値上げの理由を聞けました
更にptとブクマが増えました…有難い(ありがとうございます)
コンテストの参加を決めた翌日…
申請して、後は開催を待つだけ…とはいきません。
当日まではクックーラーメンを売りつつ情報収集です…宿も無料ではありませんし。
「これって…ダニチのコンテストに出てたシオラーメンじゃないか!」
知ってる人が居たのに驚きましたが厳密には同じではありません。
麺は強力粉の中華麺にしましたし、具も肉団子から焼豚風にアレンジしたクックー肉に変更して薬味のタマネギにはバジルに似ているハーブのみじん切りを追加していますから。
「これが噂のシオラーメンか!」
「あの時よりも美味くなってる…」
「アプさんの尻に敷かれたい」
情報が集まるよりラーメンのリピーターが増えてるのは気のせいでしょうか…?
お金さえ払ってくれれば何杯でも出しますけれど。
最後の変態は…気のせいですね、うん。
因みにラーメンは1杯14ハウト…日本円で700円です。
「あの真っ白なスープはないの?」
「あれはポクーの骨がないと作れないんです」
というか貴方は両方食べてたんですか?
まあクックーでも真っ白いスープは作れなくはないですが、時間が掛かる上に独特の臭みが出てしまいますからね…
高麗人参とナツメ、もしくは生姜がないと美味しくなりません。
こんな事ならジンジャーを幾らか持ってくれば良かったかも知れませんね。
「まだ夕方にもなっていませんが…品切れです」
「「「「「「「「な、何だってー!?」」」」」」」」
何でまだこんなに居るのかは置いといて、もう出汁殻しか残っていません…
予想外にもダニチのコンテストやボリアの行商市が宣伝になっていた様ですね。
まあ、売れないよりはいいのですが…明日は倍の量を仕込んでおきましょう。
「失礼ですが…貴女がキュアさんですか?」
はて…この村に来てからは1度も名乗っていない筈ですが?
まあコンテストや行商市で知った可能性もありますし…無視は出来ませんね。
「…どちら様ですか?」
「自分はこの地の領主であられるレン・プラトー様に仕える執事、セバスチャンと申します」
執事としてはありきたりな名前ですね、と思いはしましたが言わないでおきましょう…
それにしても名字を名乗られたのは初めてですね…王様やエリナ様はあえて言わなかったんでしょうけれど。
「それで…あたしに何の用ですか?」
「プラトー様は貴女との面会を望んでおられます、なのでご同行をお願い致します」
ふむ…あたし1人で行くのは危険な気もしますが領主に会うチャンスを逃す訳にはいきませんね。
「行くのは屋台を片付けてからでいいですか?」
「はい、構いませんよ」
一応アプさんとサーグァ様に交信で詳細を教えておきましょう。
万が一夕飯が遅れたら言い訳すら出来ませんから。
こう言っては何ですが…貴族の屋敷にしてはかなりショボい、ではなくボロい建物ですね。
雨漏りが酷そうというか風通しが良さそうというか…
「プラトー様、キュア様をお連れしました」
「ごくろー!」
ん?やけに元気な声ですね?
「よくきたな!わたしがレン・プラトー、5さい!このちのりょーしゅだいこーだぞ!」
5歳って…お子様ではないですか!?
何で代行とはいえナクアちゃんよりも小さい子に領主をさせてるんですか!
うん、蕎麦粉の値上げは悪徳領主の仕業と読んでいましたが…違いそうですね。
この子の背後を洗った方がいいでしょう。
「それで…何であたしを?」
「うむ!じつはキュアにおねがいがあるのだ!」
呼び捨てですか…まあ相手は貴族ですし構いませんが。
唐突にセバスチャンさんも一緒に正座…ってまさか!
「おねがいだから、コンテストにでるのはやめてください!しょーはいのみえたしょーぶに、なんにんもさんかをとりやめよーとしてるんです!」
ああ、先の屋台で薄々感じていましたがあたしの料理の噂がかなり広まってしまったのですね。
解ったからとりあえず土下座は止めましょうね?
セバスチャンさんも落ち着いて!
何とかプラトーちゃんとセバスチャンさんを落ち着かせて、あたしの出場を取り消して貰って…
「よかったぁ…もしきいてくれなかったらコンテストをちゅーしするところだった!」
それは申し訳ない事をしました。
「コンテストは辞退しましたから、代わりに聞きたい事があるのですが…」
「いーぞ!たいてーのことはセバスチャンがおしえてくれるぞ!」
やはりセバスチャンの名を持つ方は有能ですね…大変有難いです。
「では、蕎麦粉の値上げの理由…教えてくれませんか?」
「…実はこのレン家には借金がありまして」
やたらと長かったので要約しますと…
・お金を貸してくれた貴族は7日で1割の利子を上乗せして
・お金が払えなくなったら家具や骨董品、村中の緑まで回収していって
・残った借金を返す為やむを得ず値上げしたけれど
・プラトーちゃんの父…現領主が過労で倒れてしまった
7日で1割ってぼったくり過ぎでは?
とはいえ言いたい事は言わせて頂きますが…
「馬鹿なんですか?多少の値上げは仕方ないとしても、いきなりポクー並の値段まで上げたら誰も買いませんよ」
「お恥ずかしながらプラトー様の父…現領主様は非常に優しいお方なのですが、こんな事になるまでお金で苦労をした事がなく」
典型的な世間知らずですね…悪人でないのはいいとしても無能では先がありませんよ?
だからこそ狙われたのでしょうけれど。
「コンテストは去年、プラトー様の案でダニチの真似をした所大変な利益を生みまして…計算では後10回開催すれば借金が返済出来るとあって、しくじる訳にはいかなかったのです」
「因みにそのお金を貸してくれた貴族とやらは?」
「グヌット伯爵でしたらコンテストが終わった頃に取り立てに来られる筈ですが…」
…ああ、あのマリー様の温情で逃がしたネクロマンサーのオバサンですか。
成程、やけにアッサリ諦めたと思ったら…まだ資金源が残っていたと。
というかあのオバサンなら借金自体も仕組んでいたんじゃ?
確か技能に緑を使っていましたし、水晶を独占している可能性もありますね。
ヴァレンさんとデュロックさんを呼んだのが無駄にならずに済みそうです。
「もしかしたらですが…お金を返す必要はなくなりそうですよ」
「「…え?」」
「…という訳で、ネクロオバサンを捕らえたら蕎麦粉の値段を元に戻すと確約させました」
「またアイツかい…あたいの苦手な相手なんだが」
ネクロマンサーですしね…アプさんは幽霊の類が苦手だから仕方ありません。
ミラさんが居れば技能で緑を根こそぎ奪ってから袋叩きに出来たのですが…
「ああ、それと蕎麦粉の代金と参加費は返却してくれましたのでまたアプさんに預けておきます」
「あいよ」
「って事は蕎麦粉も返却か?」
「いえ、蕎麦粉は代金代わりに頂きましたのでこのままあたし達で食べましょう」
「代金代わり…って何の?」
「…実はですね」
参加は取り止めたのですが、あたしが関わっているのは確かという噂は消せないからと、急遽審査員にされたのです。
まあ無料で蕎麦を食べられると思えば悪くはないのですが…
「参加者61人も居たら間違いなく途中で飽きますし、過食になりますよ…はぁ」
本当に色々と言われていますがあたしは普通の人間ですからね…フードファイターみたいな胃袋は持っていません。
「キュアさん、私を忘れていませんか?」
あ、そういえば掌サイズのサーグァ様が…
「その気になれば本体と同じだけ食べられますから安心して下さい…というか私も蕎麦を食べたいです」
なにそれこわい…でもこの場で最も有難い事実です。
「…今ほどサーグァ様が頼もしく見えた事はありません」
「正直ですね…確かに私は戦闘では役立たずですけど」
詩人だから仕方ないですよ。
だから間違ってもコンテスト以外で普段通りの食欲を発揮しないで下さいね?
「所でプラトーちゃん、やたら着飾ってて解らなかったんですが男ですか?女ですか?」
「わたしはおんなのこだぞ!」




