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レイナ姫とファーズ

「うわーっ、ファーズすごいじゃない!水魔法上達してる!」

 レイナさんの言葉に、ルークも私も目が点になる。え?上達?

「うっ、うるせーっ!」

「だって、子供のころは2滴しか出なかったのに、3滴も出たよ?」

 レイナさんの言葉にファーズさんが眉根を寄せてそっぽを向いた。

「まぁこんな感じ。ファーズは6魔法すべて使えて魔欠落はないけれど、火魔法以外はまるっきり役に立たないレベルなのよ。ゴマ粒のような光魔法に、髪の毛2本揺らす風魔法、かゆいのが収まる程度の回復魔法、爪の垢が入る収納魔法」

 レイナの言葉にファーズさんが反論する。

「爪の垢って、もっと別のたとえがあるだろう!小さな宝石くらいは入る!」

「だっ、誰にあげる宝石を入れてるの?」

 ファーズの反論に、レイナさんが焦った声を出した。

 やっぱり、この感じ……。レイナさんってファーズさんのこと好きなのかな?

「何にも入れてないよ、魔力の無駄遣いだからな」

「あ、そう、そうなの。そうだったわね、効果は小さいくせに、やたらと魔力を消費するんだった……」

 レイナさんがホッとした顔をしている。分かりやすい。これは……明らかにファーズさんのこと好きみたいだ。確信。

「不便じゃないの?火魔法以外がそれで」

 ルークがファーズさんに質問をぶつける。

 ファーズさんは少しだけ困った顔をした。正直に言うべきかどうか迷ったように見える。

「全然問題ないわよ!ファーズの分も私が水を出すし、光を照らすし、収納もしてあげる。回復もするし声も届けるから!」

 即答したのは、レイナさんだった。

「その代わり、ファーズが強力な火魔法で私を守ってくれるのよ。二人いれば、何も不便なんてないわ!ね!」

 にっこり有無を言わせぬ顔をするレイナさん。

「まぁ、そうだな。小さいころはずいぶんレイナに助けてもらった。喉が渇いても1滴2滴の水じゃぁとても足りなかったからな。人は、一人で生きているわけじゃないから。足りないところを助け合いながら生活していればそれほど不便ではないよ」

「そう、私達二人でいれば何も不便なんてないのよっ!」

 レイナさんが、ファーズの腕に手を回して笑った。

「二人は、どういう関係?」

 あ、ルークは遠慮なく聞きにくい質問を……!

 どうみても、レイナさんがファーズさんにぞっこんだけど、ファーズさんは気が付いていない、もしくは相手にしてない感じじゃないかっ!

「姫と護衛騎士だ」

「ファーズは乳母の息子で幼馴染」

 二人の声がかぶった。

 あー、主従関係があるけれど、幼馴染として小さいころから仲良く育ったのでこんなに砕けた感じなのか。

 身分の差があるから、ファーズさんはレイナさんを恋愛対象としてみないようにしているのか、それとも妹みたいに思っているのか……。

 まさか!国を捨てたというのは、ファーズさんのため?

 昔、母様に教えてもらった恋物語みたいだ!

「やっぱりな。すごい勢いで姫さんが走ってったんだ……ファーズ隊長しかないよなぁ。おかえりなさい」

 突然、後方で会話が聞こえて振り返る。青い騎士のような服装をした男がいた。

「何か変わりはないか?」

 隊長と呼ばれ、ファーズさんが返事をした。えっと……。

 レイナさんがお姫様で、ファーズさんが護衛騎士の隊長ってこと?ということは、この人も護衛騎士ってことよね?

 あれ?駆け落ち的なものではないのか……。

「青い隊服……ガルパ王国?」

 ルークがぼそっとつぶやく。

「あれ、隊長、この子たち隠し子ですか?」

「もー、そのネタはいいっ!」

 ゴツンと、ファーズさんの拳が発言主の頭を小突いた。

「いってぇ……」

 頭を抱えながら、騎士がファーズさんの背中に回る。

「皆、ファーズさんが荷物を運んでくるのを待ってたんですよ、早く行きましょう!持ちますよ、荷物……ん?」

 後ろに回った騎士が、空っぽの背負子を見て叫び声をあげた。

「うわーっ、荷物がないっ!た、た、た、隊長、荷物は、どうしたんですかぁっ!」

「そういえば、ファーズの背中にはこの子たちが乗っていたのよね」

 レイナさんの言葉に、騎士が膝をついた。

「そっ、そんな……。塩、塩がほしい……。もう、味のない食事はいやだ……」

 膝をついた騎士の肩をファーズさんがぽんっと叩いた。

「安心しろ、イズル、塩は持って来た。それから欲しがっていた鉄板と鉄鍋も持って来たぞ」

 ファーズさんもかなりしっかりした体格をしているが、それよりも二回りくらい大きな体のイズルさんは、どうやら食事に対する情熱が強いらしい。

「本当ですか?重たくて運ぶの大変だったんじゃないですか?で、どこに?どこにあるんです?」

「あー、もう、うるさい。イズル、到着を皆に知らせてくれ。村長の家でそれぞれ必要なものを配るから。おまえの塩もその時だ」

「はいっ」

 集落のある方へと足を進める。

 崖の上から見えたあばら家は、近くで見ても貧しいものだった。木や草や蔓で汲み上げられた家。雨風は凌げそうだけれど、強い風がふいたら飛んでいきそうだ。


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