84話 汚い店の謎
カサードは飲み屋街をぶらつきながら、空いてそうな店を探す。
あちこち眺めながら歩いていると、一軒だけ誰もお客が居ない店を見つけた。
「ん? この店は満席だからかな?」
気になり店を覗くが、満席では無く誰も座ってなく、閑古鳥が鳴いていた。
「おっ? 誰も居ないな。丁度いいや、この店にしよう」
カサードは、ドアを開けて店内に入ると、カランカランとドアベルが鳴る。
「おや……? らっしゃい。今月初めてのお客だぁ」
奥から白髪まじりの爺さんが出てくる。
「お爺さん、何かオススメの物を頼む」
「はいよぉ」
カサードは注文して料理が出てくるまで、暫く店内を眺めまわす。
天井の隅には蜘蛛の巣が張ってあったり、テーブルの上には埃が薄く積もっていたりしていた。
爺さんが奥に引っ込んだ時に、アイテムBOXからタオルを取り出し、水魔法でタオルを濡らしてテーブルを拭く。
『う~ん……掃除が行き届いてない……これじゃぁお客が入らない筈だよ……』
カサードは、フェアリー(ドローン)を召喚し、店主と思われる爺さんが奥の調理場で、どのような仕事をしているかを覗く事にした。
腕を組んで、フェアリーから送られてくる映像を眺めていると、とんでもない現場を見た。
爺さんがペッペッ! と両手に唾をかけて擦り合わせ、素手で材料を触って調理し始めた。
「ちょ……おいおい、ボクにそんな過程で作ったものを食べろと?! 結構不衛生な店だなぁ……」
などと、カサードは不快に思いながら、フェアリー(ドローン)を撤収し、どんな料理が出てくるかを待つことにした。
「はいよ」
奥から爺さんが料理を持ってきて、カサードのテーブルに置く。
「おっ、豚肉ステーキか……。いただきます」
カサードは合掌し、ナイフで肉を切り分け、切り分けた肉をフォークで差して口元に持っていく。
「あー……ん?」
食べようとした肉片よく見ると、切った断面の殆どが赤い。
どうやら表面だけを焼いて出してきたようだ。
「う~ん、ちょっと爺さん。生焼けじゃない? この豚肉ステーキ」
「何を言っている! ワシはちゃんと焼いたぞ! こう見えても昔は名を馳せた調理人だったんだ! ボウズ! わしの作った料理にケチをつけるのか!」
カサードが、今食べようとした肉があまり焼けてない事を言うと、爺さんが急にキレてカサードに詰め寄り、怒鳴り始めた。
「まぁまぁ、爺さん落ち着いてください」
カサードは、頭に血が上っている爺さんを落ち着かせようと宥める……。
「ワシがこの店のルールじゃ! お前は気に入らん! 出て行け!」
カサードの宥め工作は失敗、取り付く島も無いので、黙って店を出ようとすると。
「おい待て! 頼んだ物のお代を払わないつもりか! 食い逃げだ! だれかー!」
「ふぁ?!」
出てけと言われて、出ようとすると食い逃げだと叫ばれる……どうしろと?
困り果てたカサードは、とりあえず払う事にした。
「あー……お勘定はどのくらいで?」
「ふん! 金貨3枚じゃ!」
「ぴゃー?!」
ぼったくりじゃん! ぐぬぬこんにゃろめ……後で意趣返ししてしんぜよう。
カサードは料理を食べて無いけど、誰もいないと思ってぼったくり店に入った自分が悪かったと思い、金貨3枚を爺さん支払って店を出る。
「うがー、何も食べてないのにお金取られたー。しゃーない、他の店で食べるかな」
ぐぅぅと鳴るお腹をさすりながら、カサードは再び飲み屋街をぶらついた後、美味しいお店にありつけた様だ。
後日談だが……。
翌日、エタンダール国ギルド長のフーシェー・イェンと共に、昨夜の店に行くと綺麗に拭いたテーブルの上に干からびた肉の載った皿があった。
カサードとイェンが顔を見合わせ奥の厨房を見てみると、白骨化した遺体の手元に3枚の金貨があった。
その光景を見て、カサードとイェンの2人は、逃げ出す様に店から出たのであった。
さらに後日、空き家にあった白骨遺体は、カサード達によって丁寧に弔われたのでした。




