④自家製からすみ
四回目は自作料理(?)のご案内です。艶やかな飴色の仕上がりを目指して是非挑戦してみては?
君はどんなモノを食した事があるか。
必要以上に身分不相応な山海の珍味を食したか。
或いはまだ見ぬ未経験の味に驚愕したか。
人はモノを食い生きる。
ただそれだけの為に生きて何時か死ぬ。
ただそれだけの為に食べるのだ。
しかし、人は飽きる生き物である。毎日同じじゃあ、つまらんぞ?
たまには好奇心の赴くままに、食してみないか?
時には身体に悪いものだって、旨ければ良いではないか。
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諸兄は【からすみ】と言う食材をご存知だろうか。
一般的にはボラ等の卵(腹から取り出した状態のモノ)を乾燥させて作る嗜好品、といった存在であるが、
……ぶっちゃけ、大部分の日本人は食べた事は無いと思う。高級食材を販売している店舗、若しくは酒菜の類いを扱う店でならば手に入るだろう。それだけ貴重品、といった所である。
しかし、何故にボラの卵が高額な食材になるのか……タラやシシャモなら安く手に入りそうな気がするのだが。
さて、それはさておき誰でも簡単に作れるカラスミの作り方!!
材料!! 魚卵!! 塩!! ……こんだけ!!
……え? こ、これだけ!?
はい、これだけです。但し後述する追加材料は存在しますが、基本はこれだけー。
高級食材、大した事ねーなー。ハハハハハ。
……と、まぁ、それなりの前振りは終わりまして、早速作りましょう!
まず、材料の魚卵(ボラが手に入らなければ無毒の魚卵だったら何でも可)を塩漬けにします。適量で、水が出るまで放置したら、水洗いして完了!!
そして、仕上がりを綺麗にする為、血管から血を絞り出します。グイグイやってください。血は残すと雑味と腐敗の元に成りかねませんからね。見た目も悪いですし。
そうやって掃除が済めば、準備完了です。後は好みの塩加減まで塩抜き(日本酒や焼酎で行う方も居るみたいですが)したら、漸く乾燥。清潔なトレー等に載せて、天日干し若しくは冷蔵庫でじっくりと水分を抜いていきます。手抜きするなら冷蔵庫内に放置する手段も有りますが、こまめにひっくり返して下さい。
こうして一週間後……、
艶やかな橙色、又は渋い柿の実に似た朱色まで到達し、手に持って堅さを感じるようにまで成れば、完成です!
やや透き通った感じの仕上がりまでいけば、水分は抜け切って保存性も高まります。カチカチだと行き過ぎですが、味に問題は有りません。
……では早速、食してみようか。
と、言ってもいきなり丸かじりするのは早計である、カラスミはそんな食べ方をする代物では有りませんよ?
まず、良く切れる包丁等で端から薄く切って、試食してみよう。
歯応えは、堅く締まった魚卵ならではの独特な弾力に富み、キャラメルに似た感じ。噛み締めればしっとりとした食感を得られる筈である。
舌に載せると、滑らかな舌触りで存在感を示す箇所と、解れて散っていく粒子状の箇所とで異なる食感が味わえる。そう、表面の表皮直下は堅く締まり、中心部に近づくに従って柔らかいのだが、これは干し方で変わる。全体が同じ堅さになるのが理想的なのだろうが、所詮は素人製品。玄人の芸術作品のように堅さや艶が均一なモノが欲しいのならば、購入を勧める。
味は魚卵特有のこっくりとした旨味が凝縮されていて、噛む程にじわりと沁み出して来る。
しかし、誤解を避ける為に敢えて記すが、カラスミは手間暇を掛けて長期保存が目的の伝統的手法であり、その技術を活用した保存食なのだ。材料の旨さを飛躍的に増加させる魔法みたいな技では無い。いや、もしかしたら何万もするカラスミは、そうしたモノなのかもしれないが。
ちなみにカラスミは塩味と魚卵の風味が強い。そのままでも勿論食べられるが、軽く炙って食すると焼きたらこのようなほろほろとした食感が楽しめる。御飯に掛けたりパスタに和えたりと使用法が広がるので、手作りした際は是非試して欲しい。
……お店で頼めば軽く四桁円に届く高級料理だが、家で作れば実にお安く食べられる筈である。魚卵(鮮魚のアラ売場を隈無く探せば時折見つけられる)が安く売られていたら、試して欲しい。
但し、頻繁に食すると様々な成人病を誘発するかもしれないので、控え目に……。
尿酸値、または高血圧のリスクを高める可能性が有りますが、美味しいモノは大体そんなもんです。次回も宜しくお願いします!