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カール宅 魔力解放 実験中

 空に浮かぶ球体も解決した所で、村人の集まりはお開きとなった。

 ステラも帰り、俺とソフィ、それにリックに3人は現場検証としてカールの家に行く事になった。

「ソフィ、大丈夫か?行きたくなければ行かなくても良いんだよ」

「大丈夫よ。1人なら行きたくないけど、今はエイジがいるし。それに、忌々しい場所だけどエイジと出会えた記念すべき場所でもあるわ」

「そうか、なら良かった」

 ソフィは昨晩レイプされかけた場所へ俺達を案内してくれている。

 恐ろしいだろうに気丈に振る舞っている。ソフィは俺が守らなければ!


「そう言えばステラさんが村人に何か言うと皆が驚いてましたね。何を言ったのでしょう?」

 リックが思い出したように尋ねる。

「お母さんたら気が早いから、エイジを、…私の婚約者だって言ったのよ」

 ソフィは俯いて言う。

「ごめんなさい!エイジに助けてもらった事をお母さんに言ったら先走っちゃって!」

「ソフィ、謝る必要なんて無いよ」


 ソフィに優しく声を掛けた。だって、嬉しくてしょうがない!


「でも村人は驚いてざわついてましたけど、驚き過ぎでは?」

「リック、そりゃあそうだろう!ソフィほどの器量好しが村に現れたばかりの異邦人と婚約したんだ!驚きもするし、ざわつきもする!するなと言う方が無理だ!」

 至極当然とばかりにリックに言ってやった。照れ隠しだけど。


「違うの、エイジ!」

 ソフィは顔面蒼白で立ちすくむ。

「ごめんなさい。私、エイジに言わなくてはいけない事があるのだけど」

「何?」

「ごめんなさい、決心が、決心がつかなくて」

 何か込み上げる物が有るのか、ソフィは泣きながら声を張り上げる、

「分かった、ソフィは家に帰っていてくれ。カールの家はもう分かるから大丈夫だ」

「本当にごめんなさい。後で絶対に言うから」

 ソフィは踵を返すと足取り重く歩いて行った。


 俺とリックは途中迷いながらも何とかカールの家に着くと、一応ノックして家に入る。

「う、う、誰だ?」

カールはすっかり弱っている様だ。両腕は恐らくは粉砕骨折していると思う。

「お邪魔するよ。腕はどうだ?」

「お前、何しに来やがった?」

 来客が自分の両腕を折った張本人だと分かると、途端にイキがりやがる。

「決まっているだろ!もう5本くらい折りに来た!」

 そのまま硬直し、カールは動きが止まった。


「この腕ですか?魔力の放出で骨を折ったと言うのは」

「そうだリック、今から同じ事を足でやるから見ていてくれ!」

「や、やめ」


 ボヴァン!


 昨夜より大きい音が響いた。カールの悲鳴も。

「リック、どうだ?」

「初めて見ました。魔力の放出で人の骨を折るなんて」


 王宮魔術師であるリックでも知らない使い方が出来るなら、大魔道士に近付けたかも!

 

「昨日はその汚い腕に手を付けて魔力解放して骨を折ったんだ。離しても出来ないか試したいんだ」

「でも彼の腕は折れています」

 そう言うとリックはカールに近付いて折れた腕に手を当てる。カールの腕に光が当たると、腫れていたカールの腕が目に見えて治っていく。

「僕は光の属性です。治癒魔法はお手の物ですよ」

「ありがてぇ、あんた」

 顔面汗だくのカールは、地獄に仏でも見た様な顔だ。


「さぁ、腕も治りましたから検証しましょう!エイジ、また折ってみて下さい!」

「えっ?」

 明るく大声のリックとは反対に、元から歪んでいるカールの顔が更に、恐怖で歪む。


「ハァハァ、勘弁して下さい。どうかお許しを………魔道士様」

 骨が折れる音とカールの絶叫が何回か響き渡った後、検証結果がまとまった。

 結果として、射程距離は不明だがコントロールが難しいので実際に使い物になるのは、5メートルが関の山だろう。

 拳銃も射程距離は50メートルあっても同じ理由で、武器として信頼して使用出来る距離は数メートルだと、元自衛官の職人から聞いた事がある。

 5メートル以上はカールが暴れるから腕から外れて肋骨が折れた事も有ったのでやめた。


「もうやめてやる。折れた骨も治してやる。本来ならソフィを襲おうとした罪はこんなもんじゃないからな!」

「あんた、ソフィに惚れでもしたのか?」

 まだ息が荒いカールが聞いてきた。ソフィについて何か言いたそうだが、いつの間にか口調が戻っている。

「それが、どうした」

「やめておいた方がいい」

「何?」

 カールはこの期に及んで俺とソフィの恋路を邪魔しようと言うのか。

「婚約はしたのか?」

「正式にはまだだが、ステラさんも事実上認めている」

 俺は堂々と言い切る。カールに付け入る隙なんか与えない。


「そうか!ハハハ」

 カールが俄に笑った。一人で納得しているようだが。

「どうした?気でも触れたか?」

「あんた、悪い事は言わねぇ、止めときな!今ならまだ間に合う!」


「何?また折られたいか!」

 瞬間的に頭に血が上る。カールはそんな俺を見た途端に怯える。

「勘弁してくれ、俺はあんたの為を思って言っているんだ!」

 カールは柄にもなく泣きそうな声だ。


「どういう事だ?」


「ステラもソフィも、呪われた女だ!」


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