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正式名称が思い出せなかった

コーラを売り始めて5日……デストさんと(ジェネ)さんがボリアへ戻る日が来てしまいました。


デストさんの拠点と(ジェネ)さんの実家には引き続きお世話になりますけど。


ついでに結婚式の進行なんかも教えて貰います。


「スマンな……本当なら襲撃があるまでは居てやりたかったんだが」


「気にすんなって、コッチはどうにかするよ」


「……死ぬなよ」


「ああ……」


襲撃まで後8日……出来る限り鍛練の時間を増やしたい所です。




今日も今日とてコーラを売って……コカちゃんは図書館、ナクアちゃんは釣り、ロウは翡翠さんと特訓、アプさんは屋台と。


コーラは売り切れになったので水晶を集めつつ郊外を散策していたらドリアードのリーアさんを見掛けてしまった……


うん、逃げましょう。


「ちょっと、私を見掛けただけで逃げるのは酷くないですか?」


気付かれた……って割と距離があったのに追い付かれた!


「……だって貴女、手当たり次第に女性を襲うのでしょう?」


「少なくとも成人してない女の子は襲いません!」


成人してたら襲うんですね……


後で翡翠さんに言っておきましょう。


「それはそうと、こんな所で何をしていたのですか?」


「ちょっと光合成を……それと夕飯に食べようと思ってジャガイモの栽培を」


ああ、良く見たら程よく耕された地面にジャガイモの芽が出ていました。


話には聞いていましたが中々便利な能力ですね。


「……収穫までまだ時間があるし、少しだけ訓練に付き合ってあげましょうか?」


「有り難い申し出ではありますが何が狙いなのですか?」


「その……元居た世界でよく食べていた、ジャガイモのパリパリが食べたくて」


パリパリ……もしかしてポテチの事でしょうか?


作り方なら知ってる……というかアプさんのオツマミにしょっちゅう作ってますし構いませんけど。


ふむ……コーラも作れば飲めるしポテチを作るならオヤツにも食べるとしましょう。


ポテチとコーラは最高の組み合わせですからね……異論は認めません。


というか本当にあたし、料理ばっかりしてますね……


「じゃあ行きますよー、【挿木】!」


おお……リーアさんの手から落ちた葉が地面に刺さって蔓が延びて、それが人形に!


ってよく見ると姿がクティにソックリなのですが!?


「後少しでお嬢様と戦うんなら多少は対策した方が良いと思いまして……」


あ、成程……


お気遣いありがとうございます。


「ただ、私が知ってる限りなので現在のお嬢様とは一致しない可能性が高いと思って下さい」


そこはまあ仕方ありませんね……知ってるのも魔拳を収得する前でしょうし。


翡翠さんはおろかハイドラ様ですら今のクティを把握していないでしょうから。


とはいえ動きの癖というのは簡単に抜ける物ではないのも確かですし、参考にはなるでしょう。






結論から言えば癖を見付ける前にやられましたよ、ええ……


打ち合って解ったのは


・クティの攻めはムエタイに近いスタイル


・利き手は左、利き脚は右


という事のみは知れましたが。


「……リーアさん、ここを立つまでの間は同じ様に戦ってくれませんか?」


「構いませんよ、パリパリさえ作って頂ければ」


ポテチで済むなら幾らでも作らせて頂きますよ。


あ、ついでだしアレも作ってみましょうかね。


多分ですけどコカちゃんやナクアちゃんも気に入るでしょうし。





そんなこんなでデストさんの拠点に戻って油を熱してジャガイモの皮を剥いて……と。


因みにこの世界のジャガイモ、何故か皮が2ミリもあって固いので食べるのには向かないです。


日本ではジャガイモの皮にも栄養があるから食べろと言われていたんですけどね……まあそれは置いときましょう。


まずはデストさんに作って貰ったスライサーをコンマ1ミリに設定してひたすらスライスしたジャガイモを塩水で洗って水気を切って、カラッと揚げて油を切ればポテチの出来上がりです。


熱々はパリパリして美味しいですが少し冷めてもサクサクで美味しいですよ。


次はジャガイモを4ミリぐらいにスライスして、同じく塩水で洗って水気を切って……と。


低温の油で色が変わらない程度に揚げたら冷まして、高温の油で揚げながら揺すっていると球体に脹らみます。


きつね色になったら油を切って出来上がり……これには何かお洒落な名前があった様な気がしますが、あたしとロウはポテチ玉と呼んでいます。


ぶっちゃけ味と食感はポテチと大差ないですし、2回も揚げるのは面倒だからそんなには作りませんけど。


揚げたては熱いですが口の中でプシュッと潰れるのが面白いので気が向いたら、もしくはロウが食べたくなったら作ってます。


「さて、ついでにアプさんのオツマミ分も作っておきますか」


「ウギィ!」


ライコ……いつの間に?


って翡翠さんはここで寝泊まりしていますから居ても不思議じゃないですよね。


「ってライコ!何でジャガイモをスライスしているのですか!」


しかも包丁で、綺麗にコンマ1ミリに!


あたしだってスライサーじゃないとそんなに薄くは切れないのに!


もしかしてライコはあたしより料理の才能があるのでは!?




試しに揚げさせてみたら見事なポテチをお作りになりやがりましたよ……


何て有能な猿でしょうか。


いや、いきなりやらせたあたしもどうかとは思いましたけど。


味も見事な……あ、残念ながら少し塩辛いですね。


これはアプさんのオツマミに回しましょう。


理由は知りませんがお酒を飲むと塩分が不足しやすくなるそうですし。


えっと、ライコの手の大きさはあたしの半分くらいだから……


「ライコ、同じ物を塩1摘まみだけ減らしてもう1回」


「ウギィッ!」


さてさて……はい、味も見事なポテチになりました。


思えばライコはタコやお魚の捌き方もあたしの手順を見ただけで覚えちゃいましたし、しっかりと教えれば凄い料理人……もとい、料理猿になれるのでは?


唐揚げで舌の肥えたピーニャも生のクックー肉は食べ難くなってるでしょうし、翡翠さんも契約した幻獣を残して元の世界に戻りはしないでしょう。


となればあたしがライコに料理を教えても損はないでしょう……多分。


まあその辺りは一応夕飯の後にでも翡翠さんに聞いておくとして……


「リーアさん、ご所望の物が出来ましたが」


「頂きます!」






まさかポテチじゃなくてポテチ玉の方が正解だったとは思いませんでした……両方を作ってて良かった。


いや、まあジャガイモのパリパリと聞いてすぐポテチと結論付けてしまったあたしも悪いのですけど。


形なり味なり、1回は確認するべきでしたね。


因みにポテチはハイドラ様の世界ではサクサクという名前で、フライドポテトはホクホクと呼ぶ、と翡翠さんから聞きました。


「ポテチのパリパリって美味しー!」


「これはポテチ玉って料理だぞ」


いやポテチ玉は正式名称ではありませんが……まあいいでしょう。


デストさん以外にツッコミ出来る人は居ないでしょうし。


「そういえば翡翠さん……ちょっとライコに料理を教えてみたくなったのですが」


「いいよー」


言い切る前に即答!?


「正直私もリーアも、ハイドラ様ですら料理が出来ないし……むしろこっちがお願いしたいね」


そういう事なら遠慮なく……


襲撃まで後8日にしてここを立つまでは後7日、みっちり鍛えてあげましょう。





「イブちゃん、あんなに苦労して……しかも……ほぼ、見よう見まねだったのに……ライコちゃんには……すんなり、教えるんだね?」


「それを言われると申し訳なくなりますね……バラさないで下さいよ?」


言い訳するとイブには王様が発行したレシピ本を渡しましたからね?


アレに豆腐の作り方は書きませんでしたけど。

「サクサクを5枚くらい重ねて食べても美味しーね!」


「それに気付くとは……ナクア、天才か!」

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