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【書籍化】魔欠落者の収納魔法~フェンリルが住み着きました~【web版】  作者: 富士とまと


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第五鉱山へ

「変ね?命を落とすのは神の思し召しなんですって。一人や二人の犠牲など構うものかと、坑道に入った神官のことは言っていたけれど、あなたたちは特別なの?」

 助ける神官と助けない神官がいるのだろうか?何を基準にして?

「なっ!」

 神官の一人が青ざめた。

「ああ、それから、ヴィドルクも私に助けを求めたから、助けてあげたので、穢れていると思うわ。神殿での発言力がどうなるのか私には分からないけれど……」

 階段を急いで上がる。ジョセフィーヌ様はすでにずいぶん先まで進んでいた。

「待ってくれ!」

 声が聞こえてきた。

 今しばらくはあのままでいてもらおう。隠し通路のことが神殿側にばれない方がいいだろうから。

 載っている鉱石は、大人が数人集まればどかせるだろう。私じゃなくても。将軍が兵を使って必要にお応じて対応してくれるはずだ。

 1階に出るとすぐに風魔法の声がいくつも耳に飛び込んできた。

「魔特化者は城へ戻れ」

「兵は国民の安全を脅かす者は排除せよ」

「動けない者は声を、助けに行く」

「何が起きているのか教えてほしい」

「揺れは収まったのに避難が必要なの?」

 城の1階大広間にはすでにたくさんの人間が避難してきている。

「通路の安全が確認されたら順に案内する。落ち着いてここで待機していてくれ」

 宰相が落ち着くように声をかける。

「助けてくれ!第五鉱山の中にいる!坑道が崩れてふさがれ通れない!」

 飛び交う声に助けを求める声が聞こえてきた。

 第五鉱山……!ヴィドルクに言われてはいっていったあの人たちだ!

「【風】今救援隊を向かわせる、状況を説明してくれ」

 将軍の言葉に他の声がやむ。

「大地が揺れたことで坑道が次々と崩落し、我々は散り散りに逃げた。何か所も大きな岩がふさいでいる隙間からどうなっているのかのぞくのがやっとでとても人が通れない。場所は赤の4番あたりから奥」

 広間に集まった人が息をのむのが聞こえた。

「かなり奥じゃないか……」

「大きな岩を一つどかすだけでも大変な作業だ、それがいくつもとなると……どれだけかかるか」

 私なら!

 大きな岩だろうが、収納してしまえば呪文一つだ。

 再び声が届いた。

「毒ガスがひどい。それから……怪我をして意識がない者もいる」

 毒ガス……私一人じゃ、無理だ……。怪我も私には治してあげられない。

 将軍が自分の頭をガツンと叩いた。

「畜生っ!毒ガスかっ!濃度が濃くなれば岩を砕くときの火花で爆発する恐れもある!どうしたらいい……」

 宰相が将軍に声をかける。

「落ち着きなさい。やれるだけのことをやるだけですよ」

「落ち着いていられるわけないだろう、一刻を争う!」

 やれるだけのことをやる……!

「ジョセフィーヌ様っ!こちらにっ!」

 ジョセフィーヌ様の手を引いて2階へ上がる。

「【取出】」

 空いているところに、治療院の人たちをベッドごと取り出していく。

 ぎっちりといくつかの部屋が埋まった。

「エイル……どういうことじゃ」

「本当は、私が収納したまま隠し通路を通っていければいいんだろうけれど……みんなをお願いします。私、第五鉱山へ行ってきます!」

 ぴょこんと頭を下げて駆けだそうとしたら、後ろから手を掴まれた。

「待ちや、エイル」

 振り返ると、ふわりとジョセフィーヌ様の体が私の身を包んだ。

「死ぬでないぞ、決して死ぬでない……妾は……人が死ぬのを見とうないのじゃ。たくさんの者たちが鉱山で命を落としてきた。教会に神父がいないことで失わなくてもよい命が失われていくのを見てきた。もうたくさんじゃ」

 人が一人二人死のうが知ったことではないというヴィドルク。

 なんて、違うんだろう。

「エイル、すまぬが頼んだぞ。だが、無理をするのではないぞ」

 はいと、深く頷く。

 2階から1階へ降り、城の外へ出る。

「エイル、第五鉱山の人たちを助けに行くんでしょ?僕も行くよ!」

「テラ?」

 テラが私の後を追って来た。

 そういえば、治療院の人たちと一緒に取り出したんだ。

「エイル、テラ、第一鉱山に二人とも姿が見えないから心配した。無事だったんだ」

 ハーグ君がかけてきた。

「さっきの話、第五鉱山の人たちを助けるって?」

 カイルさんも来た。

「さっきの声は僕たちも聞いていた。魔特化者で話をしたんだ。僕たちの力が必要なら手伝おうって」

「カイルさん……」

 カイルさんとハーグ君の後ろに立っていた多くの魔特化者の目がこちらを向いている。

「毒ガスがひどいなら、僕たち風魔特化者が外の空気を送り込まないといけない。通り道がいくらふさがれていても、隙間から風は通るはずだ」

 カイルさんの言葉に、緑の布をつけた者たちが一歩前に出た。

「光魔法だっているだろう?手探りでなんて行けやしないんだから!」

 ハーグ君が人差し指で鼻の下をこすった。

「ありがとうみんな……あの、でも……」

 迷ってる暇なんてない。

「秘密の地下通路を通って皆が避難します。通路もくらいはずなので光魔特化者の皆さんの力が必要だと思います。それから、避難先の食糧など収魔特化者に運んでもらわないと行けなうものもあります。回魔特化者の皆さんも、避難中に具合が悪くなる人たちのためにお願いします。だから……」

 言葉を切ってから、鉱石の山を取り出した。

「坑道を塞いだ岩を取り除くのは私の収納魔法で十分です。回復魔法はテラ、光魔法はハーグくん、あと水魔法に一人と連絡用の風魔法が使える人を一人第五鉱山にお願いします。それから風特化者の皆さんには、鉱山の外から風を送り込むのをお願いします」

「わかった。水と風なら僕が使える。急ごう!」

 カイン君に緑の布の男が一人話かけた。

「あれ?おまえ水魔法も使えたの?」

「ああ、まぁ一応。風魔法ほどじゃないけどな。って、いいから急ごう!」


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