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居候人は冒険者で店員さん  作者: ルド
第二章『店員で冒険者な彼の約3日間』
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【警備開始その1】

「朝ですよ、ヴィットさん」


朝、おれを起こしに来てくれたのはリアナちゃんであった。

別に寝坊しているわけではなかったが、姉と違い優しい彼女はおれが起きれるか心配で起こしに来てくれたようだ。


もちろん、アリサさんのような暴力的(アレ)な起こし方ではなく、かけている毛布越しにおれの体を揺らすように起こしてくれて───朝からおれの気分も最高ですッ!!


まさに若妻だよ!

新妻だよ! 様子は全然見えないけど!


こんなお嫁さんなら是非欲しいッ!!


「………………」

「あ、あのーーヴィットさん? 起きてますか?」


反応のないおれに首を傾げた様子でリアナちゃんが体を揺らしてくる。

同時に彼女の柔らかな手の感触が毛布越しからでも分かってしまう!


「う、困ったな……」


しかも叩いてくる気配が一切ない、ホント天使だよこの子っ!!

よしっ、こうなったら意地でも起きない!


仕事なんか知るか!!

おれは困った顔のリアナちゃんとこのままイチャイチャするんだ!


と、早朝からいきなり暴走気味になりつつあるおれがいた。

しかし、それでも自分を止めれない。


可愛い彼女との攻防がしばし続く。


「起きて、ください……!」


そしておれが起きていることを気付かないリアナちゃんはさらに揺らしてくる。

しかし、全然起きる気配が見られないおれに、これでは足りないと思ったのか、一度気配が離れたと思ったら、


「え、えい……!」

「っ〜〜〜!!」


何かが体に乗ってきた。

呻き声が上がるかと思ったが、その前に感じた感触に絶句する。


「???」


胸元に極上なモチモチとした2つのクッションのような感触と、慣れていてまだ惑わせる甘い香りが首元からくる。


こ、これはまさか……!

まさかぁあぁぁあ!?


「…………!」


絶対にバレてはいけない。

だが、おれはそれでもバレないように気をつけつつ、閉じていた目を薄く開けて───


広がる光景に固めていた寝顔がイヤラシク崩れそうになるのを必死に堪える羽目になった。


「お、起きてくれないと……い、イタズラ、しますよ?」


寝ているおれの上で前に倒れるように密着しているリアナちゃんとご対面。


顔を真っ赤にしておれの顔の鼻先付近まで顔を接近させていた。


……て、近っ!?

なにこれ超近いっ!!


さらに服装も良い。普段着の冒険者用の服のようだが、その上にアリサさんの着ているのと同じタイプのエプロンを身に付けている。


それがおれと密着したことで大きく乱れていけない。

しかも特にヤバいのが下半身だ!

体勢的にリアナちゃんと色々と密着してるから───夜でもないのにオオカミになっちゃいそうっ!


というか絵的にも完全にアウトだ!

こんなのアリサさんやカインが見たら卒倒しちゃう!


「ほ、ホントに、イタズラしますよ……??」


おれが起きていることにまだ気付いていないのか、真っ赤な顔をさらに赤くさせて両手をおれの手に───ギャアアアアアア!? あんまり密着している部分を動かさないでっ! 本当にオオカミさんになっちゃうっ!?


け、けど素晴らしい! なんだこれは?

これが本当にイタズラなのか!? ご褒美の間違いじゃないか!!


思わぬ事態に泣きそうになるおれがいる。

けどそれだけ感動していた。


これなら、こんなイベントがずっと続くというなら、いっそ永遠に起きなくても、おれは……!





「いつまで寝たフリをしているのかしら? それとも永眠が希望なら送ってあげましょうか、ヴィット……?」


とそこで楽園タイムの終了のお知らせがやってきてしまった。


リアナちゃんとは似ても似つかない冷気のような声に反応して、目を開けたおれの視界の真横で彼女はおれの顔を覗き込んでいた。


「お、おはようございます、あ、アリサさん」

「あら、おはよう? まだ眠っていてもいいのよ?」

「いえ、起きました。おかげさまで完全に目が覚めましたっ!」


リアナちゃんと同じようにエプロンを付けた、アリサさんが微笑で小首を傾げて言う。……背後には死神さまを控えさせて。


───エ、オキルノ?


起きますよ? もちろんじゃないですか!

だから帰ってください。朝からそのキラキラ光る鎌を見せないで!!


まぁ、そんなくだらないやり取りの後、おれはリアナちゃんとアリサさんと共に朝食を取るのだった。


ちなみにおれが起きていたことに気付いていたか分からないが、アリサさんとのやり取りの後、しばし真っ赤のまま放心状態で朝食を取るリアナちゃんがいた。


なんか小声で“見られた、見られた……”とぶつぶつ呟いていたが、おれは特に気にせずアリサさんはどうしてか溜息をついていた。





「時間ね……」


そして祭り当日の朝がやってきた。

セットしていた目覚ましの時計の音で起きたロサナ。


前日に思わぬ展開で疲弊してしまったが、その心身も早めの休息のおかげで十分に休めていた。

そして朝食を取り手早く身支度を済ませ終えると、宿を後にして集まりつつある人たちに紛れて祭りの方へ歩みだした。





おれの準備はいつ通りである。

冒険者用の黒スーツのようなジャケットの格好に着替えると、武器を整理する。


おれには武器型のマジックアイテム類は持ち合わせてない。

あるのは精々、通信用の無線機と時計類だ。


おれはそれらを付けた後、武器として短剣より少し長くて細い棍棒を腰に取り付ける。

剣や槍を使わない衛兵の人が使うことが多いタイプの物で、おれもこれは使いやすいと割とよく使う。


前回は屋敷内だと目立つからと外したが、今回は別にいいだろ。

さらにサバイバルナイフに特殊ダーツを4本に太腿のホルスター付ける。


最後に銀鎖を腰にぶらさせげて準備は完了した。

そして同じく準備を終えたリアナちゃんと共に合流地点に移動した。





「結構集まってるわね」


人混みに紛れて試合の舞台から少し離れた、臨時の休憩スペースのテーブル席でお茶をするロサナ。


グラサンを見つけて観光客のように装いつつ、周囲の警備の状態を確認していた。


(まだ時間は早いと思ったけどもう人で一杯。警備も街の衛兵や冒険者を複数用意して見張らせているようだけど)


この程度であれば問題はない。これぐらいの警備網ならなんども潜ってきた。確実に標的を狙える自信は彼女にはあった。



そう()がいなければ問題はなかったのだ。


(警戒すべきはあの子ね。カイン君って子の側にいたあの店員の男の子)


なんの偶然か知らないが名は聞いてないが、彼と妙な縁を持ってしまったロサナ。


そして不幸にもその彼の察知能力はロサナを捉えれるかもしれない。


いや、捉えれると考えるべきかもしれない。

それだけ昨日の接近は予想外であったのだ。


「早めに狙撃場所に移動した方がいいかしら?」


そして少々悩めること数分、とりあえず慌てると周りに怪しまれるのでロサナはこれまで通り溶け込みつつ狙撃場所へとゆっくり移動することにした。





祭りが行われている広場に集まってすぐ、他のメンバーと合流するとまず他の冒険者チームや警備に当た衛兵の人からの話があった。


ちなみに警備リーダーはアーバンさんではなく、あまり知らない経験豊富そうな大柄な男性であった。


「それじゃ簡単に説明してすぐに見張りに入ってもらう。既にそれぞれ見張る箇所は知らせてあるから何かあればすぐに持たせている通信機で連絡、他にも判断が付かないことがあれば私のところまで知らせてくれ」


そんな感じてさっさと締めると他のチームも配置場所へ移動していった。

仕事の開始である。




「さぁオレたちも行こうか!」


そして順調におれたちも見回りに入る。

最初は時間があったのでおれたちと一緒にカインもいたお陰で、仲間内で面倒ごとは起きなかった。


やはりカインは鎮静剤である。

いるだけでハーレムメンバーがある程度は大人しくなっていた。


まぁ、それでもおれとは明確に壁を作っている者もいた。

その中でもルリという魔法使いの子だけは、一番大きな壁を張っていてとても関われそうになかった。

特に仕事で話すこともなくずっとカインの側に立ちおれから離れた位置にいた。


それでもまだミオに比べればマシな気する

彼女の場合、終始嫌悪な空気を隠そうとせずおれに噛み付いてくる。

一応カインが念押ししていたが、それもあまり効果がない。前回のおれの単独行動が相当頭にきたらしい。



そのため途中でカインが試合の準備の為に抜けてしまった結果。

一気に場の空気が悪くなったのは言うまでもない。


「いい? 絶対余計なことしないでよ? 足引っ張ったらすぐ追い出してやる」

「ハイハイ、分かったって……」


早速であるが、前回と殆ど同じでミオから絡まれてしまうおれがいた。


本人はただ注意しているだけのつもりかもしれないが、敵意が凄い。

前よりも明らかに増している上、イラついた様子である。


「何よその態度は!?」

「別に何でもない」

「はぁ!?」


正直うっとおしい所為か、口調が悪い気がするおれに反応してミオがギロっと睨みつけてきた。


またか……面倒だな。



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