3章ー13 さいきょうの魔法使い
「どうするの、この子」「処分してしまおうか」「バカ言うな、まだ子供だろうに」「それでも……確実にこの世界の脅威になるだろう」「そんなの……わからないじゃないか」「不安の芽は早めに摘み取っておくものよ」「この魔力量……ありえない。確実に、世界を滅ぼす」「とにかく、軍に預けましょうよ、あそこならなんとかしてくれるはず」「最悪、今のうちからなら、殺すことも、懐柔することもできるはずだしな」「でもこんな小さな子供……」「化け物の子を飼いたいか」「……」
辺鄙な田舎村で、真剣に話し合いが始まっていた。
誰も産んでいない子供。ある日、何の前兆もなく、村で一番人通りの多い道路にポツンと生まれて間もない子供が捨てられていた。この村では、お腹の大きな女性はいなかった。確実にこの村の住人の子供ではない。よそから持ち込まれたか、どっかからコウノトリが落としたのか。
普通の子供なら村の住人も、一人増えるくらい喜んで、村全体が育てただろう。もともと人口も少ない上に、老人ばかりである。捨て子を野ざらしにして死なすほど冷たい人もいない。
それでも、事情が事情だった。その世界の常識では、存在がありえなかった。遺伝により決まるという魔力の量が、人間のものではなかったのだ
村から軍へ預けられた子供はいつまでたっても恐怖の対象で、ずっと腫物にさわるような扱いをされてきた。好んで彼に接しようとする奇特な人はいなかった。いつも彼は一人だった。ずっと彼は一人だった。
下手なことをするな。世界が滅ぼされるぞ。
誰もが言わなかったけど、誰もが言っていた。その空気を一番に感じていたのは紛れもなく彼自身だった。
僕は、存在してはいけない。僕は理を外れたんだ、この世界に認められていないんだ。僕は一人だ。僕はいてはいけないんだ。
どうしたら、僕も認められるの。どうしたら、僕はここに居ていいの?どうしたら、僕は、僕は。僕だって、僕は……。
彼は、魔力の量が異常なだけで、ほかは何の変哲もない人間である。それを、誰も知らなくて、唯一、彼自身が知っていた。
彼の孤独に、誰も気づくことができなかった。
……僕は、いらない。
世界に認められない、僕なんて、いらない。
消えてしまいたい。
消えてしまえ。
僕なんか、消えてしまえ。
この世界に認められない僕なんか、消えてしまえ。
……そうかよ、望み通り、消えてやる。
頭の中に声が響いたと思ったら、幼いころのレオは意識を失っていた。