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暁の空に舞う夢  作者: ラウフ
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炎色の狐は静かに笑う

 いつも通りの朝。特に何の変哲もない当たり前の一日が今日も始まる。最近の流行りの歌なんかでは「当たり前が大切」とかなんとかよく言ってるけど、花のJK生活を謳歌している舞にはいまいちピンとこない。

 現在夏休み真っ只中だが一般的な高校三年生というものは長期休暇中だろうが補習というものがある。しかし受験などする気がさらさらないためno problemだと学生最後の夏休みを楽しんでいる。まあ、その結果やることがなくなってしまって、途方に暮れているのだが。

 ぐぅ、と腹の虫が鳴ったのでとりあえず朝食を摂るべく、自室から出て蒸し暑い廊下を裸足で歩き居間へと向かう。この時間はまだ母が朝食の支度をしている最中であり、自分の席へと座り、テレビで朝のニュースを見る。なんでもここ最近不可思議な事件が起こったらしく、地元のニュース番組はその事件のことで持ち切りだ。面白いから良いのだが、興味がない人からしたら地獄だろうな、なんて思いながらテーブルの上にあるピッチャーから冷たい麦茶をお気に入りのコップに注ぐ。

『本日はこういった怪奇現象の専門家の……先生にお越しいただきました。先生の見解をお聞かせいただけますか?』

『実はですね、今回の事件が起こった三月ヶ原の土地には過去に三度ほど、大火災が起こっているんですね。その前触れだったのではないか、ということで書かれていた現象。それが今回起こったーー』

「白日湖水位大幅下降事件、だっけ」

 専門家の声を遮って背後から聞こえてきた声に少しびっくりしながら振り返ると目の下に隈を作った妹がコーヒーカップ片手に立っていた。

「夢、おはよ~」

「おはよ。舞姉、好きだよねこういうオカルトじみた事件とか」

「うーん、なんかね。っていうか、寝不足?」

「最近暑すぎてなかなか寝付けないからって、ネサフしてたら三時回っててさ……」

「夜更かしはお肌の敵だよ?」

 舞が冗談交じりにそう言うと夢はあからさまに嫌そうな表情になった。夢が席に着くと、ちょうどよく母が出来上がった朝食を運んできた。今朝のメニューは目玉焼きとベーコン、バターロールだ。バターロールはオーブントースターで温めたのか、表面はサクッと、中はふんわりとしていて工場で作られたものとは思えないほどおいしい。いつもなら大好物のイチゴジャムを塗りたくるところなのだが、私は焼き鳥のかわは塩派なのだ。せっかくのサクサクパリパリをタレやジャムで台無しにはしたくない。それはそれとして、狂の分のジャムは皿に出してそのまま食べる。パンを冷めないうちに食べてしまい、目玉焼きとベーコンにケチャップをかける。我が家では何故か目玉焼きにかけるもの戦争は起こらない。全員ケチャップ派だから。ちなみにこの間ネットで調べてみるとケチャップ派は異端だなんて意見を見たけど、醤油かソースかって言われてもピンとこない。こっちからしたらそっち二党のほうが異端だ。塩コショウはアリだと思う。

 そんなことを考えているうちに食べ終え、テレビを見るのを再開する。今話題になっている白日湖は少し大きめな湖で、400mのトラックが入りきるくらいはある。なんでも、餌となる微生物が少ないとか何とかで、とても澄んだ綺麗な湖で、綺麗すぎるがゆえにごみをポイ捨てする人もいない。まあ、過去にポイ捨てした人がニュースになるくらい大きな怪我を負ったことは地元じゃ有名な話だ。

「あーあ、本当なら今日は白日湖見に行く予定だったのになあ」

「仕方ないよ、見に来た人が何人も湖に落ちちゃったんだから。立ち入り禁止にでもしておかないと……」

 夢はコーヒーを一口飲んでから、眠たげに閉じられていた瞳を開いて言った。


「死人出そうだもん、あそこ」


「……見えたの?」

「テレビ越しでも分かったよ、騒がしくてあそこの主が怒ってる。多分、あそこの管理者……黄昏家の人が立ち入り禁止にするよう、言ったんだろうね」

「姫の家かあ」

 黄昏 姫(たそがれ ひめ)は黄昏家の次期当主のクラスメイト。生まれつきの金髪はすごくきれいなんだけど、家の都合で髪は短く切りそろえられているのが少しもったいない。でも逆に、名前とは裏腹なあいつの男前さを引き立てている気もする。高身長で見た目もかっこよくて、文武両道、歌と踊りは恐ろしく下手

ーーこのことは私しか知らないのだが、そのせいか女子によくモテる。男子からも「抱いて!」なんて聞こえてくる日があるらしいがノーコメントを貫き通している。私もノーコメントで。一応そういったものに理解はあるし、嗜んだりすることもあるが現実でそういう妄想するのはハードルが高すぎる。


「じゃあ私祭り行ってくるね~」

「気を付けてね。絶対白日湖に近寄らない事!」

「わかってるって。夢も、友達とお泊り会するからって夜更かししないようにね?」

「はいはい、行ってらっしゃい」


 その時私も夢も気付いていなかった。本当に近づいてはいけなかったのは今は寂れた暁神社だったということに。


炎色の狐は静かに笑う

現在書き終わっている部分がここまでなので、次話はかなり先になると思います。一カ月に一話投稿できたら良いほうなので、もし次話を楽しみにしてくださる方がおられましたら、気長にお待ちいただけると嬉しいです。

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