自覚がなかった様です?
カチコミまで後4日となりました…
今日はジェネさんがヒーラーの魔力を増やす方法を教えてくれると言っていたのでお言葉に甘えようと神殿へ向かいます。
というのも…魔力を増やすには知識を増やすのが1番と聞いたから暇を見つけてはコカちゃんと一緒に本を読んだりしてましたが、あたしの魔力は大して増えなかったのです。
具体的には治療がギリギリで1回使えるぐらいです。
…決してカタカナしかない書面が読み辛くて眠ってしまうからではありません。
コカちゃんは魔導師とヒーラーでは必要な事が違うのかもしれない、と言ってましたし…本職に聞けるなら願ってもないです。
まあ…条件としてデストさんを一緒に連れて行く事になりましたがね。
「はぁ…まさかこんな形でジェネの居る神殿に行く羽目になるとは思わなかったぞ」
「巻き込んだのは申し訳ありませんが…あたしも出来る限り強くなりたいのです」
肉体的な強さは日々の修練を積むしかない以上、後は魔力を鍛えるしかありませんからね。
特に最近は組手の他は料理しかしてませんし。
「ま、料理に関しては俺にも原因があるし…ジェネが来いと言ったんなら最悪の展開はないだろ」
出来ればロウも連れて来たかったのですが…ロウはミラさんに連れられて修行に行ってしまったので無理でした。
護衛はどうしたんですか?
「でも何でミラはロウを連れてったんだろうな?」
「ロウはデストさんを兄貴と呼んでますからね…実の弟だと思ったのでは?」
意中の人を墜とすならまず外堀を埋めるという考え…判らなくはないです。
あたしも相手が双子の兄でなければそうしていたでしょう。
最近忘れられがちですがあたしとロウは双子ですからね?
「お待ちしておりました、炎の神の神殿へようこそ」
到着すると同時にジェネさんが迎えてくれました…炎の神なら間違いなくトゥグア様の事でしょうからまずは一安心です。
「おいジェネ…何で俺まで呼んだんだ?」
「私が会いたかったからよ?」
うん、神殿の中でイチャイチャするなと言いたい所ですが…崇めてる神がトゥグア様ならもっとやらねば逆に失礼ですよね。
何せラブコメが大好物と公言なさってましたから。
「では早速抗議から始めましょう…聖堂へ案内しますね」
抗議…余り長いと眠くならないかが心配ですが【覚醒】で乗りきれれば何とか。
「因みに聖堂ではいかなる魔法も使えなくなりますからね」
…気合で乗り切るしかなさそうですね。
流石に聖堂というだけあって神聖な力が満ちている気がします…
奥に見える女神の像はトゥグア様ソックリだし…そりゃトゥグア様を崇めてるんですから当然ですよね。
「これは基本的な事ですが、ヒーラーは修行僧とも呼ばれています…私達は神の声を聞き、神の力を借りる事で始めて魔法が使えるのです」
成程…つまりあたしの魔法はトゥグア様の力を借りて使っているのですね。
「勿論自分自身に魔力がなければ幾ら力を借りようと使えません…キュアちゃんは確か魔導師の仲間が居ましたね?」
「はい、それで本などで知識を増やしてはいましたが…」
「それはそれで必要な事ですから今後も継続して下さいね?ただヒーラーの場合もう1つ大事な物があります」
大事な物…それは一体?
「修行僧に必要な物は魔力、そして信仰です…とはいえただ崇めるだけなら誰にでも出来ますがそこに感謝や尊敬といった想いを強く込める必要があります」
あたしはトゥグア様に感謝と尊敬はしていますが…まだまだ足りない、という事ですか。
「でも魔力だけが高くても、信仰だけが高くてもいけません…この2つのバランスが大事なのです」
それで継続しろと仰ったのですね。
「とはいえキュアちゃんは信仰は問題なさそうですけどね…ミラに聞いた話だと聖域を発動しても支援魔法が使えて、しかも普通に動いてたみたいだし」
「え?普通に出来るのではないですか?」
「私も発動中に動けなくはないけど、出来る様になったのは神子になってからです…ですが発動中に支援魔法なんて、私はおろか大神官様ですら出来ませんよ」
「因みに格闘家になった場合、ヒーラーである間に覚えた魔法は使えるが上達する事はないからな…発動中に動くなんて不可能だぞ」
どうやらあたしは知らない内にとんでもない事をやらかしていた様です…
「後問題があるとすれば…何らかの理由でキュアちゃんには神の力が充分に伝わっていない、でしょうか?」
何らかの理由…あのアバズレの仕業でしょうか?
今度会ったら一撃入れなきゃいけませんね…
「もしくは祈り方に問題があるのかも…ここでいつもの様に祈ってみて貰えます?」
「判りました」
あたしの祈りに問題があるとは思えませんが…まあやってみましょう。
「ふんぐるい むぐるうなふ トゥグア ほまる はうと うがあ ぐああ なふる たぐん… ふんぐるい むぐるうなふ トゥグア ほまる はうと うがあ ぐああ なふる たぐん…」
「何て冒涜的な詠唱…問題しかないじゃないですか!?」
「ロウから話は聞いてたが…これは酷い」
ふぅ…今一ピンと来ませんがこれでいい筈です。
「おいキュア…その詠唱は何だ?」
「詠唱…とは?」
「あ、無自覚なんですね…まあ魔力が増えにくい原因は大体判りました」
「アレで判ったのか?」
「たまに居るんですよね、信仰心が強過ぎるせいで狂気に達してしまう人が…そういう人は魔力が増える以上に信仰心が増え続けているんです…様は頑張る程逆効果になるって事です」
「あー…いわゆる狂信者って奴か」
さっきから聞いていれば…まるであたしが狂信者みたいな言い方ですね。
「キュアちゃん、私が今から言う事は必ず毎日実行する様に…いいですね?」
~夜~
「………ふぅ」
ジェネさんに言われた魔力を増やす為にするべき事として
・祈りを声に出してはいけない
・終わるまで口を開けてはいけない
・終わるまで動いてはいけない
以上を意識しながら祈れとの事でしたが、本当に効果があるのでしょうか?
まあ先達のお言葉だし駄目で元々って奴です、今は信じてみましょう。
~その頃の女神~
『ふぅ、何とかなりましたね…強引な手段を使ってまでジェネさんに神託を出した甲斐がありました』
ああ…これであの冒涜的な詠唱から解放されればいいのですが。
確かに私の女神力は急激に増えましたがアレはちょっと…ねぇ?
でもこれでキュアさんの魔力は増えてくれるでしょう。
それにしてもキュアさんには本来ならば剣士か闘士になって貰って私の加護を込めた剣を使って貰いたかったのに…
彼女は私への信仰心だけで神子の適性を限界以上に高めてしまいましたからね。
幸か不幸か上位職は自分で選べますし、本人は格闘家になるつもりみたいだから専用の武器を用意しておけば…もしくはデストさんに作って貰えばいいですね。
そうだ、いっそツァトゥからデストさんに神託を下して貰いましょう。
勝手に私の世界に転生させたんだし、それぐらいはやって貰わないといけませんよね?
~キュアの部屋の前~
「おかしいな…キュアが女神に祈ってたのに、いつものあの詠唱が聞こえなかったぞ?」
「う、うん…キュアちゃん…一体…どうしちゃったの?」
「何か変な物食った…訳ないよねぇ?」
「…何でキュアの嬢ちゃんは今の方が異常みたいな扱いされてんだ?」