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障害を あっさり乗り越え 初夜がきた

 この世界の戸籍制度は不明だが現代日本のレベルでなくても、それなりにはあるだろう。

 最悪の場合、俺の出自が調べられて不法入国、不法滞在で罰せられる?

 何処に戻される残りかは不明だが、国外退去か?

 それとも、盗賊や暗殺者とは言え不法滞在の外国人がこの国の国民を複数人殺している。

 死刑?嫌な2文字が頭を駆け巡る。


「ベン、ちょっと話が」

 こういう事では唯一、相談出来そうなベンに話を聞いてもらうしかない。


「戸籍が無い?」

「俺って外国から来たから…」

「確か、偉大なる伝説の大魔道士シーナと同郷でしたよね?」

「日本という国だ」

「ニホン?」 

 ご一同の皆様揃って不思議顔なのも無理はない。この世界には無い国なのだから。


「エイジ殿の居たそのニホンではどの様な戸籍制度なのですか?」

「まず生まれたら出生届を役所に提出する。これで戸籍が出来て人間として認知される」

「なるほど」

 感心した様な表情だが、この世界では違うのか?


「何処にどんな人間が居るのかを役所は把握するので、引っ越しの時には出て行く町では転出届、引っ越す先の町では転入届を出さなきゃダメだ。引っ越す時には他にも連絡を電力会社や郵便局、NH…」

 イカン!話が脱線している!

 案の定、ポカーンとしている奴も居る。ベンだけが考え込んでいるが。


「よく分からない事も有りますが、あなたの国と全く違う事は分かりました。あなたの国の事をもっと聞かせて下さい」

 クレアが握った手に力を加えた。

 戸籍が無くても構わないのか?

 って言うか、何故平気な表情なんだ?


「あんた、あの偉大なる伝説の大魔道士シーナと同郷の魔道士か!」

 エセドワーフの1人が声を掛けてきた。

「言わなかったか?」

「言ってねぇさ!」

 よく考えたら言う機会が無かったな。

「あんた強いんだから魔石を用意しな!結婚祝いで何か作ったる!」

 エセでもドワーフが作るアイテムか。と言う事は魔道具か?


「エイジ様!」

 次に声を掛けてきたのは、風のお告げで俺の嫁になると言ったエセドワーフの集落で、エルフ担当だったエリス。

 皆して戸籍の事はどうでも良さげな感じだ。


「エイジ様、早くクレアさん以外とも結ばれて下さい!」

 この場で何を!空気読めよ!

「風のお告げでは、私はエイジ様の第4夫人になると出ました!」

 それじゃ、クレア以外にもあと2人娶らねばならないのか?

 エリスと冗談ぽく笑っていたが、突如として背筋がゾクッとした。氷の刃を突き付けられたかの様な殺気を感じて恐る恐るクレアに視線を送ると、冷酷な暴君のような氷の眼でエリスを睨んでいる!

 見てはいけない一面を見た気がした。


 クレアの氷の眼を融かすべく、ベンが沈黙を破る。

「エイジ殿、そのニホン程ではありませんが結婚に戸籍は必要です」

 やっぱしか。

「しかし、わが国では新たにこの町で住民登録して頂ければ大丈夫ですよ!」

「それだけ?」

「はい。それも役所で手続きですが、この場で私が承りました。やはり今夜で!」

 ベンの言葉でクレアがまた真っ赤になる。もはや条件反射の様だ。


 この世界は社会制度が整ってないのか、戸籍はそれほど重要ではないらしい。そういえば中世の頃って、歴史に名を残した人でも生没年不詳って人は多いよな。


 散会となった後、クロエの提案でミラはクレアと入れ替わりにクロエの店に住む事になった。これには気も引けたが、2人の言葉に甘える事にした。

 お互い気まずいしね。



「不束者ですが、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく」

 こうして俺達夫婦の新婚初夜が始まった。


 が、いざ始まると


 あらゆる意味で、クレアが処女でよかった!

 俺が初めてだとか、下手だとか、粗末だとかを知る由も無い。


「小さくてごめんなさい」 

 俺の手が触れる度にクレアが口にした言葉だ。

 だがもはやそんな事はどうでも良かった。



 クレアには恥ずかしいやら痛いやらで辛い思いをさせて申し訳なかった。

 とにかく必死で余裕など全く無い状態だった。


 快楽という言葉とはほど遠い初夜となってしまったが、仕方ない。

 初めてなんだから!

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