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神様計画~カミサマプロジェクト~  作者: きたぴよ
3章 さいきょうの魔法使い
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3章ー11 さいきょうの魔法使い

【4】


 真っ黒な部屋の中に、閉じ込められたみたい。四方を壁に包まれ、黒い壁には、所せましと、白く文字が書かれている。それは絶え間なく動く。常に違う文字に変化する。

 その黒い部屋の中に、ただ一人いるあなたは誰なの?

 こっちを見て、悲しそうな顔をするのは何でなの?




 突然、ユーの全身から、まばゆい光があふれた。緑と青を混ぜた、不思議な色。

 暗いところで順応していた目が驚き、慌てて視界を閉じる。まともに直視していれば、目自体が危なかったかもしれない。

 魔物達のほうは、まともに直視したらしく、目を抑えて悶絶している。これは、チャンスだ、と、魔法と得物を駆使して、粗方のものは処分しておく。まだ湧いてくるものの、永遠に相手をしなければいけない状況からは脱却した。

 それにしても、ユーに何があったんだ……。

 ちらりと、ユーのほうを見る。一瞬の発光などなかったかのように、光は収まっていた。


「ユー、どうした」

 俺の問には答えない。ただ一点のみを見据えている。

「……レオ、あっちに、隠れた空間がある。そこには、魔物は少ないみたい」

「どうしてわかるんだ?」

「よくわからない。けれども、また囲まれたら身動きがとれない。時間がない。急ごう」

「お、おう。わかった」

 ユーが指をさした先には、まるでそこが答えだとでも言うようにユーと同じ光の色を帯びた岩に囲まれていた。


 そこは、何度かこの洞窟に来ていた俺でも初めてみる場所だった。

 地下に下がっていったその先には、泉があったのだ。それも、藍色の絵の具にダイヤモンドを細かく砕いて溶かしたような、透き通る蒼の水に、きらめく湖面。壁には、自ら光るコケが生えて、より一層泉を幻想的に魅せている。

 さっきまで大量に湧いていた魔物も嘘のようにいなくなった。むしろ、ここに近づくほど、魔物の数が減った。まるでここを避けているかのようだった。

 奴らにとって、ここは神聖な場所なのだろうか。


「ひとまず、ここで小休止しようか」

 ユーは、走ってきた分、ぜぇぜぇと息を切らしていた。魔物も少ない今なら、息を整えるくらいの時間はあるだろう。俺のほうも、ユーに、どうしてここがわかったのか、さっきの光はなんだったのか、確認しなければならない。

 あの光……ユーの体から発し、魔物集団から逃げる突破口を開いた光、ほんの刹那の瞬間ではあったけども、あの光から『魔力』と同じチカラを感じた。


 最初に出会ってから、光が出るまでは、ユーから一切の魔力を感じなかった。いや、今も感じてはいない。それが、ユーと俺たちを区別する最大の要因だった。

 それが、あの光が発生したほんの一瞬だけ、魔力を感じたのだ。ほんの一瞬だったから、その量がどれくらいとかはわからない。けれども確かに魔力はあった。

 魔力を持っていないということがこの世界においてユーの存在を守っていたのだ。特異な事例として、予言に出てくるヒーローとして。この世界の理の中では、それはユーにとって致命的な欠陥である。


 マミは、ユーが旅した世界のことを詳細に探っていた。本人は、死後転生をしたという。本人が住んでいたという世界の話を聞いたらしいが、どれも嘘とは思えないほどに、現実身のある話だった。もしあれが作り物だったとしたら、ベストセラー作家になれるとも言っていた。科学者たちは、ユーにブツリとやらの話も聞いていた。それはそれは目から鱗だ、と痛く感動していたのを覚えている。それに比べ、ユーのこの世界への常識はほとんどないと言ってもいい。


 だから、ユーは、違う世界から来た、と俺らは結論付けた。それには、魔力の不存在が大きな要因でもあった。

 しかし、状況は一転する。ユーから魔力が感じられるということはそれだけの力を持っている。

もし、もしもだ。ユーが、本当は、世界を旅したというのは嘘で、本当は、この世界の中に組み込まれた存在であったら。そして、ユーは何らかの隠された要素を持っているとしたら。……いや、もっと的確にいうとしよう。


 もしも、厄災の元となっているモノだったら。


 その可能性を誰が否定できるのだろうか。彼自身も彼のことを知らないのに。

 そして、無意識にでも俺を、ここまで導いたとしたら。

 体中から汗が出る。戦闘による汗ではなく、恐怖による冷や汗。この先、何が起こるかわからないがゆえに、体が本能的に警戒態勢に入る。


 ……予言の言葉を信じ切っていた。あまりにも、「彼」との出会い方と、「彼」のその後の行動が素直だったから、どうしても、疑う気になれなかったのだ。

 俺は、知らないうちに彼を信頼していたらしい。


「ユー、さっきの光はなんだったのだ」

「ああ、あれは、僕にもよくわからないんだけど……ねぇ、レオ。この泉の水飲めるかな?僕もう喉がカラカラなんだけど」

 生水飲んで病気になっても知らないぞ、と返す前に、す、とユーが泉に手を浸す。

 ユー、お前は何者だ。

 疑心暗鬼が頭から離れない。


 お前は、敵か。味方カ。






……デハ、オ前ハ何者ダ

 誰だ。俺に話しかけてくるのは。

 耳から音を聞いている、というよりは、脳内に直接語りかけられている。聞いたことがあるはだと本能的に感じているのに、どうしても思い出せない。抑揚がなく、単調で、感情がない。なんだか、物凄く、俺の神経を逆なでしてくる。

 ……オ前ハ、何者ダ

 何を聞いている?俺は……俺は、レオだ。この世界で最強の魔法使い……。そういうお前こそ正体を現せ。

 ……本当ニ、オ前ハコノ世界デ必要ナノカ

 何が言いたいんだ!はっきり言えよ!顔も見せられない奴が勝手に言いやがって!

 ……理カラ外レテイルノハオ前モ同ジダロウニ

 やめろ!それが何だっていうんだ!それでも、俺は、俺は……!


「魔力が桁はずれすぎる。こんなの人間じゃないね」「いやだ、厄災の子よ、絶対」「この子は軍で徹底的に管理します。皆さんに危害はありません」「どうして助けられなかったんだ!」「世界最強なんだろう?」「お前がいるから、厄災が来たんだ!」「お前なんか、いなければ世界は平和だったんだよきっと」「お前は厄災があるから許されているんだ」


 ……。

……どうして、こんな時に、そンな記憶を思イ出すンダ。




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