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十五話 『女三人の風呂はやっぱり騒がしい』



「……す、すっげえなこれ」

「ふふ、でしょう?」

「なんでイレーネが自慢げにしてるんだよ……」

「……」


 彼の家に戻ってきてから一時間後、コレットは湯気を立てる風呂を前に、感動したような声を上げた。


 取り付けられた脱衣所。


 外から見えないようにカーテンで区切られている点。


 雨が降っても大丈夫なように取り付けられた簡易的な屋根。


 どれをとっても、コレットの口からはすごいしか出てこなかった。


 イレーネは、自分も最初に目にした時はこんな反応だったのだなと苦笑いしてみる。


 特筆すべきは、その大きさだろう。女性三人が入ってもまだ余裕がありそうだ。


「よっしゃ、早速入ろうぜ! ゴブ男には許可貰ってるんだろ?」

「ええ。……着替えもちゃんと三人分用意してもらってますし」


 イレーネとコレットは服を脱ぎながらそんなことを話していた。


 相変わらずというか、どこまでも準備が行き届いていて紳士なゴブリンである。


 早速二人は、足からゆっくりと全身を湯船に浸からせていった。


「うぁぁぁぁぁあ~、沁みるぅ」

「おじさんみたいな声出さないでくださいよ」


 そうイレーネが咎めるも、彼女の表情は緩み切っている。


「おいネシス、お前もつまんねえ意地張ってねえでこっちこいよ!」

「……いい。毒入りの湯かもしれない。入った瞬間にかぶれるかもしれない」

「毒入りて……」


 どうやら彼女のゴブリン嫌いは極まっているようだ。今も彼女は風呂場には来ているが隅の方で小さくなっている。


「……はあ。仕方ねえな」



 コレットは小さくため息をつき、勢いよく湯船から出た。残念ながらその際にも揺れる胸はない。


 コレットがネシスのもとまで行き、彼女を抑えつけた。


「よしイレーネ! 早く服を脱がせろ!」

「!?」

「は、はい!」


 コレットに言われるがままイレーネも湯船から飛び出し、ネシスの服を脱がせていく。


「や、やめろ! 私は絶対に入らない!」


 手足をじたばたとさせて、ネシスは必死に抵抗する。


 だが、その抵抗むなしくイレーネに裸にされてしまい、ネシスはコレットに抱えあげられた。


「な、なにを……」

「ほら、早く入れ!」


 そんな掛け声とともに、コレットはネシスを湯船の中に放り投げた。


「ちょ、コレットさん!?」

「これが一番手っ取り早い!」


 握り拳を振りかざし、やってやったとコレットは歯をむき出しにして笑う。


 イレーネがあっけにとられていると、湯船にいくつもの泡が浮かび上がりネシスが浮上してきた。


「はぁ……はぁ……。なにをする。死んだらどうする」

「毒入りだなんだと言ったわりには、平気そうで良かったな」


 ネシスが睨むも、とぼけた言い方のコレットには痛くもかゆくもないようだ。


 これはコレットの勝ちだな、とイレーネは二人を眺めながらそう思った。


 


「……楽しそうだな」


 その時、扉が少しだけ開かれた。


「ゴブ男! 見んじゃねえよ! あ、も、もしかしてアタシの体目当てか……!」

「お前の体には興味が湧かん」

「っごはぁ……!」


 照れながら言ったコレットだが、彼の苛烈な一言に一刀両断されてしまった。


 オーバーリアクションで湯の中に沈むコレットを避けて、ネシスは湯船の中に小さくなった。


 イレーネは、壁越しに彼に話しかける。


「すみません、騒がしくて。家まで聞こえてましたか?」

「ああ。別に、咎めているわけではない。風呂も好きに使うといい」

「あ、ありがとうございます」

「……」


 彼は少し会話を止めると、あるものを扉の隙間から差し出してきた。


「これを使うといい。存分に楽しめ」

「え? ……あ、ああ、ありがとうございます」


 イレーネが差し出されたそれを見ると、それは竹で作られた水鉄砲だった。それも三つ分。



「――ふふっ」 


 彼の足音が遠ざかっていく。それを聞きながら、イレーネは思わず満面の笑顔を浮かべてしまった。


 

 本当に、どこまでも紳士なゴブリンだ。


 

 

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