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神様計画~カミサマプロジェクト~  作者: きたぴよ
3章 さいきょうの魔法使い
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3章ー4 さいきょうの魔法使い

 そして、到着地点で僕は地獄絵図を見る。


 あたりは、分厚い雲に覆われているため昼間なのに薄暗く、ところどころ雲の切れ目から、ちょうど太陽の位置的に正午くらいとは思えないほど、真っ赤な空がのぞく。夕焼けでもここまで赤く染まるまい。そして、その赤に負けじと、大炎が渦を巻く。きっと、ここは、村だったのだ。家を形作っていただろう木材が、そこらへんに無残にも焼かれ、折られ、転がっている。炎がすべてを焼き尽くさんばかりに踊り狂っている。


 そこに、倒れる、人、人、人……。なんとか無事な人々もいたが、その顔は憔悴しきっている。子供の泣きわめく声が空しくくもり空に消えていく。


 僕は声を失うばかりだった。なぜ、こんなことになっている?助けなきゃ、どうやって?炎に焼かれる?さまざまに思考が脳をめぐるがどれも言葉や行動となって形を形成しない。渦となって消えていく。

「ユー、俺についてこい。この世界の現実を見せてやる」


 レオは、いつの間にか来ていた大量の人だかり(武器を持っている人や、医者のような道具を持っている人がいた)にテキパキ指示を出してから、また、何もできずにいる僕を抱えて飛んでいった。

 その先には、1000、の意味が存在した。


 畑があっただろうと思われる土地のため、かなり開けているのに、地平線を覆いつくさんばかりの、動物……いや、怪物の数々。形こそは、人のものと似てはいるが、共通点は二足歩行であることくらいで、大きな手足に、大きな爪を抱えていたり、頭が獅子に変形していたりする。それこそ、僕がこの世界に来た時に食べられそうになったライオンがかわいく見えるくらい、大きくて、グロテスクで、なおかつ、強暴そうな様相を示している。遠くて細かいことは見えない。しかし、こいつらが、さっきの村壊滅の元凶であることはすぐにわかった。


「ユー、そこで、じっと見ていろ。一歩たりとも、近づくんじゃねぇ」

 それだけ言うと、レオは1000の軍勢に向かって走りだす。まさか、あの軍勢を一人で?そんな、無茶だろ?左手に刀一本、それで1000と殺りあおうというのか!


 想像どおりに、強大な怪物達はレオを襲ってくる。だが、レオはそれを気にも介していないのか近づくものは、刀一本で首を落としていく。あのごつい首をわずか一振りにて落としていく。レオは、強い。半端じゃなく、強い!


 あらかた、レオが暴れた後には、1000の軍勢も少し減ったようであった。しかし、それでも全体の1割程度にしかなっていない。これじゃ、いくらレオが強くても数で攻められて負けてしまう。そのときに、レオが叫んだ。


〈―すべてを貫く裁きの雷〉


 すると、どうしたことか、分厚い雲から、あまたの稲妻が怪物に向かって落ちていった!レオや、僕、村のほうには一切あたることがなかった。もしかして、これが……魔力の力だというのか!

 言葉が出ない僕をよそに、いつの間にか瞬間移動をしてきていたのだろう。レオが隣で声を抑えて話す。



「見ているか、ユー。これが、魔法だ。自分の思い通りに、目の前の現象を改変する力、それが魔力であり、魔法だ」

 たった一発(何本もの雷が降り注いでいたため、一発というには多少語弊があるが)の雷によって残りすべての軍勢を倒してしまったのだった。最初の、レオの単騎突撃は、きっと魔法発動の準備をするための時間稼ぎであり、怪物たちへの牽制であり、少しでも自陣にいる人への被害を減らすためのものだったのだ。


 幾本もの雷を打ち出した分厚い雲は、今は空を覆い隠すものではなく、雨を降らせるものとなった。その雨は、村の火を少しでも止めるよう、レオに支持されて、救護隊と呼ばれる人たちが魔法で作りだしたものだと、あとから教えられた。


 炎の周りはひどかったものの、迅速な対処が功を奏したのか、奇跡的に死人は数人にとどまっているらしい。ただし、村は壊滅、重傷者は沢山出ているために、手放しでは喜べない状況になっている。

レオの後に瞬間移動してきたという救護隊や支援隊の人たちは、忙しそうにけが人の看病をしたり、村の復興のために尽力しているけど、僕は、何もしていない。


レオは、僕の傍にいてくれている。僕は、目の前で起こったことに対して、気持ちを整理できていなかった。

「レオ、あれは、なんだったの?」

「あれは、魔法、目の前の現実を変える力。それの源が、魔力」

「じゃなくて、あの怪物は……」

「あれは、『厄災』。数年前から、時折出現するようになった。どこから来ているのか、いつ来るのか、何のために来るのか、一切わかっていない。でも、あいつらを倒さないと、俺の世界は大変な被害をうける、最悪、壊れる」

「やく……さい……」


 昨日までは家庭を守っていた家々からは炎があがり、生活の礎だった地面は誰のともわからない血を吸っている。目の前の荒んだ光景は、それを表すのにきっと一番相応しい。 


 レオは、僕にそっとささやきかけた。

「ユー、俺はお前をきっと探していたんだ」

 僕を……?

「どうか、俺たちに、力を貸してほしい」



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