俺の中の獣
「面白い飴がある。一緒になめるか?」
そう言ってあいつは、俺に飴の入った袋をくれた。
断る権利なんて俺にはなかった。
さっそく飴の入った袋を開けてみた。
すると、肉球の形をしたかわいい小粒の飴が姿を現した。「女子かよ…」
俺は思わず口に出してしまった。
さっそく飴を口に運びたいところだが、あいつと一緒に食べる約束をしたんだ。あいつが家に来たら食べることにしよう。
…ちょっと待て。これは罠かもしれない。
きっと飴には毒が入っていて、俺は化け物か何かになっちまうんだ。まあ、それも悪くないけど…
そう思いながら、俺は眠りについた。
翌日、あいつがやって来た。
「飴、食べてないよな?」
俺は静かに頷いた。あいつは少しだけ笑い、
飴の入っている袋から一つ飴を取り出した。鮮やかな緑色の飴だった。
あいつは飴を口に含むと、バリバリと噛み砕いてしまった。俺はしばらくそれを見つめていた。
「お前にはこれかな。」
あいつは俺に飴を渡した。安っぽいコーラのような色をした飴だった。
俺はそれを口に運ぶと、しばらくなめていた。微糖の缶コーヒーの味だった。
俺は、あいつとしばらく見つめあっていた。
10分が過ぎた。あいつの手の爪が鋭くなっていた。犬のようなふさふさした尻尾も生えていた。呼吸もだんだんと荒くなっている。
「ハァ…オレ、もう我慢できない!」
あいつは、着ていたジャケットを脱いだ。
まるで特殊メイクのように毛がびっしり生えている。悪夢の中にいるようだ。
やがて、あいつは銀色のシベリアンハスキーの姿になった。2足歩行なのが幸いだ。
「オマエ、トモダチ…」
シベリアンハスキーになったあいつが、俺に近づいてきた。俺はあいつをなでようとしたが、できなかった。俺の身体も獣と化していたのだ。俺とあいつの雄叫びが、家中に響き渡った。
気がつくと、俺とあいつは元の姿で倒れていた。ズボンは履いていたが上は何も着ていなかった。しかも、いつもより息が荒い。
まるで薬でも盛られたかのようだ。
「あれ、やるか!」あいつは、再び俺を見て嬉しそうに言った。
俺は逃げようとしたが、床に落ちていた本につまずいて転んでしまった。
俺はあいつの方を向いた。あいつは俺を押さえつけ、甘い口づけを交わした。
口づけが終わってから3分間、俺はあいつのことしか考えられなかった。
それから5年後、あいつは夜空の星になってしまった。俺は今でも、あいつとの甘い思い出を忘れていない。