殺意が沸きました
さて、とりあえず時間稼ぎは出来た物の…
あのスライムは魔法食べたり毒に弱かったりするんでしょうか?
「あいつはマジックスライムを眷属と呼んでたが…もしかしたら魔法に弱いからマジックスライムを従えてたんじゃないか?」
「成程、自分の弱点を隠そうとしたのか…ありえるな」
マジックスライムってかなり頭が悪いと思いましたが…スライム同士で通じる何かがあったんですかね?
もしそうだとしたら…マジックスライムは既に9割近く減らしたので何とかなりそうですね。
「…よし、キュアは後方で支援、コカは隙を見て魔法を打ちな、あたいとロウはアイツの足止め、デストは釣竿貸してやるからサーグァ様と一緒に残ったマジックスライムを片付けな!」
さて、作戦も決まりましたし…いよいよバトルが始まります。
うん…思えば戦闘らしい戦闘ってこれが初めてなんじゃないですかね?
「ようやく終わったか…待ちくたびれたぞ!」
しかしいくらお約束だからってよくここまで待ってくれましたね…
此方としては非常に有難いんですけど。
「では参りましょう…【耐久】!【加速】!」
こちらは読んで字のごとく…一時的に自分、または味方の耐久力と速度を上げる魔法です。
これで少しは安全になったとは思いますが状況次第で回復を連打しなくてはいけません。
怪我しないでくれればそれに越した事はないのですけども…あのアバズレが作ったモンスターですからね、油断は禁物でしょう。
「支援魔法とは小賢しい真似を…【無効】!」
は?
あたしの支援魔法が…消された?
「今だ…【炎球】!」
「無駄無駄無駄ぁ!【無効】!」
今度はコカちゃんの攻撃魔法まで消したのですか!?
「ちょっと!それ姉さんがコカさんに教えようとしてた破滅と同じ禁呪じゃないですか!」
マジですかサーグァ様…
「ええ、無効はあらゆる魔法の効果を倍の魔力を消費する事で消してしまうだけの魔法なのですが…魔法で作ったゴーレムや魔力の塊であるホムンクルスなんかには絶大な効果があるのです」
成程…使い方次第で国ですら滅ぼせてしまいそうな魔法ではありますが使い勝手は最悪なのですね。
禁呪にされた理由はよく判りましたよ…神様でなければ簡単には使えないでしょうからね。
「ほう、そうであったのか…だが我はこれ以外の事は知らぬし、出来ん!」
つまりあのスライムはあの魔法以外の事が出来ないのですか。
それはそれでどうなんだ?と、思わなくもないですが…かなりお喋り者ですねこのスライム。
ですが先程サーグァ様が仰った「倍の魔力を消費して」という言葉はヒントになりますね…
ならばやるべき事は決まりです。
「もう一度行きますよ!【耐久】!」
「させるか!【無効】!」
「なんの!【加速】!」
「しつこいぞ!【無効】!」
暫くはあたしとスライムの魔法の打ち合いが続きましたが…コカちゃんもあたしの意図に気付いたらしく。
「そっか…なら…こっちも…【炎雨】!」
「お前もか!【無効】!」
「まだ…行けるよ…【炎波】!」
「いい加減にせんか!【無効】!」
それにしてもこのスライム…此方の意図にも気付かずにポンポン無効にしてくれやがりますね。
喋れるから賢いのかと思っていたのですがやはり頭は悪いのでしょうか?
…やがてあたしもコカちゃんも魔力が枯渇してしまったのですが
「もう…【治療】1発打てません」
「ぼ、ボクも…もう…駄目ぇ」
はい、完全に魔力切れです。
あたしもコカちゃんももう立っている事すら出来ずにその場でへたれ込んでしまいましたよ。
「フ、フフフ…どうした…もう…終わりか?………ゼハーゼハー」
まあ最初はスイカみたいな大きさだったスライムも、同じく魔力切れのせいかピンポン玉サイズにまで縮んでしまった様ですね。
作戦は上手く行きましたが…如何せん魔力不足を思い知らされました。
うん、暫くは魔力を増やすべくコカちゃんと一緒に本を読みましょう。
もしくはサーグァ様に魔法の訓練をして貰いましょう。
「ここまで来れば耐性も何も関係ないねぇ」
「だな…踏み潰せば倒せそうだ」
流石に逃げようとしている様ですが…所詮はスライム、動きがとても遅いですね。
あっという間に挟み撃ちされてましたよ。
「待ってくれ!幾ら何でも、こんな終わり方はあぁんまりだぁあ!」
スライムの癖に我儘ですね…大人しく倒されてくれませんかね本当に。
「ならどんな終わり方がいいんだい?」
「それはその…こう、伝説の勇者が伝説の剣で止めを刺す的な終わり方がいいなぁと」
スライムの癖に贅沢ですね!
というかあたし達は勇者としてこの世界に来た訳じゃないですからね…
そもそもあたしは杖か拳、ロウは弓矢、コカちゃんはロッド、アプさんは盾、サーグァ様は戦えないしデストさんは斧か金槌ですから、剣を使う人が居ませんよ。
うん、とても世界を救う一団とは思えないパーティーですね。
機会があったら剣士の仲間を入れた方がいいでしょうか?
「やっと…ゼェ、ハァ、見つけ…ました、わよ…スパウン!」
「く、クティ様!?」
くっ、ここでアバズレが来やがりましたか!?
あたしとコカちゃんはもう動けないのに!
「ハァ、ハァ…と、とにかく…帰りますわよ、いいですわね?」
「嫌だぁ!我はもう勉強なぞしたくないんだ!」
「我儘言うんじゃありませんわ!貴方は今、魔力が足りないせいで殺されかけているではありませんか!」
…つまりあのスライムは勉強が嫌になって家出してたのですね。
何て考えていたらあっという間にアプさんとロウの間に入ってスライムを回収…早い!
スライムも抵抗はしてましたがやがてアバズレの胸元に収納された…嫌味ですか!?
「ふぅ、お騒がせ致しましたわ…ってキュアさん、随分と良い格好ですわね?」
しまった…アバズレが獲物を見つけた肉食獣の様な目であたしを見ていますよ!?
ヤバいです、ピンチです、助けて下さい!
「本当ならクトゥルヒの仇を打って差し上げたいのですが…アルラ様からの御命令で人間にはかすり傷すら付けられませんし」
あ、そうなんですね…
ちょっとだけ安心しました。
「ま、これで許して差し上げますわ」
はて…何かそよ風が吹いたかと思いきやアバズレの左手にはやたらと見覚えのある布が?
「…【微風】!」
今度はあたしの足元から風が…あれ、やけにスースーしますね?
風はすぐに止んだのですが…はて?
ロウとコカちゃんにデストさんが顔を赤くしてますが一体?
「あ、これ返して差し上げますわ…ではごきげんよう」
そう言ってアバズレは帰ってしまいましたが…まあ、今戦った所で絶対勝てませんし仕方ありません。
それはそうと一体何をくれたので…
「え…うにゃあーっ!?」
これあたしのパンツじゃないですか!?
あの一瞬でスリ盗ったんですか!
しかも風であたしの服を捲り上げるとか…恥ずかし過ぎて死んでしまうじゃないですかーっ!?
おのれアバズレェ…次会ったら同じ目に合わせてやりますよ!
「…すまん、見るつもりはなかったんだが」
「大丈夫だよ…キュアちゃん…ボク、ちゃんと…責任取るから」
「待ってくれ姐さん!俺は何も見てない!だからその盾を下ろしtぐふぉっ!」
…うん、まあデストさんはアプさんがシメてくれましたし、コカちゃんは同性だし、ロウはもっと見てくれて構わないので、思ったよりダメージはありませんでした。
「後でデストさんに【忘却】を掛けておきますね…これは一部の記憶を消す魔法です」
ありがとうございますサーグァ様…
お礼に夕飯はちょっと豪華にしますので。
うん、予想以上にバトルらしくないかも(オイ