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結婚の 障害それは 俺自身

「この後はクロエに報告だな」

「はい、あなた」

 クレアが早速、新妻モードになっている!

 可愛いじゃねーか!


「新居とか、これから忙しくなりそうですね」

「そうだな」

 今住んでいる所にはミラも居るし、昼間は教室となっている。ミラも推定17歳なので、『夫婦生活』の事を考えると新婚夫婦との同居は好ましいとは言えない。

 

 かと言ってクレアと入れ替わりにクロエの所に行ってもらったとしても、追い出した様で後味が悪い。

 社宅もまた然り。

 何か状況が変化するとそれまでのバランスが崩れる。良い方に変化した筈なのに、それはそれで厄介だ。


 取り敢えずはクロエに結婚の報告をしなければ。

 両親亡き後は姉妹2人で生きてきたのだ。姉のクロエから結婚の承諾を得なければならないのだが、いつも行くこの道が短い様で長くも感じる。

 相手はクロエなのに緊張して仕方ない。多分、ダメとは言わないだろうが、やっぱり挨拶は緊張する。

「あのう」

「どうした?」

 後ろに付いて歩いているクレアが何だかモジモジしている。クレアも結婚の挨拶に緊張しているのか?


「あの、手を……」

 それから先の言葉は出てこなかった。クレアとしても精一杯なのだろう。

 なるほど、手を繋ぐんだな、新婚夫婦は!

「あ、ああ」

 恐る恐る手を差し伸べてクレアの手を掴む。クレアの細くしなやかな指が俺の指に絡んでくる。

 ドキドキする。慣れていないもので。

 ヤバイ!後で幾らでも出来るのに、またクレアとキスがしたくなる。これが愛おしいと言う事なのか?

 それとも、異常に興奮しているからなのか?


 此処は繁華街で行き交う人もまだ多い。

「クレア」

「はい」

 どうやらクレアも同じ気分の様だ。繋いだ手を手繰り寄せる様にして俺の腕にしがみ付いてくる。2人で人目に付かない物影に流れ込むと、そのままの勢いで再度キスを交わす。


 不思議な気分だ。

 妙に安心する。先程までのクロエに対する緊張が嘘の様に解けていく。

 このまま続けていたいが、続けているとその先に如何しても進みたくなってしまう。

 後で幾らでも出来る!と自分に言い聞かせて、何とか残っていた自制心に仕事をしてもらった。


「さぁ行こう!」

「はい」

 クレアはその顔を赤く染め上げ、それだけを言うと俯き加減で再び俺の腕に抱き付いてきた。


「実はさっきまで緊張していたんだ。クロエに挨拶するのに」

「姉さんなら大丈夫ですよ」

「そうか?ドラゴンと戦う前よりも緊張してた」

「もう、姉さんを魔物と一緒にしないで下さい!」

 本当にそうなのだから仕方ない。どんな魔物や刺客と戦うよりも、クロエの方が厄介そうだ。


「実は殿方に好意を抱いた事がありませんでした。あなたに出会ってから自分が変になってしまったと思って姉さんに相談したんです」

「クロエに相談?」

「ええ、それで恋だと知って、それから応援してくれる様になりました」

 それでクレアをこっちの仕事で借りる時も二つ返事だったのか。

「それにミラちゃんも応援してくれました」

「ミラが?」

「ええ、楽しんでいる様にも見えましたけど、応援してくれましたよ!」

「そうか」

 ミラの奴め、生意気な!後で何かご褒美を用意してやるか。


 ここからクロエの店は近い。この程度の会話でもしていると着いてしまう。正直、初めて腕を組んで歩いているのだからもっと歩きたかったな。

 店の前に立ち、深呼吸をしてドアを恐る恐る開けると、皆が待ち構えていた。


「おめでとう!」

 店に入るや否や、お祝いの声が俺とクレアを包み込んだ!

 クロエに12人の娘達、何故かベンとリーチさん夫妻もいる!

 エセドワーフのメンバーも顔を揃えている。特にスーは満面の笑みだ。


「突然、空が光ったと思ったら、どう見てもプロポーズのメッセージじゃないですか!こんな事が出来る人はエイジさん以外にいないと思って飛んで来ましたよ!」

 

「実にエイジ殿らしい!あんな魔法は見た事がありません」

 リーチさん、そしてベンが興奮を隠さずに花火の感想を述べてくる。


「クロエ、クレアを」

 奥の方にクロエを見付けた俺は近寄って声を掛けるが、それ以上は声にならなかった。

 クロエの表情がいつになく穏やかなのだ。こんな表情は初めて見る。


「エイジさん、クレアを頼むわよ!泣かせたらこの肉切り包丁の出番よ!」

 クロエはこれ以上ない様な満面の笑みを浮かべつつ、この為に厨房から持ってきた肉切り包丁をチラつかせた。


「呼び方とか、話し方とかは今まで通りでお願い。間違っても『お義姉さん』とか呼ばないでよ!」

「そのつもりだ」

 呼び方もだが、クロエに敬語を使う事に抵抗が有ったのでこの申し出は助かる。

 堅苦しい挨拶もしないで済んだし、妹の旦那に対して気を遣っているんだな。


「さぁさぁ、料理が冷めないうちに!」

 クロエに促され全員がグラスを持つ。

 さぁ、祝宴の始まりだ!


 皆それぞれに酒が入って上機嫌になった頃、酒瓶を片手に持ち俺に注ぎに来たベンが俺とクレアにそっと囁く。


「エイジ殿、本来なら婚姻は役所に届けて成立します。小さな村ですと教会で済みますが、大きな町では事務手続きは役所でします。役所はもう閉まってますが、私が承りました!今夜が初夜で、どうぞ!」

 ベン、ありがたいけどクレアが真っ赤だ!酒も入っているせいで、人間がこれ以上赤くなるのは不可能って位に真っ赤だ!


 そうか婚姻届の受理は役所か。明日にでも正式に行ってみるか。

 しかし何か引っ掛かる。



「あっ!」

 俺、この世界の戸籍が無い!

 異世界から転移してきたからな。

 と言う事は、結婚は無理?

誤字脱字のご指摘、ありがとうございます。

今回は非常に多く、穴が有ったら入りたい。

無ければ掘って入りたいレベルでした!

まだまだな作者ですが、これに懲りずに今後もお読み頂ければ幸いです。

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