93話 職人ギルドに相談だ!
アンノウンと言う男を捕らえて地下牢に入れた後、カサードは自分の部屋に戻り、一人考えていた。
眠らせた後に牢屋に運ぼうと、掴んだ時の腕の細さ、担いだ時の躰の軽さは普通じゃない事。
地下牢で下ろし、仮面を外してみると痩せこけた顔をしていた事。
総合的に考えて、このアンノウンという男はこんな細い躰でどうやって動いていたのだろうか?
AR画面で、謁見室での戦闘の映像を、何回も繰り返し見て、その謎を解明しようとしていた。
「ん~……マナがどーとか言ってたなぁ。マナ解析モードでちょっと見てみよう……、おっ! 歩くときにマナの密度が手や足に集中してるな、という事は……」
アンノウンの真似をして、どんな感じになるのか実証実験してみるカサード。
カサードは、マナの密度が足に集中するようにイメージ、陸上選手が練習時にするような腿揚げをすると、ズパパパパパパッと足が高速に動く。
「うっは?! これは100m9秒台で走れそう!」
次に、上半身にマナが集中するようにし、シャドーボクシング的な動きを真似てみる。
ボッ! ボボボボッ!
空気を切る音が部屋に響く。
「おおぉ~!? なるほどなるほど。身体能力の強化みたいな感じなのか」
実証実験の結果に、どうしてそうなるかの原理は解らないが、とりあえず納得した。
「とりあえず、あの男が住んでいた国の事や国の食料事情とか、他に仲間が居ないか等を自白させるしかないかなぁ?」
カサードは腕を組み、二の腕を指でとんとんしながら独り言を呟く。
「とりあえず、情報を引き出すまでは彼奴を死なせるわけにはいかないなぁ。う~ん……、あの手で行くか」
何か思いついた様で、カサードはニヤリとほくそ笑む。
とりあえず、カサードは地下牢に行き、捕まえたアンノウンの目の傷の応急処置をしておくように、地下牢の見張り兵に伝達しておいた。
「う~ん、スペシャルな尋問室でも作ろうかな」
カサードは自分の執務室で〝スペシャルな尋問室〟の設計図を引いている。
数日後、その設計図を持って職人ギルドを訪れた。
「ギルド長! 居ますか~? カサードです! けほっ」
ここ職人ギルドは、商人ギルドとは違い、見栄えが悪くて少し薄暗くて埃っぽいので、カサードは少し咳込む。
「おぅ! カサードのボウズか! 儂に何か用か?!」
ボクの声に対し、豪胆な声で返事をしてくれる、この職人ギルドの大親方はシルバードワーフと言う種族で、手が先の器用さ・頭の回転・腕力が、普通のドワーフよりもその能力が高いと言われている。
「ちょっとこの設計図で、早急に建てて欲しいんだけど。建てるのに何日かかります?」
そう言ってカサードは、シルバードワーフの大親方に設計図を見せる。
「ほぅ? どれ、ちょっくら見せてくれ」
大親方はカサードから設計図を受け取り、ランタンが置いてある机にガサガサと広げて見ている。
「……なぁ、ボウズ。尋問室なのに何故、竈があるんだ? 尋問相手に熱湯でもぶっかけて拷問でもするんじゃないだろうな?」
「うへぇ……ボクはそんな酷い事はしないです……というか、そんな発想が出来る大親方の方が凄いと思っちゃった」
「なぁに、この国に来る十数年前にな、そういう拷問を受けた事があってな……っと、ボウズはこんな話は嫌みたいだな、顔に出てるぞ。」
眉を顰めて引いているカサードの姿を見た大親方は、空気を読んで口を噤んだ。
「ふむ……で、これをどこに建てるんだ? 地下に造るんだったら相当の月日がかかるぞ」
「う~ん……そういえば、どこに造るとかまでは考えてなかった……」
「ガッハッハ! 建てる場所が決まったら、またここに来い! 儂らは資材の準備して待ってるぞぃ!」
落ち込むカサードを、大親方が背中を軽く叩いて励ます。
「解った! 場所が決まったら報告しに来ます! 相談に乗ってくれてありがとうございます!」
ペコリと大親方に頭を下げて、カサードは王宮へと戻った。




