今日明日には終わらないだろうが、黄金の海は完全な形ではなくなった。
ここにいると今朝の朝日に照らされたソフィを思い出す。
理由はどうあれ、あんな美女が好意を持ってくれるなんて今まで無かった。
過去なんか考えても仕方ない!大事なのはこれからだ!
踏ん切りが付いた俺はそのまま魔導書を斜め読みすると、スマホは充電する事にした。太陽電池で充電出来る充電器は常に通勤鞄に入っている。
会社の電源でも使おうものなら、あのケチ社長が煩いというより、怖い。充電の電気代なんていくらなんだよ、あのドケチ!
スマホの充電中はひたすら魔法の練習だ。大魔道士という触れ込みになっているので、多少なりとも出来るように成らなければ!
俺は順番通り土魔法から練習を始めた。
日も傾いた頃に気が付いた。土魔法を練習しまくっていたら、あっちこっち掘れるわ、不自然に盛り上がるわで、地形が変わってしまった。
やり過ぎ注意だな。