八話 『冒険初日』
こほん、と気を取り直すようなコレットの咳が聞こえる。
「取り乱して悪かったな。イレーネ、だっけ。アンタ、アタシたちとパーティを組みたいってのか?」
「あ、はい。できればお願いしたいです」
「魔法で攻撃できる奴はいくらいても困らない。大歓迎だ。な?」
「ん」
そう言って、コレットは同意を求めるようにネシスの肩を叩く。バキッと小気味のいい音がギルドに響く。
ネシスは痛そうに顔をしかめながらも短く頷いた。
「よろしく頼むよ」
「頼む」
「こちらこそ、お願いします」
そう言って三人が握手し合うと、自然と三人は笑顔になる。
「いいですねえ! 新米冒険者たちの絆ができるところ!」
それを見ていたテレサは、にんまりと笑みを深め新人パーティ結成を祝ったのだった。
「よっしゃ、じゃあ新入りも入ったことだし今日は昼から狩りにいくか!」
「絶壁のわりには悪くない」
「絶壁言うな!」
* * *
初依頼は、町周辺に出てきた魔物たちの間引きだった。周辺には既にいくつもの同業者たちが魔物を追いかけまわしている。
「どおりぃやああああああ!」
「コレット、突っ込みすぎ……だから私の魔法必要になる」
裂ぱくの気合とともにコレット魔物たちに向かって剣を構えて突進する。
ネシスのため息が聞こえるが、確かにあれでは怪我も多そうだ。
「援護します!」
そう言いながら、イレーネは火矢を数本展開していく。
燃え盛る火炎は、走るコレットを追い越して的確に魔物の眉間を撃ち抜いて行く。
「おお……」
普段ほとんど表情を変えないネシスが感心した顔になっている。
やはり、イレーネは人間から見ると大分強い部類に入るらしい。
結果、あれだけ気合いを入れたコレットはほとんど出番がなく戦闘が終わってしまったのだった。
コレットは最後の一匹を叩き斬るが早いか、イレーネに向けて突っ込んできた。
「イレーネ! お前強すぎるんだよ!」
「えっと……ご、ごめんなさい?」
「謝る必要ない。コレットが弱いだけ」
ネシスの歯に衣着せない物言いに、コレットがうなだれる。
イレーネは慌ててコレットを慰めにかかった。
「で、でもコレットさんみたいな前衛がいないと私たちも安心して魔法打てませんよ!」
そう言うと、コレットは徐々に眼に光を取り戻していった。
「だよな! やっぱそうだよな! いやー、イレーネは最高の仲間だよ!」
「調子いい……」
「なんだネシス! やんのかオォ!?」
「やらん。臭い」
「えっ、どこが!? ちょっとどこが!?」
「――――」
そんな漫才のようなやりとりを余所に、イレーネは見当違いな方向を向いていた。
その寂しげな表情に、思わずコレットとネシスもそちらを向いてしまう。
「どこ見てんの?」
「えっ!? あ、いや、なんでもないです」
慌ててそう誤魔化そうとするイレーネに、コレットが疑わしげに歯を鳴らす。
ネシスが冷静にイレーネが見ていた方向を指差す。
「あっちはエリンスの森――通称、初心者殺しの森。あそこに用がある?」
その森は、イレーネが彼と出会った森だった。
思わず懐かしくなってしまい、今頃どうしているだろうかと視線を向けてしまったのだ。
「――いえ、なんでもないです。さ、狩りを続けましょう!」
「……」
場を締めるように声を張り上げたイレーネは、コレットの追及するような視線に気づいていなかった。
「いやー、今日は大量だな。これもイレーネの加入のおかげだな」
「いえ……、やっぱり三人だと安心感が違います」
一人で森をさまよっていたころから比べると大体は安心なのだが、イレーネはその辺りの感覚が麻痺しているようだ。
「じゃあ帰るか。この街は初めてなんだろ? 酒がうまい店教えてやるよ」
「あ、私お酒はちょっと……」
「硬いこと言うなって! ほら、いくぞ!」
強引に引っ張られていくイレーネの頬には確かに笑みが浮かんでいた。
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