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四人の中で一人だけでも大丈夫

「ブルーが会議とは何だと聞いていますけど……」

 私もよくわからないので答えようがなくてファーズさんを見る。ファーズさんが手を伸ばして毛に触れた。

「ファーズだ。会議といっても、話し合いがしたいということなんだが、いくつかお願いしたいこともある。協力できることとできないことをはっきり言ってもらえればそれでいいんだが」

 ブルーにお願い?

『ふん、分かった。話を聞こう。だが、はじめに断っておく。我は人間には興味はない。協力をあてにするな』

 そうか……。

 私はレイナさんを助けたい、何かしたいって気持ちでいっぱいだけど……。ブルーにはブルーの気持ちがあるんだもんね。

 無理なことはお願いできない。当たり前のことだ。それをわかっているからこそ、ファーズは会議という話し合いの場を作ったってことだ。


 ルークが持っていたブルーの毛にレイナさんとファーズが触れ、私の持っている毛に私とルークが触れて会議は進んだ。

 長老会議のメンバーに魔力至上主義という考え方を改めさせるための作戦。

 そのためにブルーにお願いしたいこと。

 作戦に関してはファーズとルークが時々熱く議論する場面もあった。

「エイルにも協力してもらいたいことがあるんだけど、頼めるかな?」

 と言われたら、もちろんと大きく頷く。

 そして、私にできることを忘れないようにしっかり話を聞いて……。

 その途中にレイナさんがふと思いついたように私の顔を見た。

「ねぇ、エイルちゃん、お願いがあるんだけど、私を収納してくれない?」

「え?構いませんよ?」

「ああ、そうだな、俺も頼む。収納の中がどうなっているのか一度見ておきたい」

 そういえば、村人は収納したけれど、あの時外で戦っていたレイナさんもファーズさんも一度も収納してなかったんだっけ?

「【収納】」

 二人を収納する。

 えーっと、どれくらいしたら取出したらいいのかな?

「僕は、エイルほど協力できることがないな……」

 ふとルークが漏らした。

「そんなことないよっ!私だって、結局……」

 協力っていったって、本当に必要なのはブルーの力。私はただの器に過ぎない。

 ルークの方がよっぽど作戦を立てるのに知恵を出してると思う。

「まぁ、でもさ、役立たずではないよね」

 ルークが小さく笑った。

「うんっ。そうだよね!」

 魔欠落者だからって、役立たずじゃない。

「それ、似合ってる。流石ヤンさんだ」

 ルークの手が髪飾りに伸びた。

 鏡に飾りを写して見る。小さな布に3種類の違ったピンクの糸で花がびっちりと刺繍されている。

 リボンの部分には黄色の縁取りの中にピンクの小花がたくさん散らされている。

「ありがとうルーク」

「いや、お礼ならヤンさんに……」

「ルークが頼んでくれたのでしょう?」

 私の髪の色……。ルークはシルバーグレーって伝えてくれたんでしょう?

 父親のくすんだ灰色とは違う……私の髪はシルバーグレー。

「エイル、さっさと二人を出せよ。人目が無いからって、あの二人今頃収納の中で何をしているかっ。って、会議が終わらないからな」

「あ、そうだね。会議の途中だったね。【取出】」

 二人が姿を現す。

「すごいよ、エイルちゃん!広いし、なんかあったかくてすごくいい!ずっと住みたいくらい!」

「エイル、ブルーの他にもモンスター収納してあるんだよな?まったく姿が見えなかったぞ。ブルーを避けて遠くにいたんだろうが……そう考えても思ったよりも広い!これは作戦を一部変更しなくちゃならないな」

 え?

 そんなに広いんだ。

 それから2時間ほど会議は続いた。


 途中、本当に私には話の内容がよく分からなくなってしまって、お茶を入れるために立ち上がった。

 茶器そのほかはいつもレイナさんは収納にしまっているものを使っているらしい。……毒が入れられないようにということだ。水はもちろん自分で出しているらしい。

 茶器類は私も収納に入っている。お茶の葉も少しある。

 だけど水は……。

「レイナさんお水ください」

「はいどうぞ【水】」

「ありがとうございます」

 頼めば平気。あ、この部屋……水に関してはレイナさん以外みんな誰かに頼まないと手に入らないメンバーだ。

 そう考えたら少しおかしかった。

 全員が水魔法を使える必要なんて全然ない。

 六法満足である必要ってある?

 村で教えてもらった火鉢を取り出す。両手で抱えるくらいの大きさの素焼きの鉢の中にアネクモの糸を入れる。

 火打石に普通の石を打ち付けて出た火花をアネクモの糸に落とす。30回ほど繰り返すとアネクモの糸から煙が立ち上がった。よし。成功。すぐに赤い火が見えだした。鉢の上に網を乗せて水の入ったヤカンを乗せる。

「ふふふっ」

 レイナさんが笑った。

「え?あの、何か変ですか?」

 火魔法を使える人間は部屋に2人いる。けれど、あえて頼まなかった。頼むのが嫌だったわけじゃない。

 ただ、魔法を使わなくても大丈夫なんだという生活が当たり前になってきていたからで……。

「そこ、使えばいいのに。部屋の中で火鉢を使うのなんて初めて見たわ」

 火魔法を使えばいいのにじゃなくて、そこを使えばいい?

 レイナさんが、暖炉を指さした。

「ああ、本当だ!火を燃やすための場所があったんだ……つい、村での生活の癖で」

「うん、懐かしいなぁ。火鉢いいよね。私も一つ収納に入れておこうかしら。アネクモの糸も火打石も便利だねぇ。そうだ、火鉢と三点セットで売りだしたら売れるんじゃない?」

「無理だろうね。アネクモの糸、貴重品でしょ?」

 ルークが冷静に返した。

「ああー、そうだたぁ!」

 レイナさんががっかりと肩を落とした。

「火打石は別に貴重でもなんでもないからな。火種をつけるための少量のアネクモがもう少し手に入りやすくなれば便利なんだろうがなぁ」

 この中で一番火魔法が得意なファーズさんが、火魔法を使わない火の使い方を考えるのもなんだかおかしな感じだった。

『おい、会議はおしまいか?』


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