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小春の時雨日和  作者: 藤宮はな
第一部:小春と時雨の関係の始まり
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第2話大人のお姉さんが憧れなんですか?

 お嬢さまが起床する前に食事の準備をして、起こすのです。焚火お母様との契約もありますしね。


 木の葉様は何やら休みの日は、お嬢さまと一緒に朝食を取りたいとの事で、待機されるとか。一応、作ったのですが、もう少し待つのだそうです。では、いざお嬢さまの部屋へ!


 お嬢さまの部屋に入って、しばらく頼まれていた通りに、お嬢さまの寝顔を撮影します。まあ何とキュートなのでしょうか、涎を垂らして枕を濡らしているではありませんか。


 ちゃんとお洗濯してあげませんと。そうして、しばらく撮影してから、これくらいでいいかと言う所で、撮影モードはそのままにちゃんと続行しながら、お嬢さまに触れてしまいます。


「お嬢さまー、朝ですよ。規則正しく起きてるんですよねー。起きないと私の好きにしてしまいますよ、うふふ」


 ちょっと挑発的な言葉をかけておくと、ハッとしたようにお嬢さまがむにゃむにゃやっていたのにスッと目をお覚ましになります。


「さあ、ではお目覚めのキスでもしてさしあげましょうか」


「寄らないで。って、まだ目覚ましもなってないじゃない。いやいや、それよりその手に持ってるのは何よ!」


「これですか。ビデオカメラですけど」


 キョトンとしてみせて、しれっと言うと、案の定面白い反応が返って来ます。


「そうじゃないでしょ。なんで撮ってるのかって聞いてんの。これ盗撮よ? プライベートな空間に入って来て、好き放題していいと思ってるの?」


 えーと少しくねくねしてみせると、お嬢さまはますます可愛い反応をします。


「これから撮影禁止! 撮ったのも消す事。そうじゃないと、血も吸わせてあげないわよ」


「しかし、お母様に頼まれたんで、仕方がないんですよ。私もノリノリですが、焚火様が何やら作画資料に必要だとかで」


 わなわなするお嬢さま。もうそろそろ居間に向かわないと、木の葉様を大分待たせる事になってしまいます。用意した食事をずっと置いておくのもどうかと思いますし。


「何でお母さんは、いつもいつも。それくらい妄想で描いてって言っときなさい。アンタも喜々として言う事聞いてるんじゃないわよ。ああもう、着替えるから先行ってて」


「手伝いましょうか。脱ぎ脱ぎさせてあげますよ」


 私としては手取り足取り、もう何でも甲斐甲斐しくやってあげたいくらいですが。お嬢さまの下着は洗濯の時に確認したのだけれど、直に穿いてる所も見たいじゃないですか。


「邪な事考えてるのバレバレだから、出てけ! お姉ちゃんに悪いから、即行で着替えるし」


 そう言って、追い出されてしまいました。いやー、中々お嬢さまは頑固ですね。もっと打ち解けるには、色々としないといけないようですね。



 朝食の場では、お嬢さまはコーヒー牛乳を飲んでいます。口の周りについている痕が、最高じゃないですか。


 どうしてこう少女は、こんなに無防備なんでしょうか。コーヒーを飲んでいる木の葉様は、爽やかに妹君のお相手をなされます。


 しかし、表情を取り繕っていて、完璧なイメージを与えている事に成功しているみたいですが、私の目は誤魔化せません。


 本当は、お嬢さまの事が愛しくて愛しくて仕方がない、それはもう通常の感覚を越えた萌え萌えな内心を持っているだろう事は、微妙に緩んでいる口元からハッキリとわかります。


 何か、同属の気配を感じて、これは私も見習いたいですが、果たしてこんなに自分を装う必要はあるのでしょうか。


「何これ、このいちごジャムすっごく美味しい! どこで買って来たの?」


 おや、それに気づいてしまうとは、流石お嬢さま、お目が高い。


「ああ、それはウチで作って来たのをおだししているんです。これからは、この家でちゃんと作ってあげますから、どんな味がいいかとかもリクエストして下さいね」


「ホントね。これ美味しいわ。パンの焼き具合も絶妙だし、目玉焼きも好みに合うように作られてる」


「アンタやるわね。仕事だけは出来るんだから、価値はあるのかも。うーん」


「氷雨さんにリサーチと称する教育を受けましたからね。お二人の普段の食べ方なんかは叩き込んでおります。お嬢さま、ほら口を」


 私はタオルでお嬢さまの口元を拭いてあげます。これ! これがやりたかったんですよね。子供のお世話でこんな事が出来るのは至高ですよ。


 大人だと、そうそうさせて貰えない上に、そんなに口元を汚している所を他人に見せませんものね。


「もー、自分で出来るったら。お姉ちゃん、今日もお友達とお勉強? 大学生ってもっと暇かと思ったけど、結構忙しいんだね」


「そうね。遊ぼうと思えば時間は沢山あるでしょうから、本当はもっと小春の傍にいてあげたいけど、色々自主的にやっている事があるからね。だから、私がいない間は、ちゃんと時雨さんの言う事聞くのよ」


 うっと言う顔をして、一旦の嫌悪を飲み込んでから返事するお嬢さま。やはりまだ距離はあるので、縮める努力をしたいですよね。


「うん、私どっちにしろゆっくりしてるだけだし、宿題も順調だから大丈夫だよ。いい子にしてるね」


 しかし木の葉様とお話ししているお嬢さまは、心なしかうっとりしている気がします。これは臭いますよ、この姉妹、最高な素材を提供してくれてます。


 食事中はまあそんなにドタバタと私に何か言ってくる事はないですが、それは木の葉様効果なのでしょうか。それでしたら、もっと木の葉様ともお近づきになるべきかも。


 朝食が終わってしばらくすると、準備をして木の葉様は出て行かれました。お嬢さまは、部屋には引っ込まずに居間で本を読み始めます。


 そう言うのもリサーチ済みですよ、私は。部屋にあまり引きこもらずに居間にいてくれた方が、氷雨さんは目が行き届いていいからと、その様な教育をしているとの事でしたからね。そして、お嬢さまもそんなに嫌がってる風でもないとか。


 私はお洗濯を干して、色々下準備する事をしてしまっていると、お嬢さまは宿題の方に取りかかっていました。傍に寄って行くと。何、とあからさまに嫌そうなお嬢さま。


「邪魔しないでよ。仕事終わったんなら、アンタもゆっくりしたら?」


「ええそうさせて頂きます。もうしばらくしたら、お昼もお作りしますからね」


 そうしてお嬢さまを眺める事しばし。いやーん、キュートすぎですお嬢さま。眼鏡をかけて真剣に宿題に取り組む姿は、いつもの愛らしさとは違って凜々しくてギャップ萌えで素敵です。


 しかしそれを崩してみたくて、ちょっと引っ掛けてみたくなりましたので、そうしてみるのです。


「そう言えば、お嬢さまってお姉さんが凄く好きなんですね。お顔を見ていたら、それはもう木の葉様を見ている姿はうっとりしていらして」


「な・・・・・・な、なにを。そんなに私露骨だったの? って言うか、記憶から消しなさい。お姉ちゃんはただ憧れの存在なだけだし」


「いやー、お嬢さまはしっかりしてるけど、実はシスコンなんですねー。姉妹百合なんて最高じゃないですか。眺めてるのもまた悶えそうです。それはそうと、お嬢さまはしっかりした年上のお姉さんがお好みなんですか?」


「ち、違うってば。そんなんじゃない。お姉ちゃんは、別にそんなんじゃ・・・・・・。だって、お姉ちゃんは私だけに優しいんじゃないもの」


 ふーむ。本当は子供らしく、お姉さんを独占したいんですね。大丈夫です、私がいますよ。


「それなら、私も頼りになる年上のお姉さんですし、慕ってくれても何も問題はないんですよ。ほら、幾らでも好きな物作ってあげますし、勉強も見てあげますよ」


「アンタとお姉ちゃんじゃ、全然違うわよ! お姉ちゃんは優しくて、こっちの嫌な事もしないし、いい匂いするし、体系もスマートだし!」


 ふうむ、なるほど。お嬢さまの中でかなり木の葉様は神格視されているご様子。


「それより、アンタ本当に大丈夫なの。吸血鬼って日光に弱いんでしょ。それに夜行性なんじゃないの?」


 何と私の事を気にして下さるとは。お優しいお嬢さまです。


「私の事気にして頂けるなんて光栄ですよ。でも心配には及びません。この能力も大分使いこなせるようになって、うっかりミスで灰になるなんて事もないですしね。それと私、実は昼間の仕事が出来るように、吸血鬼にあるまじき生活態度ですけど、昼夜逆転してるんですよね。以前は夜間のアルバイトとかこなしてたんですけど」


「ちょっとそれ本当に大丈夫って言うの。昼夜逆転ってかなりストレスになるんじゃ・・・・・・? わかったわよ、私も迷惑かけないように努力するわ」


 ちょっとだけしおらしい感じになってくれるお嬢さま。本来は内気な性格が垣間見られて、何とも眼福です。


「で、どんな風に戦ったりするのに使えるの?」


「は?」


 唐突に変な振り方をなさいますね。


「だから能力があるんなら、敵とかいたりするでしょ。それで能力バトルになってさ。どう言う風にアンタの力は使えるのよ」


「ああ! お嬢さまってバトル漫画とか好きなんですか。可愛いですー。でもがっかりさせるようですけど、日常で幾ら吸血鬼と言えども、バトルに明け暮れるなんて事にはなりませんよ。そんな生活、殺伐としてて嫌ですしね」


「ええー、何だつまんないの」


 露骨に残念そうな顔をされます。うーん、ご期待に添えなくて悪い気もしますが、私はあまり人様と争いたくないのですが。


「あ、能力の応用なら出来ますよ。影を暗くして、暗い所なら姿を隠せます。ほら、こんな感じで」


 そう言って、私は能力を複数のレイヤーを重ねるみたいにして、その場で黒い塊のように姿を見えなくします。そうしたら、お嬢さまはかなり食いついて来てくれました。


「何それ、すっごーい! これ、夜ならバトルにも使えるじゃない。後、今思いついたけどさ、夏場に暑さを凌ぐ応急処置に使えるわよ」


 キラキラした目が眩しいです! お嬢さまの無邪気さがどこかバトル脳みたいなのも、まだまだ幼い感じがして萌えポイントですし、私にそんな感情を向けてくれるのが、何より嬉しいですよ。


「ふふふ、なら闇夜でお嬢さまをお守りするのは容易ですね。さて、お嬢さま。ええと、そのー」


 少しモジモジしてみせて、期待を込めて眼差しを向ける。


「え、何よ、キモっ。もしかして、血? わかったわよ、吸えばいいでしょ。手早く済ませてよね」


 そう言って腕を差し出して来るので、ここは面白くしてあげようと、シャツを捲ってお腹に手を当ててあげます。そうすると案の定、愉快な反応。


「ひゃっ。ちょっと何捲って触ってんの。お腹とかエッチな場所からは駄目って言ったでしょ。懲りないわね、このエロ女」


「だって目立たない所の方がいいでしょう。それにお腹がエッチな部位って、お嬢さまもエッチなんじゃないですかー?」


 わなわなと震えるお嬢さま。本当にからかってたら楽しいですけど、これ以上はやめて置いた方がいいかもしれません。


「何言ってんの。私別に、エ、エッチな事なんて良く知らないし。お腹もちょっと過剰に反応しちゃっただけだし、ううっ」


「すみません、言い過ぎましたよ。じゃあ、腕の所、目立たずに傷にならないように吸いますからね。終わったら、ご飯作りますから」


 うー、とまだ唸っていますが、私は少し罪悪感を覚ながら、手を取り腕にキスしてから歯を立てて、吸血していきます。


 お嬢さまはやはり官能的な声を子供ながらあげて、それが私の気分を高揚させるのですが、努めて冷静を保ちながら、そんなに多くは吸わないように注意して、極上の食事をさせて頂きます。


 子供の血だからか、お嬢さまのだからか、はたまた生で飲む人間の血がそんな味なのか、とにかく私は美味しいお肉でも食べた時みたいにうっとりしちゃいます。


 事が終わるとお嬢さまは真っ赤な顔で、終わった?と上気したのを隠せずに尋ねて来ます。今すぐベッドに行きたくなってしまいそうですよね。


「はい! お嬢さま最高ですよ。さて、私も人間の食べ物は口に出来るんで、一緒にお昼ご飯食べましょうか。あ、お昼から勉強見てあげましょうか」


「・・・・・・お願い。って言うか、普通に食べられるんなら、今のはおやつ感覚なの?」

 やけに素直な小春お嬢さま。そして、しっかり抗議も忘れない姿勢は素晴らしい。うん、それと小春って名前は温かくていい名前です。




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