信仰が奇跡を喚びました
コカちゃんに色々聞いた翌日…正直眠いです。
うん、今夜からはちょっと見張りのローテーション変えて貰いましょう。
それはそうと一大事です、死よりも辛い危険が…貞操の危機が迫ってます。
あたし達は現在盗賊に絡まれてしまっているのですが…
それも全員が豚野郎…もとい、オークな盗賊が3人です。
「おいおい、今回はアタリじゃねぇか?」
「ああ…性的に喰ってよし、売ってよし、しかも全員見た目がいい」
「よし、俺はあのちっこいエルフを貰うぜ」
「なら俺はあの赤い髪の女だ」
「そこの黒髪…やらないか?」
うん、キモい!
オークというモンスターは何処の世界でも変わらないのでしょうか?
後最後のはあたしではなくロウを見てますが…そういう趣味なんですか?
雰囲気も何故か青いツナギが似合いそうですし…うん、同性愛者のオークとか想像もしてませんでしたが居ても不思議じゃないですね。
間違ってもあたしが女の子に見えないとかじゃないですよね…ないですよね?
「…一応言っておきますけど、この世界はオークにも人権がありますからね?倒しても水晶にはなりませんよ?」
「マジですか…あれ人間扱いですか?」
「あいつ等が落ちる所まで落ちてるだけで、真面目に働くオークだっているんだよ…」
「うん…色んな町で…荷運びとか…建築みたいな…力仕事をしてるの…見かけるよ」
成程…オークというだけの理由でモンスター扱いしたのは早計でしたね。
考えてみれば神や女神が邪神の名前なこの世界ですし…これからは注意しましょう。
「ま、コカを狙う奴は叩きのめしておかないとねぇ…ロウも男なら自分のケツは自分で守りな!」
「わ、判った!?」
ふむ、ならばあたしはサーグァ様を狙う不埒者を殴りましょうかね。
とか考えていたのですが…
「…炎雨!」
はい、コカちゃんの魔法ですね…文字通り炎の弾が雨の様に降り注いでます。
しかも一発一発が非常に強力らしく、オーク達は当たっては悶絶を繰り返していますね。
なのに近くに居た筈のあたし達にはかすりもしないという…
「何でかな…さっきから炎の弾が当たりはしないけど、俺の頬とか肩を掠めてくんだけど?」
訂正します、ロウにだけかすりはしている様です。
「えっと…ワザとじゃ…ないよ?」
「いや、そんなの疑ったりはしてないんだが…」
もしかしてコカちゃんはあたしの好意を一身に受け取っているロウに内心嫉妬していたのでしょうか?
それが魔法に影響を及ぼしたと…
もう…あたしへの愛情を消せないのなら適度に構ってあげた方がいいですね。
ロウの安全の為にも!
「「「ふんぐるい むぐるうなふ トゥグア ほまる はうと… ふんぐるい むぐるうなふ…」」」
あの後あっさり改心したオーク達は必死な命乞いをしてたのでトゥグア様の信者になって頂きました。
ルイエじゃ信者を得られなかった上に干物も味が薄いと一蹴しやがりましたからね…あの塩の塊より美味しいでしょうに!
幸いツナギが似合いそうなオークは元料理人だったそうですから、この人達にレシピを渡してルイエで干物を作り続けて頂きましょう。
これで一々ルイエに行かずとも干物を供給出来ますね。
「段々この光景に違和感を感じなくなった俺が嫌だ…」
「いつもこうなのかい!?」
「大丈夫…キュアちゃんは…変わらずに…可愛いよ」
「コカさんはもう少し回りに目を向けた方がいいですよ?」
うん、あたしもそう思います。
具体的にはあたし以外の誰かに惚れてくれると助かります。
「「「ふんぐるい むぐるうなふ…あれ?」」」
おや、何かあったのでしょうか?
「ふぅ…そろそろ神託を贈れるかと思っていたら我が身ごと降れてしまうとは思いませんでした」
「ね、姉さん!?」
祈りを捧げていたらトゥグア様が現れた!?
というか御光臨なさったのは嬉しいですが昇神試験はいいのでしょうか?
「今回の事は信者の起こした奇跡ですから、試験には影響しませんよ」
ナチュラルにあたしの思考を読むトゥグア様…流石です。
「それはそうと久しぶりですねキュアさん…あ、先日は水晶と一緒に干物をありがとうございます、美味しかったですよ」
「いえいえ、大した物でなくて申し訳ありませんです」
「主婦の井戸端会議みたいな出だしで始めるなよ…というかいつの間に送ったんだ?」
ふむ、ロウは結婚したら専業主婦になってくれと…
「それは…違うと思うな」
「あれが女神ねぇ、確かにサーグァ様ソックリだな…もっと禍々しいの想像してたよ」
アプさんそれは失礼ですよ!
「と、そうでした…折角の機会ですし、転生した2人を除いた皆さんに祝福を施しておきましょう」
そんな近所の子供に飴ちゃん配るみたいなノリでいいのでしょうか…
あたし達にないのは…まあ1度生き返らせて貰いましたし、これ以上を望むのは贅沢ですよね。
皆さんもトゥグア様がいいなら喜んで頂くでしょう…多分。
「まずサーグァ、限定的にですが貴女の力の一部を戻しておきます…それと私が黒の水晶から聞いた情報の共有を可能にしておきましょう」
「解りました、って姉さん、これ…酷くないですか?」
「私もそう思いました…ですが、これが現実です」
一体何を聞いたのか…後で説明して貰いましょう。
「続いてアプさん…貴女には盾に自己修復と自動回復効果を付与しましょう」
「回復はともかく修復は嬉しいねぇ…一度割れたら直すのに金掛かるんだよ」
ただでさえ厄介なタンクが更に耐えられる様になってしまった…
アプさんが味方で本当に良かったです。
「最後はコカさん…キュアさんの事については応援します、もし結ばれたなら子供は最低でも5人授けるとお約束しましょう」
「あ、ありがとう…ございます!」
流石ラブコメ大好きなトゥグア様…女の子同士もイケるんですね!
知ってましたけど!知ってましたけれど!
「そんな貴女には是非とも頑張って頂きたいので…【破滅】という魔法を」
「ちょっと姉さん!それ神界でも上位神でなければおいそれと使えない禁呪ですよ!」
コカちゃんに何を授けようとしてるんですかトゥグア様!?
「やはり駄目ですか…これでモンスターと一緒にアルラごと消して貰おうと思ったのですが」
どんだけアバズレの上司が嫌いなんですかトゥグア様…気持ちは非常に良く解りますけど。
「ではそうですね…私の魔力の一部を貴女の杖に込めておきましょう、これで炎の魔法は威力が上がる筈ですから」
おお、炎の女神様の魔力なら確かに威力は上がりそうです。
「う、うん…炎の魔法は…得意だから…嬉しい…です」
祝福が終わった途端にトゥグア様の身体が光って薄くなって?
「あら…丁度時間の様ですね」
あ、やっぱり制限時間があったんですね。
「それではまたお会いしましょう…次はキュアさんの結婚式だと嬉しいですが」
確約は出来ませんが努力します、はい。
「あ、最後にキュアさん…あの詠」
シュン
何か言いかけてましたが…えい?
エイ…鱝…もしかしてエイを食べたい、というリクエストだったのでしょうか?
ならば次に海辺へ行った際に探すか釣るかしてお送りしましょう。
それが信者の務めですからね。
やはり煮付けか…それとも干したヒレをお酒と一緒に…トゥグア様はお酒飲めるんでしょうか?
「絶対に違う事考えてる気がする…」
「ですよねー…まあ言わなかった姉が悪いって事にしておきましょう」
尚、この思考はオークの皆さんが正気に戻るまで続きました…。
Q:「せめて最後まで言わせて下さいよ!?」
A:だが断る