ドワーフに 魔石の秘密 聞いてみた
翌日、朝一で現場に行くと先にトニー達が来ていた。
「ほれ、大まかじゃが図面じゃ」
凄い!トニーが一晩で描き上げた図面は細かい寸法の記載こそ無いが、形になっている。
「地上3階、地下1階か」
中々のボリュームだ。現代日本ではパソコンのCADシステムで設計するのが一般的。パソコンが無ければ何も出来ない人間が増えているくらいだ。
それが、パソコンなんて無いこの世界のトニーは一晩でこの図面を作成した!デザインも申し分ない!
「今の時点で凹んでおる所の一部をそのまま地階にするんじゃ」
「地盤は大丈夫なのか?」
「元々の地盤は良い。良い土で埋めて上物のバランスで問題無いじゃろう」
鬼才の言う事を信じるしかないな。
「それじゃあ埋め立ては限定的にやる。実は祭りで魔物とゴーレムを戦わせるショーをやりたいのだが」
「ショー?ならば地階になる所でやれば見下ろす形になって見易いじゃろう。さっさとやっちう事じゃな。久し振りの仕事じゃからな、早く取り掛かりたいのう」
トニーは祭りまでに埋め立てる範囲を図面で俺に指図する。
「エイジさん」
「リーチさん!」
遅れてやって来たリーチさんとも打ち合わせだ。
「社宅のリノベーションは今日終わります」
女子寮にするつもりだった建物だが、トニー達にもそこに住んでもらう事にした。
だから、社宅と呼び名を改めた。
「早かったですね。祭りが終わったらショッピングモールの建設をしますから、各業者に準備をさせて下さい」
「分かりました。それで祭りの日取りは?」
決めてなかった。早い方が良いけど、早いと準備が間に合わない。
「10日後でどうじゃ?」
突然、トニーが横から口を出してきた。そして続ける。
「ワシらは明日でも構わんのじゃが、準備が必要じゃろう。まずは魔物を捕まえてこんとな!」
「魔物ですか?」
キョトンとするリーチさんに説明する。リーチさんは些か驚いた様だが、すぐに納得した表情だ。
「エイジさんなら、出来るでしょう!」
リーチさん的に、俺はどういうキャラなんだ?
「戦った魔物はどうなりますかの?」
エセドワーフの1人が声を掛けて来た。名前は昨夜聞いたが記憶に無い!老人の扱いなんてそんな物でしょう。
「ゴーレムとの戦いで死ぬかも知れないし、勝ったとしても魔物を野に放つ訳にはいかない!」
魔物に限らず野生動物にも言える事だが、人間から餌を与えられたら人間を恐れなくなってしまう。
人間は餌をくれる存在だと思ってしまうからだ。
人食い熊もそうやって誕生する。
「魔物が勝ったら、可哀想だが俺が始末する」
それしかない。また野生に戻した場合、その魔物が人間を襲ったら責任取れない。
「なら、魔石を採らせてもらえんかの?」
「魔石?」
それは採れない筈なのに何故?
「魔物からは採れるさぁ。知らんのか?」
知らないから聞いているんだが。
俺はオウルドラゴンからもワイバーンからも採れなかった事を話す。
「そりゃそうでしょ!」
微妙な訛りの有る声で言われてしまった。
「それじゃあ、どうやったら採れるんだ?」
「締めた直後に体の中央、腰の上を捌くと採れる!」
「直後に腰の上?」
「そうさぁ。時間が経つと小さくなって、無くなるんさぁ!」
腰の上って人間で言うと、丹田?
気の発生源の丹田?魔物にも丹田があるのか?
「早く取り出さないと、生命維持の為に魔力を放出するからのう」
此処で言う締めた直後とは、現代日本の人間で言うと甦生を行えば助かる可能性がある段階。AEDを使えばって感じの。それくらいの直後でなければ良い魔石は採れないらしい。
逆に言えば、殺したと思った魔物が魔石の効果でまた動く事も有るそうだ。
「魔石を使って何を?」
「強化アイテムを作るんさぁ。身体強化や魔法の威力増強のな!」
そうか、アイテム作りか!流石はドワーフ!
「良い魔石なら、アンタのも作るんさぁ」
「期待している!」
「昔作った物が有るから見てみるかい?」
どっちみち彼等と娘達は社宅に引っ越しだ。その準備ついでに宿屋に戻って見せてもらう事にした。
「これはエイジ様、夫モイーズがどうかされましたか?」
出迎えたのは、恋愛職人のスー!この2人は夫婦だったのか!
「魔石ですか?これです!」
スーは自分の胸元を指差す。
「そのブローチの石?」
「はい!オンリーワンのアクセサリーです!」
本人は気に入っている様だが、良いのか?魔物の体内に有った石だぞ!
「エイジ様、そんな事よりも私なりの昨夜の分析結果のご報告を」
うっ、気になる!
「スー、悪いが祭りの準備で忙しい。夜にじっくりと聞かせてくれ」
「分かりました。では夜にベストテンを!」
目尻のシワを気にせずにスーは満面の笑みを浮かべる。
絶対に楽しんでいるだろ!
お蔭様で100回目を迎える事が出来ました。
ありがとうございます。
これを機にペンネームを変更しました。
これからも、よろしくお願いします。




