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【書籍化】魔欠落者の収納魔法~フェンリルが住み着きました~【web版】  作者: 富士とまと


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125/128

 あのすさまじい爆発でもまだ飛び上がれるなんて……!

 当たりは火の海だ。爆発は収まったけれど、炎はあたりに漂っていたガスを次々と燃やして広がっていく。

 ブルーはどこ?見えない、見えない!

「「「【水】」」」

 突然、大量の水が火の海をかき消した。

「カイル!」

 テラの声に振り返れば、カイルと、青い布をつけた人が2人立っていた。

「なぜここに?避難は?」

 テラの言葉にカイルがふっと笑う。

「もう、僕にとってここは大切な故郷だからね。守るのは当然だよ」

 あっという間に水魔法で火が消えた。

「【風】」

 残った煙を、カイルさんは風魔法で吹き飛ばす。

「【回復】」

「【回復】」

 全身真っ黒になったブルーが横たわっていた。

 そんな……。

 ルークやテラたちが必死に回復魔法をかけてくれている。だけど、ブルーは動きを見せない。

 まさか?

「や、やだよ……ブルー……やだよ……」

 高く飛び上がっていたドラゴンが降りてきた。

「ちっ打つ手なしか!」

 ルークの言葉に、神官の一人が口を開いた。

「そうでもないみたいですよ。もう、飛べないらしい」

 下降してきたのではない、共ぐらいのドラゴンは、落下してきたのだ。

 地面にたたきつけられると、苦しそうにのたうち回りだした。

「あれ、息を吐くたびに、口から火が出ている」

 テラがドラゴンを指さした。

「本当だ……、体の中でガスが燃え続けているのか……内部からドラゴンは焼かれている」

 ルークが地面を転がり続けるドラゴンを見た。

「ブルーっ!」

 ドラゴンの注意がこちらに向いてないなら!

 ブルーに向かって駆けだした。

 途中、ぬかるんだ地面に足を取られて何度も転ぶ。

 服は泥だらけ、きっと顔も手も泥まみれだ。

「【回復】」

 転んでぶつけた足や手は、誰かの回復魔法ですぐに痛みは引いた。

「ブルー!」

 泥だらけの手を、ブルーの真っ黒になってしまった鼻先に伸ばす。

「ぶはーっ!」

「きゃっ!」

 ブルーの勢いよく吐き出された鼻息に、吹き飛ばされしりもちをつく。

「ブルー!」

 しりもちをついたまま、ブルーの顔を見上げる。

「主よ、泥だらけではないか?」

「よかった……生きて……生きてた……」

「当たり前だ。我はあれくらいの炎では死なぬ。ただ毒ガスとともに火を吸い込むとまずいからな。息を止めていただけだ。耳も塞いでいた」

 ブルーの寝ていた耳がピーンと立った。

 自分でふさいだりできるんだ……。

「なんだ、息を止めてただけか!びっくりした。回復魔法が聞かないかと思ったよ」

 ルークが来た。

「坊主。回復魔法はしっかり効いておるぞ。体は何ともない」

 ブルーが立ち上がった。

「しっかりか……それは治せなかったけど……」

 ルークが、失われたブルーの前足を沈痛な面持ちで見た。

「ああ、大丈夫だ。1年もすればまた生えてくるだろう」

「「え?」」

 私とルークの声が重なる。

「生えて、くるんだ……」

「よかった。よかったぁ、ブルーっ!」

 ブルーの残った前足にしがみつく。

 顔は、泥と涙と、そしてブルーから移った煤でぐちゃぐちゃだ。

「あーあ、二人とも汚いなぁ、頼める?」

 ルークが振り返ると、カインが頷いた。

「【水】」

 雨のように優しく水が降ってくる。

 ブルーの体をこすると、黒いすすが落ちて、綺麗な青い毛が見えた。

「手伝うよ!」

 テラが一緒にブルーの煤をきれいにしてくれる。

「あ、そういえばドラゴンは?」

 振り返るとドラゴンは動きを止めていた。神官の一人が手を振っている。

「息はありません」

 その言葉に、皆一斉に歓喜の声を上げた。

「やった!」

「やったぞ!」

「すごいよ、ブルー!やっぱりブルーは強いよ!ありがとう!」

 ぎゅっとブルーの足にしがみつく。

「主、我の力ではない。我一人では悔しいが共ぐらいのドラゴンには勝てなかった……」

「でも、ブルー殿がいなければ勝てなかった」

 ロンさんがブルーの背中の煤を洗いながら言った。

「そうですよ。ブルーがいなければ、今頃みんな死んでたよ。ありがとう」

 テラがお礼を述べる。


ご覧いただきありがとうございます。


宣伝を一つさせてください。


9月14日に「魔欠落者の収納魔法~フェンリルが住み着きました~」2巻が発売となります。

よろしくお願いいたします。

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