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小春の時雨日和  作者: 藤宮はな
第三部:魔族的生活のスタート
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第39話新魔族のスクールライフ

 また朝起きたら調子悪い感じだったのだけど、一応学校には行く事にした。


 なんか諸々問題は山積みで考えないといけない事は多い気もするけど、うっかりしていてわたしはそのまま何も考えずに学校に行ったのだった。


 まふちゃんと合流した時も驚かれたけど、何故かまふちゃんには血を吸うのを約束させられただけで済んだ。


 でも後で大変かもね、と意味深に言われたのが気に掛かっていたのだけど。


 そう学校だ。わたしが行く所は。


 幸い、門の所に立っていたのが今日は静先生だったので、誤魔化せるかと思ったのだけど、上手くいくにしてもそう簡単にはいかなかった。


「おはようございます。って、え?! 雪空さん? そ、その髪は・・・・・・」


 うわー、そうだ。わたし今メッシュ入ってる白髪なんだった。どうにも困った。


 SCCちゃんは元に戻ったみたいで安心してたんだけど、わたしのこれは治っていなかった。って角はいいんですかね。


「そ、そのこれは突然こんな風に自然に脱色しちゃって。一応これ地毛なんですよ。信じて貰えないでしょうけど」


 狼狽えている静先生。


 この先生、ホントに大丈夫かなって時々思うけど、あんまりこう言う注意とかするの出来なさそうだなとも。


「そんな言い訳・・・・・・。反グレみたいな髪型いけませんよ。学校を休んでいたのは病欠って連絡があったのに、こんな悪い子になってたなんて」


 むー。ちょっと本気で悪い子モードになっちゃおうかな。


「ふーん。先生、信じてくれないんですね。いいですよ、どうなっても知りませんから」


 と少し冷たげに見ると、ひっと言って、


「どうしよう。不良だ・・・・・・。冴子ちゃーん。助けてー!」


 と冴ちゃんに泣きついてしまう。


 いやあ、脅しに弱すぎるでしょ。冴ちゃんを頼ったって駄目だと思うけどなぁ。


 大体、そこまで冴ちゃんを信頼してるんなら、冴ちゃんの服を見逃してるみたいに、わたしも多めに見て欲しいですな。


「それじゃあ、教室に行きますんで。行こ、まふちゃん、冴ちゃん」


 ふふ、と悪戯っぽく先生にウインクを飛ばして置いて、睨みは利かせてみる。


 先生はどうもそれだけでビビったみたいで、多分角が及ぼす効果も少しはあったんじゃないかな。


「はー。ただでさえ体ダルいのに、あんなので生活指導なんてされたら、最悪だよ~」


 バタッと机に倒れ込んでいると、二人が苦笑している。


 この二人にしてみたら、時雨に寄りかかりすぎて、吸血鬼化したのはある意味自業自得じゃないかとか、そんな感じなのだろう。


 そう言えば、今日は普段話しかけてくれる子達も、挨拶もしないで遠巻きにしてヒソヒソやっている。


 どうやらこの頭が原因らしい。別に関係ないから、どうでもいいや。


 そう言う訳で、わたしは朝の会でも恐る恐るわたしに何故か話しかけて来る静先生に、なんか面倒だなぁと思いながらも相手をして、昼休みまで自分がそうなったからとか関係なく、オカルト関係の本を読みながらダルいなぁと思って過ごしていた。


 そうして給食の時間が終わって、まだ休み時間はあると言う事で、また読書に戻ろうとしていたら、出雲ちゃんが顔を輝かせながら来た。


「小春お姉さま~! やっと十冊は読みました。ちょっとは成果を認めて下さいますわよね?! わたくし、結構頑張りましたのよ」


 見ると目に隈が出来ている。そんなに気張らなくてもいいのに、相当気負いもあったんだろうな。


 って言うか、宿題は終わらせたんでしょうね、君。


「勿論ですわ。カリスマに手伝って貰ったり、教えられながら、かなり苦労しながらそちらも何とか提出しましたわ!」


 なるほど、しんどい目をしていたのは、そっちも頑張っていたからか。偉いじゃないか。


 まぁ、わたしはその出雲ちゃんが読んでる倍以上は読んでるのだが。


 とりあえず傍に来たので、頭を撫でてやる。


 これくらいのご褒美はあげてもいいんじゃないかな。別にご褒美でも何でもないかもしれないけど。


「あ、あのお姉さま。わたくし、これからも精進致します。それだから、ってお姉さま、その頭は一体?!」


 気づくのが遅いなぁ。って言うか、こう言うノリツッコミみたいな反応する人多い気がする。君らは関西人じゃないだろうに。


「うん、ちょっとソーニャさんとか時雨の影響でこうなっちゃって。悪いかな。わたしが魔族の仲間入りしたら」


 ぶるぶる首を振る出雲ちゃん。


「いえ! いえ! 大歓迎ですわ。お姉さまがわたくしと同じ側に来てくれるなんて、何て喜ばしい事なんでしょう。ハッ。それならお姉さまと血の吸い合いっこなんかも出来るんではなくて? それはいいです。よろしいです! きっとお姉さまのテクニックは、さぞレベルが違うんでしょうねぇ」


 そんなうっとりしながら期待されても困るけど、そう言えば時雨はかなり気持ち良さそうに吸われてたっけ。わたしって才能あるのかな。


「おーい、小春。ちゃんと静先生には説明しておいたぞ。状況が全く理解出来ていない様な感じで、ある意味忖度させたみたいな丸め込み方だったのが、我には心苦しいが。遺憾と言ってもいいかも」


 うん、ありがとう。


 でもそりゃあ、そんな非現実的な説明で、はいそうですかなんて言う人はそうそういない。牙でも見せれば納得して貰えるかな。


「お姉さま、そうですわね。その恰好ではかなり生活が面倒でしょう。それ大分、力強い影響が出てそうですわね。ソーニャさんってそんなに強力な魔族ですの?」


 まぁ、あの人自体はポンコツと言ってもいいと思うけど、素質の面では大魔族だって自称してたからなぁ。


 実際、ティナさんとかも造っちゃうし、それなりに凄い人なのかも。


「うーん、まだ力は戻ってないらしいけど、そりゃあ凄かったらしい。でもそれでわたしにまでこんな影響があるなんて、今はそんなに嫌じゃないけど、ちょっと迷惑な気もするけどね」


 そう、何故今は嫌じゃないかと言えば、時雨の力にもっとなりたいからだ。


 時雨は魔族としての力が弱いので、わたしが協力してもっとパワーアップさせてあげないといけないのだ。


「そうそう、スピリット能力もあるんだ。ほら出出ておいで、ストーン・コールド・クレイジーちゃん」


 そう言うと、パッと出て来るSCCちゃん。結構この子可愛いから、気に入ってるんだよね。


「まぁ、可愛らしい。お姉さまにもそんな力が芽生えて、わたくしますます嬉しいですわ。して、その能力とは」


「ふふふ、それ仲間でも秘密にしないといけないって、漫画にあったんだよね。って言うのは冗談で、まだよくわからないの。凝固と流動とかなんか抽象的な概念しか理解してなくて、これからもっとこの子の事勉強しないとなって」


 ふーむ、と唸ってそれきり出雲ちゃんは理解するのを放棄したようだ。流石に勉強嫌いが筋金入りなだけある。


「ねー、それでハルちゃん、いつ吸ってくれるの。今日ハルちゃんの家でする?」


「な、何ですか?! そのいかがわしい会合は! 羨ましいですわ! お姉さま、是非わたくしにも参加の許可を!」


 うわー、ノリノリの二人。


 そりゃあ痛くはしないから、それなりにいいものだろうけどさ。後で牛乳とかパンを振る舞うのは、時雨なんだしいいとしても、それはわたしの家で全部賄うんだもんなぁ。まぁ、いっか。


「じゃあ、放課後ウチに来てよ。してあげるから。そんなに期待しないでよ。慣れてないし、別に上手くもないと思うし、そんなに吸血鬼としての自分を楽しんでる訳でもないんだから」


 しかし決まりは決まりである。そう言う事である。


 うむ。わたしはホントに流されやすい性格だと言うのを、再確認した。


 今までが決断を強いられ過ぎていて、これが本来のわたしらしさなんだと、ホッとする。


 いや、決して褒められた性格ではないはずなんだけどね。




 午後の授業で体育があったのだけど、そこで見た目と違って、ポンコツぶりを露呈させまくった為か、再び話しかけてくれる子もちらほらいたのは幸い。


 実際に身体的なセンスは向上していないらしく、魔力が高まっているだけみたい。


 そう考えると、何か魔族的に脅威が迫ったら、わたし達はスピリット能力で戦うしかなさそうだ。ソーニャさんみたいに、大魔族な訳でもないんだから。


 そう言えば、冴ちゃんから聞いた話では、どうも静先生は眼鏡で素っ気ない感じのわたしも、少し怖いと思っていたらしく、あんな風に変貌した姿を見たら、あれほどビビるのは仕方がなかったのかも。


 でもちょっと人見知りする様な態度なだけで、寄りにも寄って先生が生徒に及び腰になるなんて、ちょっと失礼だと思う。


 まぁ、それは静先生みたいな人だから、わたしも許してしまえるんだけど。


 だって、静先生ってちょっと放っておけないくらい、ひ弱なイメージだもん。


 さて、今日も今日とて静先生と残って色々やっている冴ちゃんを残して、わたしは家に帰る。後で二人は来るそうだ。


 どうしようか、何だか血を吸うと思ったら気分が高揚して来ちゃった。これが吸血鬼の特性なんだろうか。


「ただいまー」


 鍵を開けて、奥に向かう。居間では片隅ではマルちゃんが作業をしていて、ソーニャさんも何やら本を読んでいた。


 時雨がぱあっと顔を輝かせて、わたしを迎えてくれるのはいいけど、今日の事を伝えるとやっぱりと言う表情と、そんな約束しちゃったんですか、な心配気な視線を向けて来る。


「お嬢さまが遊び人になってしまわれないか、私とても心配です。ああ、今のダークお嬢さまは悪女の素質充分ですよ。私もこんな事言って信頼してない訳じゃないですが、何だかちょっと怖いです」


 遊び人とか悪女とか、それわたしに言ってるのか。そんなに昨日はヤバい感じだったんだな。


 でも確かに自覚はある。ちょっとわたしの精神に色々影響を及ぼしているみたいで、少し今までより悪戯っ気が起こっているのは否定しない。


 ってかダークお嬢さまってなに。


「とにかく、あんな事言って二人とも興味津々だから、最初の内だけだよ。そんなに節操なくするつもりもないし。それとも何ですか、わたしは信用ならない嘘つきだって言うの?」


 慌てて時雨はぶるぶると強く否定する。子犬みたいで可愛いかも。


「いえいえ、そんな。私はいつでもお嬢さまの味方です。信頼しないなんて事がありますか。ただ闇に支配されないかだけ、非常に心配で。あまり人間から吸血鬼になって、良かったって体験記も聞きませんし」


 まぁ、心配してくれるのは嬉しい。


 それだけ魔族になるって言うのは、危険な事だろうし、時雨もそれで苦労して来たんだしね。


 でもわたしは、それよりも時雨とついに仲間になった事も喜んでいるんだから、そのわたしの気持ちももっと深く汲んで欲しいな。


 そう言うやり取りをしばらくしていると、二人とも来た様だ。まふちゃんはいつも通りだが、出雲ちゃんは妙にそわそわしている気がする。


 よし、と牙を光らせて、心の準備を始める。とりあえず時雨にはその後の栄養補給の準備をして貰っておいて。


 まず出雲ちゃんにしてあげる事になった。


 出雲ちゃんは緊張し過ぎで死にそうみたいに、吸血する直前にはなっていて、ピクピクしている。


 そんな、エッチな事する前じゃあるまいし、同じ吸血鬼がそんなに身構えなくてもと思ったけど、そうか出雲ちゃんは吸われる側になるのは初めてだからだな。


「じゃあ、いくよ」


「お、お願いします。お姉さまぁ・・・・・・」


 この子、かなり最初からエッチな気分でいるんじゃないかってくらい、そう言う緊張感がある様な。


 だ、大丈夫だよね。いかがわしい事してる訳じゃないんだから。


「あむっ。ん・・・・・・んん、うん、中々の味。吸血鬼だと人間と違うのか、またまふちゃんと比べてみなくちゃ」


「ああーっ。お姉さま、す、凄いです。わたくしには真似出来ない、テクニック・・・・・・! 流石はわたくしのお姉さまですわ。お慕いしていて、これほど良かったと思う日も。ああっ、んんあっ、いけませんんっ」


 うるさいから二度吸いしてみた。


 大体、わたしは君のお姉ちゃんではない。


 わたしは木の葉お姉ちゃんの妹なんだから。


 と言っても、そう言う意味じゃないから、別に問題ないのか。


 でもそんな一方的な名称ってありなんだろうか。もっと違う関係も構築したいな、とちょっと思っているんだけど。


「はい、じゃあそっちで時雨さんに対応して貰って出雲ちゃん。今度はわたしね、ハルちゃん。さ、お願い。ちょっと緊張してきちゃう」


 うーん、やはりそんな儀式めいた行為だからか、少しは皆ドキドキするもんだよね。


 わたしも毎回、時雨にされる時はそんな風にときめきの気持ちがあるし。心拍数もあがっちゃうってものですよ。


「はい、それじゃあまふちゃんのも味を拝見。んん、むー、はむはむっ、うん。やっぱり人間の方が美味しいのかも。まふちゃんのも、わたしがまふちゃんの事好きだからか、凄くいい」


「ふぇ? そう、良かった。でも、んんっ、ハルちゃん、まだ吸うの? あん、はあっ、時雨さんよりも凄いかもぉ・・・・・・」


 とりあえずこれでいいんだろうか。お互い癖にならない様に注意が必要だ。


 まふちゃんと出雲ちゃんの艶めかしい喘ぎ声を聞いてたら、こっちまでくらくらして来ちゃいそうだし。


 こっちはもっと吸いたくなる欲求がむくむくと起こって来そうで、それ以上にこれでちょっとエッチな気分にもなりそう。


 それどころか、そんな欲望もこの吸血行為で幾分か満たされてしまっている感じがあるのだけど、やっぱりこれももしかしたらエッチな行為でもあるのかもしれない。


 って言うか、まふちゃんの血、凄く美味しいから、危ない気もする。


 ああ、それじゃあわたしヤバい不純同性交友をしてしまってるのか。


 でもでも、それは時雨ともしてたので、もう今更って気がするし、それを先生に咎められてもわたしは撥ねつけるかな。


 どうだろうか、ちょっともしかして、わたしは悪い子になりつつあるのだろうか。


 とりあえず二人には満足して貰えた様で良かったし、その後も少しわたしを見る目が違ったかもしれないけど、つつがなく過ごす事が出来た。


 時雨は少し不満があるかもしれないけど、今日だけは多めに見て欲しいな。




「ただいまー」


 久しぶりに聞く声。お姉ちゃんだ。


 その前までは、そうだ、出雲ちゃんをあんまり褒めてあげなかったから、明日ちゃんとそれ言ってあげようと思ってたんだけど、一瞬で忘れちゃった。


「おかえりー」


「あー、疲れた。今回は結構色々やる事が多くて、大変だったー。って何それ?! 小春、一体どうしちゃったの。いやー、可愛いけど、ホントにどうしちゃったの」


 混乱が見られる。


 そして、わたしの事ならどう言う角度からも萌えて来ると言う所が、やはりお姉ちゃんは強者だなと思うし、それくらい愛されてわたしも幸せだ。


 とりあえず経緯を説明する。魔族になっちゃったのよ、と。


「はー、なるほど。でもそれで小春が色々出来るようになるなら、良かったのかしら。ちょっと世間的に白い目で見られないか心配だけど、よっぽどなら黒く染めてればいいものね。それよりこの角! 触っていい? きゃー、可愛い。キュートな小春! 白くなってる髪も好き!」


 ・・・・・・ってもう触ってるし。


 いや、ちょっとくすぐったいけど、お姉ちゃんにならいっか。


 それにわたしの事あれこれ論評しないで、こんなに全面的に肯定してくれてるのお姉ちゃんだけじゃない。


 勿論、この前のダークな面をお姉ちゃんは見てないけど、時雨だってちょっと怖がってるくらいなんだから、それを知っても大丈夫ならお姉ちゃんへの好き度がもっとわたしの中で急上昇しそう。


「えへへー、お姉ちゃんくすぐったいよー。それより大学の勉強大変だね。積極的に遊ばないで勉強してるからでもあるのかな。今日はお背中流してあげよっか」


「! 小春ぅ~、何でそんなにお姉ちゃんに優しいのー? 嬉しいなー。時雨さん、これが私の妹ですよ。どうですか」


 時雨を見ると微妙に苦笑してる。何だ、その顔は。


 この娘の本性知らないからそんな事言えるんだ、みたいな目をしてるんじゃないかな。うん?


「あー、呑気でええのう、木の葉は。このご主人のダーク化した怖さを知らんから、そんな事が言えるんだよ。こやつのスピリット能力はほんに恐ろしいんだから」


 む、とシベリアン・カートゥルーでコップの中のお茶を冷やしながら、お姉ちゃんはソーニャさんの方を見る。


 な、何と。お姉ちゃんは、スピリット能力を纏う事が出来るのか。


 そこまで使いこなしているとは。これ、某能力バトル漫画で見た事ある。凄く強い敵がやってた!


「どう言う事ですか。こんなに天使みたいな小春を捕まえて。ねえ、時雨さんも、ってあら?」


 目を逸らした時雨を見て、少しおかしいと思うお姉ちゃん。


 そこでソーニャさんがこの前の出来事を語る。しかしお姉ちゃんは動じない。どこまでもわたしの味方だ。


 お、お姉ちゃんにずっとついて行く!


「やーん、小春に血吸われてみたーい。それに時雨さんにやってるのは、じゃれてるんですよ。ソーニャさんはソーニャさんがちょっかい出すからでしょうし。小春はそのダーク化?って言うのしても、依然として優しいままだと思うな。本音が前に出て来るのはいい傾向ですし」


 ああ、そんな風に擁護してくれるなんて。


 じゃあ、わたしは自分を悪い子だなんて思わなくていいんだ。


「当たり前じゃない。私の可愛い小春が悪い子なんてある訳がないわ。小春はずっと天使みたいないい子よ。ええ、お酒なんて飲まなくても」


 時雨とソーニャさんはキョトンとしてるが、わたしにはネタ元がわかる。


 しかし、その比喩は今適切じゃないよ、お姉ちゃん。


 それじゃあ、わたしがやっぱりちょっとおかしいみたいじゃないの。


「じゃ、じゃあお嬢さまのグッと迫って来る迫り方に、私はそんなに警戒しないでいいんでしょうか」


「大丈夫ですよ、時雨さん。そこまでエスカレートしないと思います。小春だって節度は弁えてるだろうし、それに小春は引っ込み思案でもあるから、そこまで大胆な事は出来ないです。やっちゃったら、後で後悔して凄く反省しますし」


 少し安心している様な綻んだ表情の時雨。ちょっと誤解も解けた様で何より。


 これからもじゃあ時雨に甘えても、大丈夫って事だよね。


「ええ、存分に甘えさせて貰いなさい。時々はでもお姉ちゃんにも甘えて欲しいな。いい?」


「うん、お姉ちゃんにならいつだって何でもしてあげる。さ、お風呂行こ」


「うーん、そう言う事じゃないんだけどなぁ。私がしてあげたいのに~」


 そうして、わたしとお姉ちゃんは久しぶりにお風呂に一緒に入った。


 しっかり体を洗ってあげたので、お姉ちゃんは凄く嬉しそうだったのが、わたしには凄くいい事実なのだった。


 所で、やはり時雨にもそう言う事をしてあげないと、ちょっと拗ねたりしそうで、わたしは気が引けるかもしれない。


 明日は、時雨と一緒に入って、体を洗ってあげようかな。




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