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この世界の王族と護衛は強かった

マリー様に呼ばれてアプさんと一緒にお城の演習場に来ましたが…壁は木製、床には畳があるのは何故でしょうか?


壁には木刀や他の武器、更に掛軸まで掛かってますし…因みに書いてあったのは【イノチダイジニ】ときましたよ。


というかこの光景…日本に居た頃に通っていた空手道場にソックリなんですけど。


まあ、広さは3倍ぐらいありますが…ここは大体36畳あります。


大理石の空間からいきなり畳が敷かれた道場が現れたこの驚きはどう表現した物でしょうか?


ですが畳があるなら今度あたしの部屋にも使わせて貰いましょう、日本人と畳には切っても切れない縁がありますから。


で、当のマリー様は既にミラさんと臨戦体制に入っていますし…やっぱりあの2人と戦うのですね。


「お待ちしておりました」


「では早速始めましょう、武器が必要でしたらその壁に立て掛けてある木製の物をお使い下さい」


それにしてもこの夫人様…ノリノリである。


あたしは拳ですから必要ありませんがアプさんは自前の盾に30cm程の木刀を取った様で…


そしてミラさんはナイフ(木製)、マリー様は長槍(木製)を使う様ですね。


「それで、2対2でやるのかい?」


「いえ、今回はお2人の純粋な技量を見たいので…キュアさんは私と、アプさんはマリー様と一騎討ちをして頂きます」


つまりタイマンですね、判ります。


「それとキュアさん、あくまでも純粋な技量なので支援魔法は使わないで下さいね」


釘を刺されてしまいました…まあ最初から使う気はありませんけれど。


「それとキュアさん、お手数ですが【聖域(サンクチュアリ)】を展開して下さい…万が一という事もありますから」


王様の夫人に怪我させる訳にも行きませんからね…言われるがままに【聖域(サンクチュアリ)】を発動しましょう。


「ですがあたしの聖域は5分しか持たないのですが…」


「普通は1分、長くても3分が限度な筈なのですが…」


「流石はサーグァさんのお気に入り、といった所ですね」


意外な事実を聞いてしまいましたね…まあサーグァ様に気に入られているのは知ってましたよ。


主にご飯が目当てなのでしょうけど。


「ですがご心配には及びません、私の模擬戦は…1分あれば十分ですから」


おや?マリー様の様子が…


「スゥゥ…………ルァアアアアア!」


って何て荒々しい雄叫びですか!


貴女王様の夫人でしたよね?気品が一瞬で消え失せてしまったのですが!


オマケに目が赤く光って、身体中が真っ赤に染まって一回りも大きくなってしまっておりますが!?


「あ、そういえば言ってませんでしたね…マリー様の職業は狂戦士(バーサーカー)、戦士系の上位職です」


ミラさん、それは先に言って欲しかったです…


聞いた所で何も出来ませんけれど!


「因みにマリー様の変化ですが…狂戦士(バーサーカー)のみが使える【解放】という技能による身体強化でして、理性と引き換えに筋力と瞬発力を上昇させる事が出来るのです」


見た感じ解放というより暴走ではないかと思うのですが…


まあ、触れないでおきましょう。


「こうなったらやるしかないねぇ…ミラ、会戦の合図を出しな!」


「判りました、それでは…始め!」




合図と同時にマリー様が突っ込み槍で横凪ぎに振り…ですがアプさんは難なく盾で受けて


「っ…うわっ!」


思いっきり吹き飛ばされたぁ!?


あの盾は確かあたし2人分の重さがある筈なんですけど!


ってアプさんが体勢を立て直す前に追撃の1突き…を転がって回避した!


って何で木製の槍が畳を貫通してるんですか!


あれ当たったら即死しかねませんけど!


おっと、マリー様が槍を抜く前に盾で殴打…は片手で受け止められた!


そのまま盾ごとアプさんを投げて…壁にめり込んだぁ!


アプさんは涼しい顔をしながら仕切り直してますけどあれ相当痛いんじゃないでしょうか?


「想像以上にやりますね…解放を使ったマリー様を相手にここまで立ち続けていたのはこれで3人目ですよ」


「まだ10秒も経ってないんですが…因みに後の2人は誰ですか?」


「王様と私です」


「王様強い…ってヴァレンさんじゃないんですね?」


父上(クソオヤジ)は1対多数の対人戦に特化し過ぎてますので、今の本能のままに動く…半ば獣となっているマリー様とは特に相性が悪いのですよ」


成程…ヴァレンさんは一騎討ちには向かないけど戦争や喧嘩なんかには滅法強いタイプなのですね。


いわゆる軍師的な人なんでしょうか?




何て雑談をしてた間にアプさんが槍を掴んで肘打ちの応酬を繰り広げてた!


この構図って怪獣と巨人が戦う特撮番組で見た気がするんですが!


あ、アプさんが競り勝った…と思いきやマリー様が槍を手放してアプさんを背後から掴んでジャーマンスープレックス!?


追い討ちに行こうとしたマリー様の首にアプさんの両足が…そのままフランケンシュタイナー!?


まさかこの世界でプロレス技が見られるとは思いませんでした…


って2人共起き上がる気配がありませんね?


「ふむ…解放も解けてますし気を失ってしまった様ですね」


「つまり…引き分けですか」


まさかアプさんと引き分ける強者が居たとは思いませんでしたよ…


あたしも精進しなくてはいけませんね。




聖域(サンクチュアリ)を展開してましたし怪我はない筈ですが、効果が切れても意識が戻らなかったら【治療(ヒール)】と【覚醒(ウェイク)】を掛けた方がいいですね。


「…ミラさん、どうでしたか?」


って切れる前にマリー様が先に意識を戻しましたが…どうやら模擬戦の内容は覚えてない様で。


まあ理性を失っていたのですから当然ですよね。


「戦闘時間は52秒、結果は引き分けでした」


あ、ちゃんと計ってたんですね…


「そうですか…まさかミラさん以外に私と引き分ける人が居たとは思いませんでした」


ゑ…何ですかその衝撃の事実は。


確かあたしはこの後ミラさんと戦うんですよね…


一気に勝てる気がしなくなったんですけど?


ですがミラさんが引き分けという事は、もしかして王様はマリー様より強いのでしょうか?


「っつ…効いたよまったく」


おっと、切れる直前にアプさんも気が付きましたね。


「お疲れ様です、結果は引き分けでしたよ」


「そうかい…まさか狂戦士(バーサーカー)があんなに厄介だったとはねぇ」


「そうは言いますが、普通なら最初の横凪ぎだけで終わっていましたよ…あそこまで戦えたのは流石としか言えません」


うん、あたしだったら瞬殺されていたでしょうし。


そういえば結局アプさんは木刀を使ってませんでしたね…使う暇がなかったとも言いますが。




マリー様が槍でぶち抜いた畳を取り替え、壊れた壁を修理して…いよいよあたしとミラさんの番です。


「最初に確認しますが…聖域(サンクチュアリ)の発動中に動きが制限される事はありますか?」


「ご心配なく、他の回復魔法が使えなくなる程度です」


何度か試しましたが発動中は支援魔法なら使えましたよ。


「普通のヒーラーなら歩く事すら出来なくなる筈なんですが…」


「キュアは常識外れな所があるからねぇ…」


アプさんそれは失礼ではないですか?


「所でキュアさん、始めるにあたって靴は履かなくていいのですか?」


「ええ、このままでいいのです」


靴を履いたまま畳の上を歩くのは抵抗があるんです…とは言うもののあたし以外の全員靴を履いてるんですけれど。


この辺りは文化の違いという奴なのでしょう。


部屋に畳を敷いたら土足禁止にしないといけませんね。




「それでは…始め!」


さて、ミラさんは2本のナイフ(木製)をよりによって逆手持ちで構えてますが…あれ攻撃が捌き辛いんですよね。


見た所ミラさんはスピードタイプでしょうから出方を窺って…


「ふむ…では私から」


あれ?消えた…後ろですか!


って振り向いた時には既にナイフ(木製)が当たる寸前ですし!


こういう時は肩から体当たりして、右の正拳突きをお見舞いすれば…ってあたしの拳が避けられた!


避けたと同時に後退しながら一閃…危ないですね!


何とか回避したと思いきやあたしの前髪が何本か落ちましたし…


あのナイフは本当に木製なんですか?


下手な包丁よりよっぽど切れてるんですけど…


って良く見たらミラさんの頬にみみず腫が出来てますね…聖域(サンクチュアリ)の効果ですぐに消えてしまいましたが、さっきの正拳突きがかすっていたのですね。


速くても当たらない訳ではなさそうで安心しました。


「中々良い反射神経をしていますね…ヒーラーなのが不思議なぐらいです」


「誉め言葉と受け取っておきます…」


学校の授業は居眠りしても空手を真面目に習っていた甲斐がありました。


というか空手がここまで役に立ったのはこれが初めてなんじゃ?


何て考えている暇はありません、今度はナイフ(木製)を投げつけて来やがりました。


流石に指や掌で止めるのは怖いので横に飛んで回避したらダッシュで反撃を…


「…【不意討(バックスタブ)】!」


「うひゃっ!」


しようと思ったら足を滑らせて転んでしまいましたが…恐らくはミラさんの本命の一撃(多分)を避けられた!


ナイス転倒です、あたし!


このまま身体を捻って蹴りを…って当たりませんよね、ちくせう!


オマケに無理矢理蹴りを繰り出したせいで変な体勢になった挙げ句マウントポジション取られた…


そのまま最近コカちゃんにジーっと見つめられているあたしの首筋にナイフ(木製)が…ここまでですね。


「…まだやりますか?」


「いえ…降参です」


やはりミラさんは強かった…マリー様と引き分けるという話は本当だった様ですね。


それにしてもあたしって対人戦は全て黒星なんですけど…相手は殆どアプさんですが。


所でミラさん、決着は着いたので降りてはくれませんかね?


体勢的に押し倒されてるみたいで心臓に宜しくないんですが…後木製とはいえナイフ突き付けられてるのは怖いです。




「で、あたいとキュアの技量は判ったのかい?」


「はい、王様の言う通りとても頼りになりそうです」


「あたしはボロ負けでしたが…」


「キュアさんはヒーラーですから、元々前戦に出すつもりはなかったのですよ…とはいえあそこまで出来るなら出ても問題はなさそうですね」


うーん…やはり鍛練の時間は増やした方が良さそうですね。


出発までの間は料理当番をコカちゃんに代わって貰いましょう。


「そういえばマリー様…今回の模擬戦が王様に内緒だったのはどうしてですか?」


「だって…自分では良く判りませんけれど…解放している私なんて………恥ずかしいじゃないですか!」


あ、そういう事でしたか。


でもあの王様ならそれも含めてマリー様を愛していそうですけれど。


「ま、模擬戦も終わった事だし…今日からはミラもうちで夕飯食っていくかい?」


「宜しいのですか?」


「構いませんよ…家主の決めた事だし、作るのはあたしかコカちゃんかデストさんですし」


「デストが…ではお言葉に甘えさせて頂きます!」


ミラさん…デストさんと知り合いだったのでしょうか?


今度根掘り葉掘り聞かせて貰いましょう。


あ、でもアトラさんと喧嘩はしないで下さいね?

「主人公なのにここまで全敗ってどうなんですか?」


A:気にするな

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