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魔力切れ

「さぁ、護衛対象交代。一応宰相だからなぁ。ちゃんと護衛してくれよ」

 と、必死に戦っている五名のもとに近づく。

「剣に火魔法を乗せるんだ」

 男の一人に見本を見せるように、ファーズさんは呪文を唱えた。

「【火】炎剣」

 振り上げた火をまとった剣をアネクモの足の関節に振り下ろす。

 いつもならすぐに首を切り落とすところなのに、ファーズさんは足を切り落とした。

 額に汗をかいて、かなり疲労している男が呪文を唱える。

「【火】炎剣」

 ファーズの真似をして、火をまとわせた剣を元騎士が振り下ろす。ガキンと関節とはずれた場所にあたった。しかし、火が消える前に再び剣を振り下ろし、関節に当てることに成功する。威力がいまいちで、足は切り落とすことはできなかったが、変な方向に足が曲がり使い物にならなくなったことは見て取れた。

「よし!」

 足を二本失ったアネクモの動きは悪くなり、他の元騎士も次々となんとか足を切り落とすことに成功した。

「とどめは俺がさしてやろう」

 そこに、競技場の外から騎士服の男が一人入ってきた。

 確か主席魔法なんとかとか話していた男だ。

「【火】演舞剣」

 主席男は、剣を大きく真上にあげると、くるりと大きく一回…して飛び上がった。

 アネクモの真上から剣を首の関節に向かって振り下ろし、とどめをさした。

「ふっ、どうだ。私の剣の腕は」

 って自慢気だけれど、足をすべて使い物にならなくされて動かないアネクモの首を落とすのなんてルークにだってできるんじゃないかな?

「ほら、次、さっさと足を落としてこい!」

 ずっと戦い続けて疲弊している騎士服の背中を主席男が小突いた。

 ふらりと足元をふらつかせている。

「【風】5名は外へ。入れ替われ」

 主席男と合わせて騎士服が10名ほど。残りは庶民に変わった。

「ちっ。お前らのような庶民が戦えるのかよ、まぁいい。さっさと足を落としてこい」

 主席男が剣を構えた庶民を見て舌打ちした。

「うわーーーっ!【火】剣!」

 三十くらいの男が剣に火をまとわせてアネクモに突進していく。

「森で狩りをして生活してるんだ!倒し方さえわかればこれくらい!【火】火戦斧」

 鍛えられた肉体の二十代後半の男も飛び出した。

 手に持っているのは剣ではなく斧を大きくしたような武器だ。

 ザクッと正確にアネクモの関節を切り落とした。息をつく間もなく、二つ目の足に切りかかる。

「ひゅぅ」

 競技場でファーズさんが口笛を吹いた。

「さすがに生きるために命を張って狩りをしている人は動きがすごいね」

 ルークが目を見開いて真剣に見ている。

 しかし、大きな斧を持った男は足を二つ切り落とすと、そのままアネクモから距離を取ってしまった。

「何をしている、まだ足は残ってるぞ!」

 主席男が怒鳴りつける。

「もう火魔法が使えない」

 と斧の男が答えると主席男が笑いだした。

「はははっ。使えねぇな。使えねぇ。1回火魔法を使っただけでもう魔法が使えないとか、どんだけ魔力がないんだ!」

 主席男の両脇にいた騎士服の男がそれに続ける。

「本当だ。みっともない。そんなんで兵になろうなんてよく考えたな」

「せめて3回は使えないとなぁ。それでも俺たちの10分の1だがな」

「お前は不合格だろうな。使えない男が兵になれるわけない」

 騎士の言葉に、斧の男が悔しそうに頭を下げた。

 それを見てルークが腰を浮かせた。

「使えないのはどっちだ。さっきから足が切り落とされていくのを見てるだけのくせして」

 ルークの怒りはもっともだ。

 今にも斧の男に回復魔法をかけて魔力を回復させたいという気持ちをぐっとこらえているようにも見える。

「こっちに来い」

 斧男にファーズさんが声をかけた。

「くっ、護衛される側に回るか。魔力の小さな能無し君」

 騎士が剣の柄で斧男の背中を小突いて笑った。

「まだ、戦えるっ!俺は、俺はっ!」

 斧男は、ファーズの方へ向かわずに再びアネクモに突進した。

 火をまとわせないまま斧を振り上げ、アネクモの関節を狙う。しかし、関節に命中したであろう斧ははじかれてしまった。火がないと、弱いはずの関節も硬くて歯が立たない。

「くそっ!」

 アネクモが足を振り上げ、斧男を弾き飛ばした。

 倒れた男のもとに、アネクモは駆け寄り先のとがった足を振り下ろす。串刺しにされる!

「来いって言ってるだろう!【火】炎剣」

 ファーズさんが男の前に立ち、振り下ろされた足を切り落とす。そしてそのまま男の腕を取って立ち上がらせるとアネクモから距離を取った。

「あはははっ。護衛対象に守られてるぜ」

「なっさけねー、みっともねー」

 距離を取ったまま戦わない騎士服の男たちは笑っている。

 10名ほどの庶民がアネクモに向かってはいるけれど、なかなか踏み込めないでいる。騎士服の男はわずか2名、火をまとわせた剣で足を切り落とそうと必死になっていた。

 ファーズに連れられ、先ほど倒された1匹目のアネクモのところへ斧男は来ていた。

「糸だ。アネクモの糸」

 ファーズがアネクモの糸を引っ張り出し男の斧に巻き付けだした。

「ふっ。さすがファーズ!」

 ルークが楽しそうに笑い、再びどっしり腰かけた。

「【火】頼んだぞ、たよりにしている」

 ファーズが、斧に巻き付けたアネクモの糸に火をつけると、男の背をばんっと叩いた。

 炎をまとった斧。

「うおーっ!」

 男が再びアネクモに向かって突進した。

「魔力が尽きたって、まだ戦えるんだぁーっ!火戦斧!」



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