出立前の日常です
Ptブクマありがとうございます
フルーツポンチを作って2日……
身体を休めつつアプさんと組手しながらコーラを売って姉さんの両親にまで朝晩の食事を作りつつライコに料理を教えて……
うん、全く休めてないですね。
まあ変に怠けるよりかは良いのですが……
「キュアお姉ちゃん、引いてるよー!」
おっといけない、今は釣りの最中でした。
釣れたのはレンでも見た真っ黒な鮎……これは夕飯に塩焼きで食べましょう。
あ、でもコカちゃんとナクアちゃんの分は内臓を取らないといけませんね……凄く苦いので。
サンマやアユは身の甘さと内臓の苦味が混じり合うのが美味しいんですけどね。
この世界に来てからは1度もサンマを見かけていませんが……仮にあっても大根おろしとスダチがないので焼き魚にはしませんけども。
あ、鮎の内臓といえばそれだけを塩辛にした物が美味しいと聞いた事がありました。
沢山釣れたら試しに作ってみましょう。
「あ、またサケが釣れたよー!」
……それにしてもナクアちゃん、大物ばかりを引き当てますね。
今日だけで鮭を4匹も釣っているんですけど。
ムーの時もそうでしたけど、もしかして釣りバカの素質があるのでしょうか?
美味しいお魚は常に食べたいので一向に構わない所か非常に有難いので応援しておりますが。
「って掛かったと思いきや……ポイズンではありませんか」
久しぶりに見ましたよ、この茶色いブラックバス……イケボスライムの時は大変お世話になりました。
とはいえそれとこれとは話が別なので仕留めて埋めておきますが。
「そのお魚さんは食べられないの?」
「毒があるそうですからね……食べたらお腹を壊してしまいますよ」
そういえば……
「ナクアちゃんは今までポイズンは釣らなかったのですか?」
「うん、今はじめて見た!」
何という偶然……それとも強運?
どの道ポイズンは埋めるかマジックスライムに投げつけるしか使い道がないので、釣れない方が良いんですけどね。
釣りが終わったら次はコカちゃんと買い出しに……
明日は出立だから多目に、かつ念入りに買っておかなくては。
「えっと……後は、ダイズ豆と……干し肉……塩と紙、かな?」
「とりあえず……荷物を置きに戻りますか」
一応リアカーを借りて来ましたけど既に山積みですし……半分以上アプさんが飲むお酒ですけど。
無限収納鞄はロウが水晶集めに持って行ってしまいましたから仕方ありません。
「って塩は既に買った筈ですが?」
「あ、これは……あのスライム対策……だよ」
ああ、あのイケボスライム対策でしたか。
どんな形で戦うのかは解りませんが少なくともあたしは手を貸せないでしょうからね……
何せ相手はクティですし。
他の皆さんは魔力が殆どないから物理攻撃の通じないスライムには無力……
ナクアちゃんはロウの側じゃないと魔法も技能も使えませんし。
……やはりあの時にキッチリと仕留めておくべきでしたかね?
「仕留めてたら……女神様、大変な目に……合ってたんじゃ……ないかな?」
……そうでした。
地の女神の目的がハズレをトゥグア様の元に送る事だから下手に倒す訳にもいかないんでした。
「後は……まだ見てないモンスターと……ロウくん次第、かな?」
クティの勝利条件はロウを殺す事、此方の勝利条件はロウがクティのモンスター4体の内の2体と契約する事……
その為にはまずあのザトーとかいう忍者もどきをロウ自身がどうにかしないとなりません。
頭が悪いイケボスライムはともかくザトーは職業以外が一切不明だし、残り2体もどんな奴なのか解らなくて不気味なんですが……大丈夫なんですかね?
イケボスライムも決して弱い訳ではありませんけど。
「ロウくんが心配なの、解るけど……信じよ?」
「……そうですね」
以前ならまだしも今はトウカとナクアちゃんが居ますからね。
そう簡単にやられたりはしない……と思いますけど、やはり不安です。
まあ、そもそもメンバーの中で完全に安心出来るのはアプさんと翡翠さんぐらいなんですが……
相手が不明なのに安心出来るというのもおかしな話ですが、事実なんだから仕方ありません。
さて、ロウと模擬戦でもしようと思ってはみましたが……何処まで水晶集めに行ったのですかね?
ってあの見覚えがある弦はリーアさんの……それに水と炎に光って事はスコルとロシンに……バイコ?
それらの攻撃がロウに向かって……ってアレを回避し続けてるんですか!?
リーアさんの弦だけはあたしも何度か見ましたけどアレは簡単に避けられはしないというのに!
オマケにスコルとロシンの攻撃が加わって、バイコが背後に陣取っているのに!
というかバイコ、戦闘中だからってロウのお尻をガン見するのは止めなさいよ!?
「……キッチリ10分避け続けましたね、お見事です」
「ふぅ……疲れた」
「見事だったな少年……そろそろやらないか?」
「やらねぇよ!」
本当に油断ならない馬ですね……バイコの夕飯にはカプサイ混ぜて出しましょう。
ふと見たらトウカは翡翠さんが抱いてるし、ナクアちゃんは神殿でライコと一緒にジャガイモの皮剥きをしてるから……技能を一切使わずに避け切ったのですか?
うん、あたしの拳も当たる気がしませんね……模擬戦はやめておきます。
「所で……ここ最近はずっと回避ばかりだったけど、それであのザトーって娘に勝てるの?」
「元々あいつには勝つつもりはなくて……上手く言えないんだけどあいつの水晶だけは女神様の元に送ってはいけない、って気がするんだ」
それはどういう意味でしょうか?
コカちゃんに聞いた話だとザトーの胸はリンゴ並の膨らみがあったそうですが……まさかロウ、あたしとナクアちゃんが居ながら更に嫁を増やす気ではありませんよね!
あれですか?やっぱり胸は大きい方が良いのですか!
「……成程ね、10分はその為の時間って訳だ」
どういう事なのかは解りませんが翡翠さんも納得していますし、何かしら意味はある……って思っていいんですよね?
無かったらぶん殴りますけど信じますよ?
「それで、ザトー以外はどうするつもり?」
「まあ、あのスライムが1番やり易いかなぁとは思ってる……もの凄く嫌だけど」
つまりロウはあのザトーにイケボスライムと契約すると?
契約のやり方はよく解りませんが、アトラさんにナクアちゃんと契約をした時はキスしてましたね……スライムに性別があるのかは疑問ですがあいつはイケボでしたし、少なくとも精神は間違いなく男でしょうからノンケのロウがキスをするのは辛い相手でしょう。
スライムの癖にロウのキスを貰えるとは……契約が終わったら殴らねばいけませんね。
まあスライムだからダメージはないでしょうけど……しかも魔法を消せるから魔拳も通じないでしょうし、雷も通用するかどうかは疑問ですし。
何にせよクティとの戦いに勝たねば全ては皮算用になってしまいます。
そんな訳で神殿で食べる最後の夕飯……作ったのはライコですがデザートにちょっとした変わり種も用意しましたよ。
「この黒い氷を削った物は……まさか豆汁かい?」
「それに……この甘くて、白いのは?」
「豆汁のかき氷練乳掛けです……軽く混ぜてから食べて下さい」
何度やっても豆汁に牛乳やアマミズを混ぜると臭みが出るわ脂っぽくなるわで1度は諦めかけましたが……
アスラさんに挨拶された時にちょっとした思い付きで豆汁を凍らせて貰いつつ、アマミズを垂らして食べてみたら普通に美味しかったのです。
その後は練乳を垂らしてかき氷にするまではあっという間でしたね。
お礼にかき氷のレシピをアスラさんに渡したのであたし達が出立した後も食べられるでしょう。
まあ草食主義者の町だから商品はアマミズを掛けるのが精々でしょうけど。
「成程、混ざらない様にすれば豆汁も甘く出来るんだな……美味ぇ」
「あ、でも……急がないと、口の中で混ざって……脂っぽく、なっちゃう」
まあ、凍らせただけの豆汁ですからね……改良の余地はありますが目標まで一歩前進したと言っていいでしょう。
あたしの最終的な目的……コーヒー味の生クリームをギッチリと詰めたシュークリームが食べたいのです。
その為には牛乳と混ぜると出る脂っぽさをどうにかしなくては……
料理でどうにも出来ないなら豆汁の品種改良に着手する覚悟もありますが……まあギリギリまでは頑張ってみますよ。
とはいえ続きは……クティと戦った後、ですけどね。
「そういえばこの町でアーチさんを見かけませんでしたね?」
「あいつの事だからとっくにレンへ向かったんだろうさ」




