⑧自家製酒(アルコール度数不明)
くれぐれも実際にやらないように!!
君はどんなモノを食した事があるか。
必要以上に身分不相応な山海の珍味を食したか。
或いはまだ見ぬ未経験の味に驚愕したか。
人はモノを食い生きる。
ただそれだけの為に生きて何時か死ぬ。
ただそれだけの為に食べるのだ。
しかし、人は飽きる生き物である。毎日同じじゃあ、つまらんぞ?
たまには好奇心の赴くままに、食してみないか?
但し、責任は取らない。
違法である。先に書いておくが、日本国に於いて、自家製酒は脱税行為と見なされて摘発対象になる。今更ながら、そんな事をわざわざする者は居ない筈である。にも拘らず、ネットで調べれば製造法は数多紹介されており、その気になれば誰でも簡単に作る事は出来る。
重ねて表記しておくが、アルコールを含んだ飲み物を作る事は、個人で楽しむレベルでも酒税法で課税対象になる。くれぐれも他言無用、なのだ。
はい! 禊終了!! 今回は自家製酒を作ってみたお話です!!
……えっ? 脱税行為だって? やだなぁ~、誰も今現在作ったとは誰も言ってませんよ? ずーっと前のお話ですからね? そこを加味して、お読みくださいね♪
ある日、稲村某は突然思い付いた。
「あー、お酒が飲みたい!」と。
だがしかし、当時は全然金が無かった。今よりずーっと、無かったのだ。
で、暇潰しにネットサーフィン(死語だな)しながら良い方法は無いものか、と検索を続けると……
【砂糖と発酵種と水が有れば酒になる】
そんなお話が書いてありました。確かに日本酒だって、米麹とお米と水が有れば作れますよね? じゃあ、やってみよう!!
但し、お金は無いから100円ショップで買えるモノ限定でやってみる事にした。
早速、近所のダイソ○に行ってみると、グラニュー糖とドライイースト発見!! これと水が有れば出来る筈!!
合計208円(当時の税率)で購入し、家に帰って水とグラニュー糖、そしてドライイーストをペットボトルにぶち込んで、シャカシャカ振り回して待つ事暫し……
……ん? ほんの少し、泡が出てきたような気がするぞ?
炭酸飲料のペットボトルの中で、ドライイーストの粒々が溶けた砂糖水から小さな泡がフツフツと沸き上がり、容器がパンパンになっている? ほほぅ……これが発酵かぁ~♪
と、実験気分で眺める事、数日。
もう出来たんじゃねえか?
早速、飲んでみる事にした。いや、食してみた。
ぷしゅっ、と弾ける炭酸が気分を盛り立てて、早く飲んで♪ と泡達が稲村某を囃し立てるのであるが、とにかくグラスに注いで……まず、一献。
いただきますっ!!
……ぐび、と一口目を飲むと……口一杯に広がる……激甘な味!!
ぐえええぇ……甘い……ひたすら、甘いだけだぞ、こりゃ?
と、そこに後から追い打ちを掛けるように炭酸の刺激がやっとこ現れて、しゅわっ、と弾けたのですが……酒の余韻は皆無。たぶん、アルコール度数は一度程度なんじゃなかろーか? これで酔う為に飲み続けたら糖尿病になっちまうがな!?
ペットボトルの蓋をそっと締め、諦め気分で追加発酵させる為、容器を日向の窓辺に置き、稲村某は立ち去った。
と、まぁそんな感じで失敗作の事はすっかり忘れて何日か過ぎたある日、仕事から帰宅した稲村某に向かって、嫁御が何やらがなり立てるではないか。
「あんた!! 変なペットボトルが部屋の隅っこでシューシュー言ってるわよ!! 爆発すんじゃないの!?」
またまた……大袈裟だなぁ……、と思いながら部屋の片隅に置かれたペットボトルを眺めると……
パンッパンに膨張したペットボトルから、確かに怪しげな音が鳴り響いているではないか!?
慌ててそいつに近付くと、まるで蛇が威嚇するような擦過音じみた音を鳴らしながら、プクプクと茶色い泡を立てて生命活動(たぶん原始の海もこんなだったろう)をしているのだ!! 凄い凄い!!
……と、現実逃避している場合ではない。蓋を開けて膨張を解消しないと我が家が大惨事になるかもしれないのだ!
取り敢えず風呂場にブツを移動させて、稲村某は意を決して蓋へと手を伸ばした……
……パシュッ!!
うん、炭酸ガスだ。シュワシュワだ。
ペットボトルの口から甘く香る匂いは、まるでパンのよう。発酵種にドライイーストを使用したからか、パン種の匂いがするのだ。
じゃ、食してみっか!!
面倒だったので、そいつをグイ、とらっぱ飲みしてみると……
……じわっ、と弾ける炭酸の刺激と同時に、甘く香るパンの匂い。間違いなく、それはイースト発酵由来の風味である。
……味? 殆どパンみたい。飲むパンだ。
で、肝心要のアルコールの刺激は……と言うと、あんまりしない。まぁ、たぶん四度程度なんじゃなかろーか?
結論から言えば、こうやって作るアルコールは間違いなく低濃度なんだと思う。じゃあ、一口目から酔うにはどうしたら良いか?
答えは簡単。沸騰させて蒸気を集めて冷やし、アルコール度数を高めてやればよい。
そう結論付けた稲村某は、耐熱チューブと氷、そして圧力鍋を利用して簡易蒸留器を作り、早速試してみたのだが……結果は失敗。やり方を間違えてアルコールではなく水分だけを抽出してしまったのだ。
結局、自家製アルコールは台所の換気扇から旅立ち、自由の空へと解き放たれていったのだった……。
まぁ、やってみた結果は残った。今はそんな思い出を肴にしながら、普通に買ってきた酒を飲み飲み執筆している訳である。
そう言う事だから、自家製酒なんてやってはいけないのだぞ? 間違いなく無駄に終わる。
それでも挑戦したい方は、無難に梅酒を漬けて飲んだ方がよいだろう。厳密には自家製酒ではないが、確実に酔える。
脱税になります。とはいえ、いきなり税務署員が飛んできたりはしませんが。ではまた次回も宜しくお願いします!