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異世界で 市民登録 やってみた

「あわぁ!」

「エイジ殿、昨夜はご盛んだった様ですね」

 生欠伸を繰り返す俺に、昨夜が初夜になる様に仕向けた張本人であるベンが珍しく悪戯っぽく聞いてくる。

 その通り! はっきり言うと、寝不足だ!

 この世界の新婚夫婦の皆様方ってそうなのだろうか?

 元の世界だと初夜なんて形骸化しているけどな。


 冷静に考えてみれば、クレアに告白されてからまだ24時間経ってないぞ!

 それで夫婦って早すぎだよな?

 婚前交渉どころか、デートも無いとは。それをベンに聞いてみた。


「珍しくはありませんよ。突然の告白からすぐに結婚!それもまた情熱的でよろしいかと。その、エイジ殿の国とは違い、わが国の風習では婚約前の男女はあまり一緒には遊びに出掛けません」

「そうなのか?」

「婚約してからですね。エイジ殿の仰る様な事は。まぁ、偶然を装って会っている独身の者も居りますが」

 やはりこの世界の事は、まだ分からない事が多い。年の差婚が多い事と、交際期間無しでの結婚は関係しているのだろうか?


「エイジ殿、住民登録は終了しました。これからは別の町に移動する際にはこの身分証を持参して下さい」

「了解した!」

 これで俺もこの異世界の国の国民か。

 初めてこの町に入る時には、王宮魔術師のリックと一緒だったからボディチェックは一切受けなかったが、これで今後は1人でも移動が出来る。


「婚姻届も昨日付けで受理しましたよ!そういえば奥様はご一緒ではないのですね?」

「色々と大変でな」

 クレアも一緒に来たがったが俺が止めた。

 彼女は俺以上に寝不足で疲れているだろう。それに生活環境が大きく変わるので、準備も大変だ。

 きっと今頃はシーツに付いた自分の血を一生懸命に洗っている事だろう。

 想像すると新妻って可愛いな。

 

 今日は集中力散漫で魔法は使えそうにない。こんな

日は魔法を使わない仕事をするか。

 

「エイジ殿に相談という訳ではないのですが」

 魔法抜きの話と言った途端に、深刻な表情でベンが切り出してきた。

「今年の夏は冷害となりそうです」

「冷害?もう夏だよな?」

「ええ。ですが例年の様に暑くなりません。このままですと農作物に影響が出ます」

 それは何処の世界も同じだな。


「で、それを俺に話してどうする?」

「何か良い知恵は無いかと」

 LEDを使った野菜工場に習って、光魔法で出来ないかと以前から考えてはいる。

 浴びせる光の種類や時間、与える水で栄養価も変わってくるらしいが、そこまでは当然ながら出来ない。

 しかし魔法を使った野菜栽培には興味が有る事は間違いない。まだ実験もしていないから不安だけど。

 

「何とか生活必需品の高騰は避けたい。エイジ殿ならお分かりになられるでしょう?」

 そうだ。ショッピングモールの運営を任せる連中は皆、貧しい家庭に野菜を安く提供しようとして組合だかに潰された商人達だった。

 

「ベン副市長、土地の有効活用の提案をしたい」

 俺の返しに、待っていたとばかりにベンの口元がほころぶ。

 してやられた感じだが、手の平の上で踊ってやろうじゃないか!

 世間で高騰している中、ショッピングモールで安く売ればきっと賑わうだろうし、副市長の申し出に答えるのだから行政の協力も得られるだろう!



 現在は市の許可を得て、以前の古い防壁と新しく作った土塁の間に魔物を放し飼いにしている。

 今回新たに区画整理して、違う区画を借りる事にして、そこに野菜工場を建てる。


 善は急げだ。

 早速、リーチさんやロンと現地に赴く。

「野菜を建物の中で作るのですか?」

「はい。天候不順に左右されませんし、鳥や虫の被害も受けません」

 目を丸くするリーチさんに野菜工場の意義を説明する。


「そして、この野菜工場の責任者はロン、お前だ!」

「えっ?」

 案の定ロンは鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしている。

「室内温度を保つには火属性の魔法が必要だし、お前はある意味で言うと真面目だ。任せられるのはお前しかいない」

「本当ですか、先生?」

 ロンの魔法は戦闘には不向きな事は間違いない。

 なら何に使えるか考えたらこうなった。

 いつまでも俺の小間使いにしておく訳にもいかないしな。

 

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