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小春の時雨日和  作者: 藤宮はな
第三部:魔族的生活のスタート
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第43話わたしとソーニャさん、ホントに似てるの?

 場所はわたしの部屋。ベッドに座る。別にいやらしい事をしている訳ではない。今日はソーニャさんと色々話をしていた。


「ふむ。じゃあ、角は全然問題ないのだな。違和感とかもないか。時々、このタイプの魔族になった奴で、体の不調とか角の違和感なんかを覚えるのがいるんだが」


「え、うん。角もごく小さいのだから、寝にくいとかもないし、それで困る事はないかなぁ。あ、でもちょっとだけ時雨が抱きにくそうにしてるのかも。当たってるのかなぁ。でも、そんなに尖ってないんだけど。・・・・・・尖ってないよね?」


 微妙に心配になって来る。わたし、面倒な体にホントはなっちゃってた? 髪も白い部分があるし。


「いや、うん、大丈夫そうだな。時雨はまだお主が魔族に適応したのに慣れないのだろう。余のように、魔族や人間、様々な者どもの闘いを見て来た者ならいざ知らず」


 ふーん、そう言うもんかな。でも何だかこの体になってから、結構調子はいい気がするんだよね。妙に体が軽いって感じで。


「ああ、それは魔力が体を補うからだな。身体能力なんかも上がるし、頭の方はどうしようもないが、魔力を使えば短時間限定で、集中力向上なんかのドーピングも出来るからな。その副作用で髪が変色するのは、まぁ染めたりしてどうにかするしかないな。今のままでも可愛らしいとは思うが」


 ははあ。色々便利だけど、反発も強そうだから、肝に銘じて普通に生きてよう。


 バトルに明け暮れる生活とは無縁でいたいし、出来るだけ変な事には首は突っ込まないで、自分の生活に集中して交友範囲も広げないでいたい。


 今の所は髪も染める気はなくて、自分のありのままを受け止めるつもりなんだよね。だから、変に目立つのは嫌だけど、致し方ないかもしれない。


「でも、ソーニャさん、魔力の流れとか体の状態とか見てくれてるのだけ見たら、なんかまともな魔族らしいですよね。随分と大人にも見えるし。容姿は未だに子供のままですけど」


 そうちょっとわたしが褒めると、ソーニャさんは胸を反らす。


「ふふん、そうだろう。余がどれだけ偉大か徐々にでも知ってくれればいいぞ。だがお主には感謝しておるのだ。時雨の状態も改善したし、お主らのカップルが契ってくれれば、我が一族も安泰だし、これだけ力の強い者の血が入るのは望ましい。何より、このご近所で勢力を伸ばすのに、あの八雲家なる吸血鬼の一族と繋がっておるのは大きいかもしれん」


「へえ。出雲ちゃんちってそんなに凄いんだ。でもわたしとしてはさっきも言ったと思うけど、何もそんなのに関わり合いにならないで、時雨と平穏に暮らしたいんだけどな。でもソーニャさんにもやる事あるだろうし、まぁ迷惑にならない程度に、影で暗躍するくらいは許してあげますよ」


 わたしがまた調子のいい事を言った為に、ぱあっと顔を輝かせて、子供らしい笑顔を見せるソーニャさん。ホントに大昔から生きてる女傑なんだか。


「そうかそうか。お主、段々年寄りに優しくなって来たではないか。そうだ、余にもっと優しくしてくれい。余もお主らに力をこうして貸してやるでな。余のアドバイスが必要な時もあろう。スピリット能力の事でも相談に乗っても構わんぞ」


 いやー、その辺は自分で研究していきたいかなぁって。


 SCCちゃんともあれこれ話をして、どんな感じに応用が出来るかなぁって試行錯誤はしてるんだけど。


 ま、使う機会がないに越した事はホントにないんだけど。


「ん? 何やら向こうが騒がしいな。とりあえずこれでいいだろう。魔力の流れも安定しているし、副作用で闇堕ちみたいな事も一時心配したようになってはおらんし。さ、行こうか小春」


 一応、わたしも自覚はもっと持たないといけないよね。何か魔族のコミュニティーに参加していた方がいいのかな。出雲ちゃんちとももっと交流を持つとか。




 居間に二人で向かうと、今日は休みなのに珍しくお姉ちゃんが家にいて、何故だかティナさんと争っていた。


「絶対に小春の方が優秀よ。この間だって小春を止められる人はいなかったんでしょ。真面目だし、これからもっと凄くなるんだから」


「いーえ! マスターはご主人様と違って、大昔から一族の頂点に君臨して来たんですー。今はまだ弱体化してますけどー、絶対に完全復活したら、人間なんて目じゃないくらい凄いんですからー」


「何よ、小春だってもう普通の人間じゃないわよ。ソーニャさんって、結局は封印されたんでしょ。それって魔族としてどうなんだか」


「むー。何ですか。ご主人様はカリスマ性に欠けると思いますー。だって誰にも畏怖されて、支配出来る力を持ってないですからねー」


 何だろう。凄く低レベルな争いだ。


 お姉ちゃんのわたしラブ度は、そりゃあもう凄まじい物があるから、どこかで導火線に火がついたら、誰も止められないのはわかってるけど、別にわたしはソーニャさんと競ってないし、魔族として認められようとも思ってないんだよ。


 大体、ソーニャさんは偉大なご先祖様なんだし、時雨にも力を貸してくれる人なんだから、悪さしない限りは、わたしは友好的にやっていくつもりなんだけど。


 どうして、わたしが恐れられる支配を敷かなきゃいけないの。お姉ちゃん・・・・・・。


「あわわ。もうお止め下さい。そんな事言い合っても、何にもなりませんよ」


 時雨がおろおろと仲裁をする。お、君はわたしを崇拝する様に見てるのに、お姉ちゃんには荷担しないんだね。


「何ですか、時雨さん。あなたは小春を信じないんですか。小春はまだまだこれから可能性のある子ですよ。それがもう完成されてるソーニャさんと今互角なんだから、これから追い越すに決まってるじゃないですか」


 うーん。そんなに愛されて嬉しいけど、わたし少し困っちゃうな。


「何だ。アホな話しとるな。余らは一族なんだから、そりゃあ組織として頂点は余なのは決まっとるが、力の大小など相性もあろうに、測っても虚しいだけだろうが。その上で時雨のご主人様な小春を敬わないといかんのじゃないか」


 あ、ソーニャさんも引いてるんだ。これは味方がいてラッキー。


「そうですよね。そう、皆仲間なんだし、争ったってしょうがないですよ」


 うんうん、と二人で頷いているも、まだ二人は不満顔で言う。


「そもそもー、なんでマスターともあろう人が、こんな小さな子に仕えないといけないんですかー。仕えてるのは時雨さんだけじゃないんですかー。マスターは偉大な一族の長なんですから、もっとどーんと構えて貰わないと。相変わらず、マスターはヘタレですねー」


「な?! 誰がヘタレだ! 余はやる時はやる女だぞ。第一、時雨に不利な事のないように気を遣ってると言うのに、そんな台無しにする様な事言わんでくれ」


「えー、マスター。もっと威厳見せてもいいんですよー?」


 むむむ、と唸るソーニャさん。お姉ちゃんも時雨に迫っている様だけど、こっちはどうだろうか。


「時雨さんはどっちの味方なんですか? 小春を可愛いと思わないんですか。全ての頂点に立つのは小春だと思いません?」


 時雨は困ったと言う顔をしながら、答えを述べていく。


「え、えーと・・・・・・ですね。その、実際の所、ご先祖様もお嬢さまもそんなにまだまだ凄い訳ではないんじゃないですか。そりゃあ私はお嬢さまに心酔してますし、いつまででもついて行くつもりですけど。二人とも大分幼いって言うか、子供らしいと言うか」


 むむむ。今度はわたしが唸る番だ。


 そりゃあわたしは子供ですよ。子供が子供らしくて何がいけないって言うの。


 大体、アンタはロリコンなんだから、それで興奮するんじゃなかったの。


 しかし、そう言うわたしの怒りとは別の沸点で、ソーニャさんが時雨に抗議する。


「誰が子供だ! 余は四桁の年齢だぞ。どれだけ年上かわかっとるのか。うー、余がこんな魔力的に便利な体をしないといかんのが原因か。そうか、容姿がロリなら、精神も幼く見られるのか。くぅー、何て無礼なやつらなんだ。余は悲しい!」


「だって、そうやって大人げないじゃないですか。もうちょっと落ち着いて下さいよ、ご先祖様」


 時雨の言い分は尤もだ。そう言うとソーニャさんは、ぐうと言って黙ってしまう。


 よし、今度はわたしの番だ。


「ちょっといいかしら。そもそもわたしは子供なんだから、幼いとか子供っぽいとか言うの自体おかしくない。成長してないとでも言うのかしら。そ、そりゃあ体は幾分幼いかもしれないし、まふちゃんとか見ると眩しくて羨ましいけどさぁ」


「ああ! お嬢さま、そう言う意味ではないんです」


「じゃあ、どう言う意味よ?!」


 キッとわたしは眼鏡の奥の黒目を光らせて時雨を睨む。


 ソーニャさんは次第に赤い瞳を涙で濡らしてしまっている。何だか可哀想になって来る。もうちょっと皆、老人を労ってあげないと。


「・・・・・・、小春よ。何か失礼な事考えてないだろうな。余は幼くもなければ、よぼよぼの婆さんでもないんだぞ」


 うーむ、鋭い。しかし、老人だと言うのは否定しないんだな。


「そ、そのですね、お嬢さま。お嬢さまは優秀ですし、お優しい方ですが、まだ子供らしい激情も持ち合わせておられますし、ご先祖様は年期の入った貫禄をもう少し見せて頂きたいんです。お二人に望む物は小っちゃな物ではないので、もっともっとと求めてしまうんです。お嬢さまは私の最愛の女性なのですから、どんな人格でも全面的に受け入れるに決まってるじゃないですか。ご先祖様も勿論、ちゃんと尊敬してますよ。だから機嫌直して下さい、ね」


 むぅーとわたしとソーニャさんはむくれる。


 何故、木の葉お姉ちゃんとティナさんが言い合いしてたのに、わたし達に矛先が向いたのだろうか。絶対に時雨がいらない事言ったからだ。


「じゃあ、何もあんな風に言わなくても良くない? そもそもわたしはアンタ達一族に巻き込まれてるのに、何でそんな同列に扱われなくちゃいけない訳」


「そうだ。小春は協力者なんだ。だったら、余を一番に扱うべきだろう。小春はその辺わかっとる。余が長老だと言う自覚がお主らには欠けておる。ティナもだぞ。お主には小春がご主人様だと言う自覚が稀薄なんだ。二大頭目みたいな扱いでちゃんとお主らも足並みを揃えてよろしく頼むぞ」


 ねーとわたし達は目を見交わす。おお、何だろうか。ソーニャさんとここまで意気投合するとは。わたしも段々毒されて来てるのかな。


「あー、なんか似てますね、お二人。頑固な所とか、機嫌の損ね方が可愛らしい所とか」


「マスターは子供っぽい所もチャームポイントですしねー」


「うーん、じゃあナンバーワンは二人でいいのかしら。小春がいいなら、まぁいいけど」


 な?! 何故、わたしとソーニャさんが似た者扱いになるの。全然違う。そう二人で抗議するも、三人は生暖かい眼差し。


「いやいやいや、絶対似てないって。わたしは精神的引きこもりだけど、ソーニャさんは活動的じゃないの。他にもソーニャさんは悪戯好きだけど、わたしは融通利かないよ」


「そうだそうだ。余は大らかだが、小春はせっかちだ。余は小春の様な探究心は持てないが、小春は余の様な目の配り方は出来んだろう」


 そう言って鼻息荒くする。どうだと言わんばかりに。


「ですから、そう言うムキになる所とか、本当にそっくりですよ。やっぱり魔力が繋がってるのも関係があるんですかね」


 ななな?!


 そんな事したから、そんな疑われる様な精神汚染がされてしまったんじゃないのか。わたしはもっと前はピュアだったはずなのに。


 いや、自分で言うのも些かおかしいのはわかってるけど。


「でもでもわたしは、ソーニャさんみたいに覗きをしたりとか、駄目な事はしないよ」


「いやいやいや、余こそこの小娘の様に、嗜虐心を出すみたいな性格の悪さは持ち合わせておらんぞ」


 むーと今度はわたし達が睨み合う。言ってくれるじゃない、と。


「まぁまぁ落ち着いて下さい。どちらも大人げないですよ」


「わたしは子供!」


「余に子供っぽいと言ったのはお主らの方だぞ!」


 むむむむ、と険悪になる。そこではあ、とお姉ちゃんが溜め息を一つ。


「でもこんな手の掛かる事言ってくれるなんて、お姉ちゃん嬉しいわ。そうよ、今までが聞き分けが良すぎるくらい、いい子を演じてたんだから、自然に振る舞っていいのよ。何でも言う事聞いてあげちゃうから」


 ハートマークでも出てる様な甘い声でお姉ちゃんにそう言われて、わたしもそこまで悪い気はしない。ちょっと毒が抜かれた形になる。


「そうですねぇ。お嬢さまはいいとして、ご先祖様にももう少し優しくしましょうかね。見た目は小っちゃな可愛らしい子供な訳ですし」


「?! 余をそんな目で見るんじゃないぞ、時雨。ティナだけで愛してくれるのは充分だ」


 ぶるっとしているソーニャさん。


 ヤバい、ロリコンモードの時雨は、わたしでもどうする事も出来ない。でもこれに目くじら立ててても仕方ないのよね。


 時雨がロリコンだって言うのはわかってるんだし、それくらいは大目に見てあげないと。


「まぁとにかく、喧嘩は止めてね。皆家族は仲良く! ティナさんもわかった?」


「はーい。マスターもそう言ってますし、あたしもこれから気をつけます。ご主人様がマスターと同じ性格だってわかりましたから、何だか可愛く見えて来ましたし」


 いや、わかってない。わかってないよ、あなた。だから何度もわたしとソーニャさんとは違うと言ってるのに。


 大体、ソーニャさんがこんなにわたしレベルなのって、何か根本的におかしくないのかな。相当年期が入ってるって言うのに。


「ティナ、お主! 小春に惚れてはいかんぞ! お主は余のパートナーとなるべくだな。余が絶望のずんどこに落ちてもええと言うのか」


「ああ、マスター。鼻水拭いてくださーい。あたしはマスターを見捨てませんってー」


 うーん、この二人も仲睦まじい様で何より。しかし、何だかやっぱりティナさんはふわふわしてるなぁ。


「さ、私はじゃあこれからお仕事しますね。お嬢さまもお勉強頑張って下さいね」


 う。やっぱり本を読むの少し控えないといけないのかな。もうちょっと真面目に勉強した方がいい?


 授業をもっと真面目に聞けば、家で勉強する時間を減らせるかなぁ。とにかく本がいつでも読みたくて仕方ないわたしに、それは酷ってもんだよぉ。




 何だかその後も少しだけ、わたしとソーニャさんは牽制し合いながら、ティナさんにちゃんと皆で仲良くしましょうなんて言われて、そんなにわたし達は似てない、と言う所だけはお互い主張していた。


 ただ皆、そう言う所が、とお茶を濁しながら全然言い分を聞いてくれないのだった。


 それでもわたしは気にしないようにして、自分で幾つかの予習復習なんかをして、勉強していた。


 ちょっとは英文にも慣れるかって感じで、時雨に教わっていたので、小学校の英語の授業もそれなりに楽にはなっていた。


 コミュニケーション重視の授業ってのは、ホント何とかならないかと思うのだけど。


 だって大体、普通に考えて、色々怖いし外国に出て行く事もないと思うし、それだけに色々な文献が読みたければ、文法が最低限出来てればいいんだし、発音なんてどうせそんな一朝一夕で完璧にマスター出来る訳もない上に、最近は現地の訛りとかにも外国人は寛容になっているのは移民が増加してる歴史的背景があるんであって、そんなに目くじら立てて移住したい訳でも外国人と英語でコミュニケーション取りたいのでもないんだから、もっと座学を学びたいくらいなのだ。


 そう言うのは中学になったらもっと本格的に嫌ってほどやるだろうけど、どうせ英語をやるんなら、中学でやる文法とかをもっと丹念に小学校でも教えて欲しいのである。


 まぁ、結構な子が塾とかでそう言う勉強をやってるんだろうけど。


 わたしには時雨がいるし、いざとなったら教本を読んで勉強するもん。何だって最後は本を読んで独学ですよ。


 今だともっと色々な事もネットで勉強も出来るんだしね。後、大学の授業とかも公開してたりする。


 あ、それだと海外の物を見たければ、英語が出来ないと駄目なのか。


 ふん、今時は字幕が完備されてるサイトがほとんどだから、いいんだもんね。時雨にもしもの時は、英会話だって習うもん。


 そうして涙しながら、勉強の合間に少しずつ本を読んでいると、読書出来る喜びをヒシヒシと感じてしまう。


 第一、読んでるとリラックス出来るし、集中して時間を過ごす事も出来る。何てお得な趣味。


 脳だって多分、文章を読んでるのっていい作用があるだろうし。


 そう言う訳で、結構疲れてベッドに入るんだけど、時雨は電気を消す前に、こんな事を言って来るのだ。


「うーん、改めてじっくり見ますけど、そのお嬢さまの角、凄くキュートですね。丸っとしてて尖ってないですし、小さいのがお嬢さまらしくて素敵です」


 ええ、そうですね、わたしは色々と小さいですよ。


 しかし、そう感じているわたしにお構いなしに時雨はきゅっと触って来る。


「や! 時雨のエッチ! そんな大事な所、むんずと掴むなんて」


「えー。そんな反応されるとは思いませんでしたよ。お嬢さまこそ、私の胸とか触ったりしてエッチなんじゃないですか? 角の堅さとかだって興味あるんですから、ちょっとくらいサービスして下さいよー」


 うー。わたしだってエッチな事そりゃあ考えますよ。


 まぁ、時雨もそう言う好奇心はそりゃああるだろう。


 ソーニャさんは封印されてたし、時雨には人間じゃない種族の特徴は外見上一切ないのだから。強いて言えば、牙くらいかな。


 それならわたしの角にメロメロになるのもわからんではない。


 でも、やっぱり少し恥ずかしい。ここって、多少敏感になってる所だしさ。ほら、やっぱり触覚的な役割もあるのかもしれないし。


「じゃあ、もうちょっと優しく、それにエロくじゃなく触って。む? ちょ、ちょっと」


 ガイドラインみたいな事を言おうとしてたら、頬をさわさわされてキスされた。な、何? 急に。


「凄くお嬢さまが愛おしくて堪らなくなってしまいました。愛情表現って大事ですよね。私ももっと恥ずかしいの乗り越えて、お嬢さまに感情を発露しようと思いまして。だから角ももっと弄って行きますよー」


 その言い方が妙にやらしいんだけど。それに君の引っ込み事案な所は、時々変に積極性に変換されて、わたしに向かって来るから、受け止める側も大変だよ。


 うん? そう考えたら、時雨の方がその意味ではわたしに似てるじゃない。そっかそっか。


 わたしがニヤニヤしてると、不思議そうに首を傾げる時雨。


「どうしましたか、お嬢さま。何だかちょっと人様には見せられない笑い方をしてらっしゃいますが」


「嫌なツッコミするわね。でも、いいわ。あのね、その内気なのに結構勢いでわーって行動しちゃうとこ、わたし達そっくりだなって。それでソーニャさんと似てるって言われるより、時雨との共通項を見つける方がわたし嬉しいの」


 ハッと口元を抑えて、時雨は何やら停止している。どうやら歓喜に打ち震えているらしい。


「わ、私とお嬢さまが似た者通しだなんて。そんな恐れ多いですが、それ凄く嬉しいなんてものじゃありませんよ。滅茶苦茶お似合いカップルって事じゃないですか!」


 え? そ、そっか。そう言う考え方もあるのか。


 そんなに相性がいいとなると、ますますラブラブでいたいのは当然か。


 だから、わたしも時雨にキスしてから、立ち上がって電気のスイッチをボタンで操作する。眼鏡も外して机に置く。


「ありがと。さ、寝よ。わたし、もう今日は疲れててさ。また時雨が色々教えてくれたら勉強の効率も上がるだろうし、やっぱり一人でやるのも限界があるかなぁ」


「はい。いつでも私で良ければ、お嬢さまのお役に立ちたいです。何なりとお申し付け下さいね」


 そうしてわたし達は和やかにおやすみを言って、その日はぐっすり眠りに落ちた。


 時雨の柔らかい体が、ちょうどいい抱き心地でホントにこの頃は熟睡出来ているのですね。


 ああ、いい気持ち。




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