桜林
村の近くにある林に村の人はよほどの事が無い限り近寄らない、特に夜は。
林がある場所は昔野原だったらしい。
この地方で疫病が流行ったとき沢山の人が亡くなり、野原に大きな穴が掘られ埋められる。
埋めた場所が余りにも殺風景だったため桜の木が植えられ、野原は桜林になったそうだ。
桜林に夜近づくと木々の間から人の姿が見え声が聞こえるようになる。
村の人たちは埋葬された人たちが迷い出ているのだと噂してだれも近寄らなくなった。
それなのに市町村合併でうちの村を吸収した市の人たちは、桜林をライトアップして観光名所にする。
「凄い人出だったね」
「ライトアップされて桜が綺麗だったな」
「人がもっと少なければ宴会が出来るんだけどな」
お喋りしながら花見客が駐車場に戻って行く。
あんたら気がつきなよ、人出の割に駐車場が閑散としている事に。