出てきたのは塩の塊だったそうです
ダニチノムラを発って3日…平坦な道のりでしたがようやく海が見えてきました。
うん、潮の香りが何とも期待を高めてくれますね。
サーグァ様ほどではありませんが美味しいお魚と聞くとどうしても食べたくなってしまいますからね。
やっぱり日本人なら肉より魚です、異論は認めますけど。
「キュアちゃん…凄く楽しそう」
「俺達の故郷じゃ米と魚をよく食ってたし、キュアは魚料理が好きなんだよ」
「へぇ、あたいからしたら魚は塩辛いだけな気がするけどねぇ…ま、その分酒は進むけど」
何やら背後で語ってますが、あたしの欲求は誰にも止められませんよ。
お刺身…は醤油がないから難しいでしょうが塩焼き、ムニエル、フライか素揚げ…塩だけでも美味しく食べれる方法はいくらでもありますからね。
…何て考えていた時期があたしにもありました。
はい、魚はありましたし、魚を食べられるお店もありました。
ですが…
コカちゃんとサーグァ様が露天をやってくれるというので早速食べに向かったのはいいのですが…
「丸ごとの魚に塩を塗りたくって直火で焼いただけって…俺が見てもこれは酷い」
「そうなのかい?むしろこれ以外の食い方なんて聞いた事ないよ」
思えば前にアプさんがそんな事を言ってましたね…その時に気付くべきでした。
まあ食べるんですけれど…なるべく塩を剥がして中身だけを食べる様にしましょう。
味は…うん、美味くも不味くもなく塩辛いだけですね。
それとアプさん、それは塩ごと食べたら身体に悪いと思いますよ。
それから市場を回ってみるも既に塩を塗られた魚しかないですし…
話を聞くと他の村へ運ぶのにこうしないと日持ちしないとか、こうすると酒が進むからって漁師の間で定番になったのが広まったと聞けました。
この世界の漁師には限度という言葉がないのですか?
「おさかな…おいしいおさかな…どこ?ここ?なんでないの?」
もう気分は終焉にして終末です…この世の終わりです。
トゥグア様はあたしを見放してしまわれたのでしょうか…。
「あのキュアさん?姉は炎の女神ですからね?こういう水場は管轄外ですからね?」
「あの…この世界って、その炎の女神が作った世界だったよな?」
「…細かい事はいいんです」
「そういやさっき漁に出る船を見たんだが大量の塩を積み込んでたな…つまり釣ったばかりなら塩塗れじゃないって事だ」
ああ…そうなんですか…そりゃ魚だって生きてるんだし、生まれつき塩漬けになってる訳がないですよね。
…ん?釣ったばかりなら?
「キュアちゃん…あのお店に釣竿…売ってたよ?」
そうですね…売っていないのならば…釣ってしまえばいいのですよ!
この世界に領有権や漁業権がある訳でもなし、釣ったその場で捌いて食べればいいんです!
「そうと決まればじっとしてられません!今すぐ釣りに行きましょう!」
「落ち着けキュア!もう夜更けだぞ!」
「そうだよ、釣りをするなとは言わないが…せめて明日にしな」
ぐぬぬ…この昂ぶった魚を食べたい欲をすぐにでも鎮めたいというのに!
仕方ありません…日の出と共に釣り場へ直行しましょう。
「それにしても…俺達この世界に来てから食事と料理しかしてない気がするんだけど?」
「それはあたしも思いましたが…気にしたら負けです」
ほ、他にもやってるし…(震え声