年上好きは本当だったらしい
新たにブクマと評価が…ありがとうございます!
行商市で2回目の営業です、デストさんのアドバイスを受けて前回より3倍量のスープと麺を用意しましたが売り切れますかね?
それと今回はコカちゃんがラーメン作りを、ナクアちゃんも接客を手伝ってくれるのであたしとデストさんの負担は減りました。
「って姐さんの方の屋台はいいんですかい?」
「ああ、有難い事にもう売り物がないんだよ…今はルイエのオーク共に追加の商品を運ばせてる所さ」
「特に干物がね…飛ぶ様に…売れたよ」
やはり干物の味は判る人には判るのですね…って売り切れという事は当分お魚が食べられないじゃないですか!
それはそうといつの間にオーク達に連絡を?
「ヴァレンさんがね…干物が売り切れだって言ったら…早馬出してくれたの」
そういえばヴァレンさんはお酒と干物が好きでしたね…まああたしも干物を食べたいので感謝します。
あ、そうだ…ついでにお酒に合うらしい烏賊の塩辛のレシピをオークの人達に渡す様にお願いしておきましょう。
実際に合うのかどうかはお酒呑めないから判らないし、アプさん達に試して貰って…合わなきゃあたしのご飯のお供にすればいいだけです。
「これに書いてあるのが酒に合うのかい…絶対に渡しとくよ」
うん、これでよし。
「ついでだしデストの荷物に売れ残りがあるなら寄越しな、あたいが代わりに売っといてやるよ」
「ウッス、お願いします!」
それにしてもデストさんはアプさんに対してだけ体育系になりますね…
一体どんな指導を受けたらそうなるんでしょうか?
で、いざ開店してみればあっという間に行列が…先日も見た人が結構居ますね。
町の人達はまだしも、行商人の方々は仕事しなさいよ!
「少し見立てが甘かったか…もう少し用意しときゃ良かったな」
「麺と具はまだ何とかなりますが、スープはこれで限界ですよ…」
これ以上の量を作るなら鍋自体を大きくするしかありませんが重くて運べなくなってしまいます。
「でも…今回も全部…売れそうだね」
まあ売れ残るよりはいいのですが…
「替え玉湯通しチャーシューマシマシで下さいな」
「…サーグァ様、それで何杯目ですか?」
「今日はまだ3杯、替え玉はたったの6玉ですよ」
まだ、たった、と言いましたか…普通に食べ過ぎなんですけど。
「というかサーグァ様、他の屋台を回らなくていいんですかい?」
「他は昨日の内に全部回ってきました、ですがここより美味しい屋台がなかったので」
サーグァ様ェ…食いしん坊にも程がありますよ。
「ああ、それとデストさんにはお話がありますので夕飯の後王宮にお越し下さいね」
「へ?」
「もしかして…ボクと母さんにした…あのお話…かな?」
そういえばデストさんも協力してくれる事にはなりましたが…サーグァ様の素性やトゥグア様の依頼については話していませんでしたね。
まあ味噌の件もありますし協力はしてくれると思いますけども。
「姐さんとお嬢にした話って…何故か嫌な予感しかしないんだが?」
「大丈夫です、(一応)選択権はデストさんにありますから」
営業と夕飯が終わってお風呂も済ませて…
アプさんはコカちゃんを連れてオーク達から商品の受け取り、デストさんはアトラさんを連れて王宮へ(勝手に着いて行ったともいう)、ナクアちゃんはさっさと寝てしまいましたし…
「…やっと2人きりですね」
「ナクアがここで寝てるから2人きりではないと思うんだが」
「細かい事はいいんです」
「まあ、言いたい事は判るがナクアを部屋まで運んでやろうぜ?」
「ですね…」
流石に雑魚寝してる子供を放ってはおけませんよね。
ですがその前に…
「いつも改めて向き合った辺りで邪魔が入りますからね…まずは」
「はいはい、判ったから目を閉じて…」
「んにゅ…キュアお姉ちゃん…ロウお兄ちゃんとちゅーしてる…」
しまった!ナクアちゃんが目覚めてしまいました!
「あー…見られたのがナクアで良かったな、何とか誤魔化せば」
「ナクアもするー」
「え…んぷっ!」
おいぃ!
よりによってナクアちゃんが抱き抱えようと屈んだロウの唇を!?
「えへへ…スゥ」
「…寝惚けてただけか?」
「みたいですね…」
これは…うん、事故みたいな物ですし浮気ではないですね。
覚えていなければそれでいいのですがナクアちゃんが何か吹聴しそうになったら夢だったんじゃないか、で押し通しましょう。
というかシスコン気味なアトラさんに知られたら怖いですからね…あの人は戦闘と無縁の職業な筈なのに勝てる気が全くしません。
で、ナクアちゃんを部屋に運んでリテイクです。
今度こそあたしがロウとキスする…
「戻ったよ」
「た、ただいま…まだ…起きてたの?」
…うん、こうなるって知ってました。
おかしいですね…目から水が流れてきますよ。
翌朝…コカちゃんとアプさんはナクアちゃんを連れて屋台を出しに行って、あたし達は明日の仕込みをしてたのですが…
「ナクアがロウさんとちゅーしたと言っておりましたが…どういう事でしょうか?」
「えっと…ナクアは夢でも見てたんじゃないかと…思うのですが」
「ほう、つまり夢に出るぐらいのフラグを建築していたと?いつ、何処で、どの様に?」
「身に覚えが全くない事を言えってかなりの無茶振りじゃないかなあ!」
寝惚けてたとはいえ実際にキスされてしまった以上何とか誤魔化すしかないですよね。
ですがあたしではどうにも出来ませんし…
「デストさん、ちょっとアトラさんを宥めてはくれませんか?」
「仕方ねぇ、このままじゃ話が進まないからな…」
何とかアトラさんを落ち着ける事に成功しました。
流石デストさん、頼りになります。
「スゲェ、あのアトラさんを壁ドン1発で黙らせるとは…」
「いや、俺もあれだけで終わるとは思ってなかった…あの後の言いくるめが出番なかったぜ」
アトラさん…気持ちは判りますよ。
惚れた異性からの壁ドンなんてトキメかない人は居ませんからね。
まあ、ロウはあたしにやってくれた事はないんですけど!
「昨夜サーグァ様から大体は聞いたが…お前等は中々面倒な事になってるな」
「スミマセン…まさかこっちでも巻き込んでしまうとは」
「いや、乗り掛かった船だし構わねぇよ…同郷のよしみだし、味噌の件もあるしよ」
そこまで味噌を味わいたいのですか!
味わいたいですよね、判ります。
「それに姐さんの側に居る口実も出来たからな」
「もしかして…デストさんはアプさんを?」
「ま、既に8回も振られてんだけどな…それでも諦められねぇんだよ」
同じ相手に8回も告白して玉砕したにも拘らずまだ挑み続けるとは…
アトラさん、ちょっと勝ち目がなさそうですよ?
「デストさん、いや兄貴!尊敬するぜ!」
ロウがデストさんを兄貴認定してしまいました…確かに頼れる兄貴分という雰囲気ですし、実際頼りになりますけども。
「ロウもウカウカしない方がいいぜ?下手したらお嬢に全部持ってかれちまうかもしれねぇぞ」
いやまさかそんな事ある訳が…
ヤバいですね、否定出来る要素が少ないです。
ってあたしは同性愛者じゃないから大丈夫…大丈夫な筈…大丈夫だと信じたい。
「ほれ、キュアが頭抱えて考え込んでるだろ?あれは思い当たる節がある証拠だぞ」
「マジか…マジなのか」
「…さて、アトラを連れて昼飯の買い出しに行ってくるかな」
ハッ!いつの間にかあたしとロウが2人きりに!
「あー…その、何だ…昨夜の続きでもするか?」
「…もう少しムードという物を意識してくれませんか?」
トンコツスープを煮込んでる前でとかロマンの欠片もないのですが。
する事はしますけども。
「まあでも…ロウはそれぐらいでいいんですけどね」
「どういう意味だそれは…」
少なくともロウを好きになる物好きはあたしだけでいいって意味ですよ。
絶対に言いませんけど。
~入口の前~
「初々しいですね…」←アトラ
「ほっこりするな」←デスト