ドラゴンVSブルー
*戦闘描写において流血その他苦手な方には痛い描写が含まれます。ご注意ください。
「エイルどこへ?」
「ブルーのところへ」
テラに答えて、すぐに街道の方向へと走る。
どうなっているのだろう。向こうの空を見ても、ドラゴンが飛んでいるのが見えない。
ブルーが飛び上がる姿も見えない。
どこか街から離れたところで戦っているのだろうか。
教会の建物のあったところへたどり着く。崩れたがれきを収納でどかすと、街道が見えた。
「!」
そ、そんなっ!嘘だ!
横たわるブルーの前足をドラゴンが食いちぎっていた。
し……死んだの?
ブルーのきれいな青い毛が、真っ赤な血で汚れている。
ブルーのきれいなピンクの気は全く見えない……。
「やめてーっ!」
ブルー!
私が、私が……私のせいで!
「主、我もまだまだだったようだ……」
「ブルーっ!」
ブルーがこちらを向いた。
生きてる!生きてる!
「主、逃げろ……主を護ると言う約束……守れそうにな……」
「やだ、やだ、ブルー、死なないで」
私と言葉を交わしているブルーの前足を食らいつくし、ドラゴンはブルーの後ろ足に食らいついた。
「我は死ぬが、我の記憶は次代に引き継がれる……そう……悲しむ……な」
「【収納】」
死なせない!死なせない!
ドラゴンを収納する。
これ以上ブルーにひどいことなんてさせない!
「エイルっ!これは?」
「テラ……」
テラが後ろに立っていた。
「ブルーは、ドラゴンから街を護って戦ってくれていたの」
両目から涙が落ちる。ブルーに駆け寄る。
「主よ……早く、逃げるよ……ドラゴンは、我を食らいつくすまでここに留まる、その間に……遠くへ……」
「ほ、本当に、私たちのために……?」
テラが震える手でブルーに触れた。
「【回復】……だめね、私の魔法じゃほんの少ししか癒してあげられない。【回復】【回復】」
「テラ、ありがとう、テラ……」
ブルー、お願い、死なないで!
「娘は、主の仲間か……主と同じ温かい魔法を使う……」
「【回復】【回復】ああ、これだけ魔法をかけて、やっと前足の血が止まった……温かいって言ってもらえたのに、これくらいしかできなくて……」
テラが必死に回復魔法を繰り返してくれた。
「私たちも手伝おう【回復】」
「【回復】焼け石に水かもしれないがな」
あ……。
第五鉱山で助けた神官がいた。
「ありがとう、ありがとう、ブルー、皆ね、ブルーを助けようとしてくれて……うぐぅっ」
な、なにこれ。
「く、くるし……」
「どうしたのエイル!【回復】」
苦しい、苦しい、苦しい……。
収納魔法の中で……ドラゴンが暴れているの?
魔力が吸い取られるような感覚……壊れた収納修復するために魔力が使われている?
まさか、収納魔法の内側を食い破って出てくる?
ああ、だめだ!魔力がっ尽きる!
「【取出】」
なるべく遠くにドラゴンを取り出す。
「はぁ、はぁ……」
体の奥が冷たい。
今まで魔力が尽きるなんてことがなかったけれど……魔力が尽きたらこんな感じなの?
「エイル、大丈夫?私の魔法きかない?【回復】」
テラが心配そうに私の背をさすってくれる。
「これは、大量の魔力を一度に使った時に起きるやつだろう。魔力が足りなくて生命力を削ってしまうことがまれにあると聞く……。神父の間でも時々患者を助けたいあまり無理をして魔力を絞り出してこうなる者が出ると聞いたことがある」
神官の一人が私の様子を見てそう言った。
「大丈夫なの?」
テラに神官が答えた。
「ああ。しばらく休んで魔力が回復すればすぐによくなる。お前も気を付けて魔法を使え」
テラはほっとした顔を見せた。
だけど、私はほっとなんてできない。
遠くに取り出したドラゴンは再びブルーに向かって飛んできている。
私……魔力が尽きてしまったんだって……。
目の前でブルーがドラゴンに痛めつけられていても、何もしてあげることもできないなんて……。
「ああ、後ろ脚の血もなんとか止まった。出血は止まったが、我らの回復魔法では……」
神官の言葉にテラが言った。
「少しでも体力が回復されてるなら続けよう」
ありがとうテラ……。ありがとう神官の二人……。
「ブルー……」
ふらりと、ブルーに向かって歩き出す。




