表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居候人は冒険者で店員さん  作者: ルド
第一章『冒険者な彼の約4分の1日』
6/38

【突然の依頼その5】

ほぼ暗殺者だと確定した男を“トラッキング”で追跡してすぐ、男は館内のひと気のないフロアで、外に通じる窓を開けて何か荷物を取り出している。

出てきたのはプレゼントのような箱が2つとカバンである。


どうみても怪しい物であった。

カバンそうだが、箱からも悪意な光が漏れていた。


「……」


その物の情報を探り出すスキル“アナライズ”を使用して、カバンを盗み見てみる。


「っ……」


見てすぐに驚きの声を出しそうになった……!

咄嗟に口を詰むんだが、アレは心臓に悪いぞオイ!


2つの箱の中にはダイナマイト(爆弾)が入っていた。

タイプは遠隔式で外部の魔法起動によって爆破されるのであろう。


カバンの中にも爆弾があるが、これは少々特殊なようだ。

遠隔式なのは変わりないが、花束で覆われている。


アレで仕留める理解したおれは、男に近付いて声をかけることにした。

もうアレだけで現行犯だな、うん。


すぐに捕らえても良かったが、男の方が言い逃れられるリスクもある。投降を促がす為に声をかけることにした。……まぁ、後者は無意味な予感しかしないが。


「すみません、ちょっといいですか? 警備の者です」

「っ!?」


相手の警戒ラインを見切り、気配を殺して接近する“無殺”で、男の側まで近付くとポンと肩を叩いて呼びかける。まったく気付かなかった男は慌てて振り返り、おれの顔を見て驚きのあまり目を剥いていた。


動揺の色がハッキリと視えるので、気配を消して近付いて正解だったようだ。


咄嗟にカバンをおれの視界から隠すように後ろに回したが、当然見過ごさないわけで。

隠されているが、既に中身は把握できているので、おれはそれを理由に問い詰めることにした。


「そのカバンの中にある物について、少々お伺いしたいのですが?」

「こ、これは……!」


爆発物とは告げなくとも、おれの言葉で既にバレていると思ったのであろう。

表面上は焦っているが、能力で視える男から出ている悪意のオーラは鋭くなっていた。


隠しているが、臨戦状態に入ったようだ。

その証拠にバレてないと思っているのか、背後に隠し持っているカバンではない片方の手で、腰に忍ばせいる鋭利なタクティカルナイフを掴み取っていた。


分析できる“アナライズ”でナイフの情報は把握できていた。

マジックアイテムではないが、ナイフには魔法式は書かれている。

魔法関係は専門外なのでよくは分からないが、恐らく接触によって発動するタイプであろう。

斬られた瞬間、毒でも撒いてくるかもしれないので、受けないように準備しておく。


「ち、違うんですっ! これはそのです…………ねッ!!」


何気なく近付いて来て低姿勢のまま、おれの間合いまで迫ったところで奇襲の一振り。

逆持ちで腰から引き抜かれたナイフは弧を描くように、おれの腹を切り裂こうとした。


だが、とうに把握していたおれは慌てずに、一閃を上体を下げて躱してナイフを持つ腕を掴んで、捻るように肘を押さえると膝を蹴り、相手の体を前へと倒してみせた。


おれはその背中に片膝を乗せて、起き上がれないようにすると、取っている腕にさらに捻って関節を曲げようとする。……このまま捻折ってしまうか?


「ッうぉ!? ぐ!?」

「大人しくしてもらおうか?」


こうも簡単に対応されるとは思ってなかったのか、おれの動きに反応し切れず慌てる男だが、一目散に組み敷かれた状態から脱しようと、取られている腕が折れない程度に暴れ出し始めるが、これは陽動であるのだとおれは気付いていた。


「っ!」


死角となっている後ろから足を蹴って、仕込みナイフを踵から出した男は暴れるフリをして、おれの背中にナイフを突き刺そうと足を曲げて、踵蹴りをしようとしてきたのだ。


────っと!


「だから、大人しくしろって」

「グ、グッ!?」


もちろん食らうつもりもない。

おれは男が足を上げたタイミングを見計らって、押さえている手で後ろを見ずに、足首を掴んで抑え込んでみせた。もともと背中に膝を乗せているので、手を空けても問題なかった。


男は悔しげに歯切りをしているが、おれは気にせず掴んでいる手に力を込めた───────密かに鍛えている筋力と煌気で強化された人間離れした握力で。


おれは容赦なく片手で足首の腱を捻切りように、一気に力を強めて捻り切った。


────ブチブチブチチチチッ!!


「ガァ、アアアアアアアアアアッ!?」

「うるさい」

「────ゴブっっ!?」


腱をねじ切られた痛みで叫ぶ男に、黙らせるつもりで後頭部に一発拳を入れる。

ゴツッと鈍い音と共に男の顔は床に伏せさせて、意識を刈り取った。





─────忍び込んでいるのが、1人だけじゃないと気付いたのはその持ち物を、調べている最中であった。


『ご苦労だったヴィット! 今からそっちに部下と共に向かう!』

「了解です、おれはその間に持ち物とか調べておきますね」


アーバンさんに連絡を入れたおれは通信を切ると、うつ伏せで後ろで手錠をはめられている男の持ち物を調べてみることにした。


ちなみに手錠は街の警備隊が愛用している特殊合金でできた銀色の手錠で、警備隊のアーバンと親しく度々、こういった特殊な依頼くるため特別に支給されている。


ただおれの手錠に対してだけは少しだけ、他とは異なっている。

頑丈なのはもちろんだが、実は改良が施されており魔力を封印する機能も搭載されている。言うなら手錠のマジックアイテムであった。

この手錠をはめれば相手が魔法使いの場合は、魔力を封じことができるので、いざという時に非常にいいアイテムなのだ。


……まぁただ便利であるが、悪用した場合は酷い目に遭うらしいから、仕事以外では使わないが。アーバンさんに教えた際にキツく言われてしまったのだ。


まぁそれは置いておいて、カバンや懐から色々と持ち物を確かめる。


カバンの方は能力で調べていたので、爆発物がメインのは明らかであるが、他にも館の地図なども隠れていた。

館内の死角でも探っていたのだろうか?


「……あれ?」


ふと男のポケットを探っていると、仕舞っていた通信機の石を見つけたおれ。

一応先程の“アナライズ”で把握はしていたが。うーーん。


……念のために、能力で石を調べてみることにした。


“アナライズ”を使うと通信機の石から光が螺旋状に出てくるのを視て、おれは手に取り込んでみた。

魔法はおれには使えないが、裏技がない訳ではない。

こうして能力で情報を読み取りながら、中身を調べれるのだ。


──────基本情報を取得──────通信履歴を取得。

──────通信先の情報を取得──────対象の情報を整理。

──────製造元を素材から検索──────製造元ーーーー国。


様々な情報が頭の中で流れて整理されていく。この後アーバンさんに報告する際に利用するため、じっくりと調べていく。

こういった情報は相手が黙秘して、得られない場合が多いため、依頼達成の際の評価がかなり高くなる。

その分、報酬もいい。



──────会話記録を取得。


そうして調べている中、ふいに通信機から会話情報を聞けれるようになった。記録からして20分程前である。

おれは情報になると通信機に残っている音声を聞いてみた。

ノイズもあってキチンと音声が再生されてる訳でないが、ある程度は聞こえてくる。


『───では、手筈通りこっちは2箇所に仕掛けておく。それと予定時間になってもこちらに動きがない時は……』

『ああ、そちらの爆破が失敗に終わった場合は、速やかにオレが直接仕留める。……幸い相手の周りの警備は弱い。オレなら余裕だ』

『クククっ頼んだぞ、剣殺』


「───っ!? 二つ名持ち!!」


会話を聞いている中、目の前の男が口にしたであろう二つ名を聞いて、慌てて立ち上がる。さすがに二つ名持ちは予想外だった!

おれは急ぎ残りの記録を読み終えて、もう何もないと立ち上がってその場から駆け出した。


「アーバンさん! アーバンさん聞こえますかっ!?」


その場に男を残して行くのは心配だったが、間もなくアーバンさんと警備の人達がやって来るのを感じ取ったので、おれは急いで通信機で呼び掛けながら、護衛対象がいるフロアへ駆け出した。





「……どうやら気付かれたようだな」


男は40代くらいの白髪の中年男性、痩せ型でスーツを着ている男性の側には杖が置かれていた。

もう1人の暗殺者はトイレの個室便座に座って待機したまま、起きるはずであった爆発を待っていた。


今回の仕事は対立派閥から依頼で内容は、この館の主人の暗殺であった。


現在はそこまで脅威ではないが、対象の貴族は市民にも慕われて始めている。

少々厄介な相手であるそうだ。時間をかければ別の派閥の貴族達にとって、よろしくない事態に発展してしまう可能性が極めて高い。


そして今回の暗殺に動き出したのは2名。どちらも同じ組織のメンバーで、貴族に裏で雇われては日々、色んな殺しを行なっているコンビだ。


手順は大体2段階であり、今まさに一段階目が失敗に終わったと思われたため、2段階目に移ろうとしていた。今回はおまけも用意する予定であるが、男はそれまで長引かせるつもりはなかった。


「ふぅ……さて、いくか」


もう一方がやられたかもしれないのに、男は一切気にした様子をみせない。

コンと杖で小突くと便座から立ち上がり、標的がいるフロアへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ