恋愛結婚だったそうです
コンテストの結果ですが…はい、優勝してしまいました。
それが目的でしたし、勝てたのは嬉しいのですが…
「ラーメンとやらの調理法を教えて下さい!」
「是非うちの店の料理長に!」
「罵って下さい!」
さっきから勧誘が凄い…最後の奴は放置に限りますが。
まあ賞金もゲットしましたし、王様と騎士の人の立会いの元無事に墓地の所有権を頂けました。
その時の達磨みたいな子爵の苦虫を噛み潰した様な顔は思い出すだけでお腹が痛くなってしまう程です…ウププ。
まあ、王様も慈善事業で立ち会ってくれた訳ではなかった様で…
「君達の料理を凄く気に入ってしまったらしくてね…私達は公務があるのですぐに戻らなければならないが、明日から彼女をボリアまで送って欲しい」
はい、第3夫人…例のフードの夫人様の護衛と料理番を任されてしまいました。
まあ報酬も出してくれるそうだし、この人のお陰で勝てたといってもいいし断る理由はないのですが。
というか王様、物凄く理解がありますね。
「申し訳ありません王様、私が我侭を言ってしまったばかりに」
「何を言う、妻の我侭を叶えるのが夫の勤めであろう」
うん、嫁が3人も居るのに1人として嫌な顔をしていない、見事なまでに甘い空気…これがリア充!
「えっと…こちらがアプさんの家になります」
「はい、お世話になりますわ」
うーん…夕飯は残ったラーメンもどきで済ませてさっさと寝るつもりだったんですけど…正直眠くて仕方がない。
まあコンテストが終わって普通に買い物が出来ましたし、あまり手のかからない物でも…
「…ひとつ確認しておきたいのですが、そこのエルフのお2人もキュアさんの仲間で宜しいですか?」
ん?
何か唐突に雰囲気が変わった様な…お腹が空いたんでしょうか?
ってあたし名乗った覚えがないんですけど…何で知ってるんですか?
「えっと…この村で出会ったばかりですが、仲間だと思っています」
「判りました、では…」
あ、決して脱ごうとしなかったフードを…ってこの人は!?
「あ…最初に屋台に来てくれた…お姉さん」
「はい、そうですよ」
貴方だったんですか!
道理で食べ方を知ってる訳です、既に食べていたんですから!
「自己紹介がまだでしたね、私はサーグァ…知っての通り王様の第3夫人で…女神トゥグアの眷属です」
誰かに似てると思ったら、貴女トゥグア様の妹だったんですか!
そういえば髪と目の色が同じでした!うん、あの時はそれに気づけないぐらいに余裕がなかったのは確かですけどね。
「何で女神がこの世界に居るんだ?」
「私はあくまでも眷属ですよ、女神ではないんです」
え、そうなんですか…
「例えば料理長の息子だからって、料理長として生まれる訳ではないでしょう?同じ事です」
女神って役職名だったんですね…それは知りたくなかったです。
「なあ…さっきから話に付いていけてねぇんだけど」
「女神?眷属?え…どういう事…なの?」
あー…これは最初から説明するしかないですね。
長くなりそうなので【覚醒】をかけ直し、この世界に来た顛末やトゥグア様の依頼について教えました。
コカちゃんはあたし達が実の父に殺されたという話に泣いてしまい…
アプさんはそっと抱きしめてくれました。
2人の優しさに涙腺が緩くなってしまいそうです…。
「アプさん、コカさん…お2人はまだどちら付かずの所に居ます…全てを忘れるか、共に戦うか…決断をお願いします」
トゥグア様の依頼はあたし達の都合…無闇に巻き込みたくはありません。
サーグァ様もそれを見越しての問いかけなのでしょう。
「ボクも…一緒に戦うよ」
「ああ、旦那の墓を守ってくれた恩もあるしな…付き合ってやるさ」
その一言で…今度はあたしの涙腺が限界を向かえてしまいました。
気が付いたら翌日の正午…どうやらあのまま眠ってしまった様です。
「起きたかい…ったく、魔法で誤魔化してまで無茶するんじゃないよ!」
グフゥ!アプさんの拳骨が頭にぃ!
い…痛い。
「うう…申し訳ありません」
「ま、説教はロウにしといたからこれで許してやるさ」
まさかあたしの失態をロウに背負わせてしまうとは…
「勘違いすんじゃないよ?今回のはあんたの無茶に気づけなかったロウが悪いってだけの事さ…本来ならあいつが気付いてやらなきゃいけなかったんだからね」
「…そういう物なんですか?」
「あたいが言うのも何だがあいつもあのスープは作れないんだろ?だったら見張りぐらいあいつがやるべきじゃないかい?」
うん、言われてみればそうですね。
当の本人はさっさと寝落ちしてましたけど…。
そんなこんなでコカちゃんの作ったお昼を食べつつ、サーグァ様の話の続きを聞く事に…。
「うん、コンテストのシオラーメンも美味しかったですが、コカさんのニクマキイモも中々ですね」
うん、フライドポテトをビフーの薄切りで包んで焼いた物ですね。
食べ過ぎると胸焼け起こしそうですが確かに美味しいです。
「さて、では早速ですが…今夜皆さんに討伐をお願いします」
遂に来ましたか…それはそうとフォークを置いてから話した方がいいのでは?
「それで、敵はどんな奴なんだ?」
「私の推測が混じりますが敵はアーラン子爵か、その近くに居る者でしょう…今回の計画を潰された事で間違いなく行動を起こす筈です」
「あの腐れ貴族がか?確かに最低のクソ野郎だが女神の敵って言われてもピンと来ねぇぞ」
見た目ダルマみたいな中年でしたからね…本当に女神の刺客でも秒で倒せる気がします。
「3年前からある場所で不自然な魔力が溢れていましてね…それはコンテストの度に寄っては浄化していたので大事にはなりませんでしたが」
もしかして王様が審査員として来てるのはサーグァ様のせいなのでしょうか?
どんだけ嫁に尽くす気ですか!
「それに加えて今年に入ってからのその場所を潰すという公言、その邪魔をした貴方達への妨害…敵ではないにしろ何かを知っている可能性は十分考えられます」
「もしかして…その場所は…」
うん、ここまで来ればもうお判りですね…皆さんの顔つきも険しくなってます。
「…この村の墓地です」
Q:「何で女神の眷属がこの世界に?」←ロウ
A:「女神になる為の試験で、人の一生を経験しています」←サーグァ
Q:「何で王様の夫人になってるのですか?」←キュア
A:「お互いに一目惚れだったんです」←サーグァ