助け
戦闘シーンに流血描写がございます。苦手な方はご注意ください。
「ごめんね、ごめんね、ブルー。私が、ドラゴンの相手を頼まなければ……。何で私、さっきはドラゴンじゃなくてブルーを収納しなかったんだろう」
ドラゴンが目の前に迫っていた。
「主、早く逃げろ。主の仲間の者たちよ、主を連れていけ。もう魔法はいらぬ……痛みが引いた。もう大丈夫だ」
嘘だ、大丈夫なわけないっ!
このままじゃブルーは……ドラゴンに……。
「いやぁーーーっ!」
ドラゴンが、ブルーに再び噛みつこうと大きく口を開いた。
「ギャギグゴォ」
!
ドラゴンが声を上げて飛び上がる。
開いた口から矢がいくつも見えた。
「【回復】」
瞬時に苦しみが消える。
ああ、魔力が回復したんだ。
「エイル、また無茶を……。エイルが死んだら僕は許さないから!」
「ルーク」
声のした方に目を向ければ、白髪の弓使いのロンさんとルークが立っていた。
ドラゴンに突き刺さった矢は彼が。
「あぶないっ!」
テラの叫び。
ドラゴンがブルーではなく矢を放ったロンさんへと標的を変えて下降してきた。
「【収納】」
「エイル、大丈夫なの?」
ドラゴンを収納した私にテラが心配そうに声をかける。
「ルークが来たから大丈夫……、ルーク、ブルーをお願い」
「ああ【回復】」
テラもルークに続いて再びブルーに回復魔法をかける。神官二人も。4人の回復魔法のおかげで、片足を失ったもののブルーはいつものように立ち上がった。
「主、いつまでもドラゴンを収納できぬのであろう、今度こそ我が奴を遠くへとおびき寄せる」
やだ!
遠くにおびき寄せて、それからどうするの?
ブルー、私の知らない場所で、ブルーがドラゴンに殺されちゃうなんて、やだよ……。
「【回復】」
ルークがテラと神官に回復魔法をかける。
「あ、ああ、すまない。だが、回復魔法なら自分で」
「僕の回復魔法は、魔力も回復できる。つまり、ブルーが傷ついたって、何度だって今みたいに回復してあげることができるってこと」
ルークがにっと笑う。
「ブルー、ドラゴンに少しずつでも傷を負わせることはできる?」
ブルーの代わりに私が答えた。
「できるよ、ブルーは強いもんっ!羽根がかけてるのだって、ブルーがやったんだよ!」
ルークが頷いた。
「だったら、少しずつでもドラゴンの力をそげば勝てるんじゃない?無限にブルーは回復できるんだからさ」
ブルーが首を横に振った。
「主を、主の友を危険に合わせるわけにはいかぬ」
ルークが首を横に振る。
「僕だってエイルを危険にさらしたくないよ。でもブルー、きっとブルーがいなくなったあと、ドラゴンはまた来るよ?そして僕たち人間にはドラゴンを倒す力はない。それともブルーはエイルを護るって言っておきながら、何度も痛い思いするのはいやだから逃げるの?」
ルークの挑発したような言葉に、ブルーがドンっと地を踏んだ。
「覚えておけ、痛みよりも辛い飢餓があるということを」
うぐぅっ、またドラゴンが収納のなかで暴れて魔力がつきそうになる。
「【取出】」
少し距離を取ってドラゴンを取り出す。
私たち人間は、建物の影へと避難した。
「我、復活。さぁ、続けよう。共ぐらいのドラゴン」
ブルーが飛び上がり、ドラゴンの尾に噛みつく。
ドラゴンはブルーを振り落とそうと尾を激しく左右に振った。
食いついたまま離れないドラゴンは地に降り立ち尾を振り上げブルーを地にたたきつけた。
「ブルーっ!」
「【回復】」
すぐに回復魔法が唱えられる。
ブルーは残った前足でドラゴンの尾を押さえつけ、噛みついたところから食いちぎった。
「ギャオゥヴォ」
ドラゴンがすぐに飛び上がる。
そうか……ドラゴンは飛べるから。ブルーは不利なんだ。空中に飛び上がられると……。
たたたーんと、矢が飛び、ブルーが食いちぎり肉がむき出しになっている尾に突き刺さる。
動き回るドラゴン相手にも、矢を正確に撃ち抜くことができるロンさんはすごい。
ドラゴンの目には、矢を放ったロンさんの姿が映り、怒りに突進してくる。
地面に近づいたところでブルーがドラゴンの右羽根の上に乗り、後ろ脚で切り裂く。
すぐにドラゴンは首を曲げ、ブルーの首に噛みついた。
ああ!このまま首をかみちぎられたらいくらなんでも……。
「「「「【回復】」」」」
皆が同時に回復魔法を唱えている。そうだ!魔法!
「【収納】」
ドラゴンを収納する。
ブルーが回復したことを確認してからドラゴンを取り出す。
ドラゴンが高くに飛び上がったらロンさんが気を引き、ブルーの攻撃が届く範囲に降下させて少しずつドラゴンの力をそいでいく。
共ぐらいのドラゴンは狂っているとブルーは言っていた。
ロンさんの挑発に策もなく何度も引っかかっている。
これなら、ドラゴンをやっつけられる!
そう思った時だった。




