閑話 実験体と称される女性 (後編)
外に出て暴れ続けようと扉を殴り続ける実験体に対し、黒ずくめの男が遠距離からなにやら呪文を唱える。
「う……うがぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」
巨大化した女性が頭を抱えもがき苦しんだ挙句に、うずくまって動かなくなる。
黒ずくめの男が暫くの間呪文を唱えていると、巨大化した女性が縮んでいき、血溜りの中でぐったりと倒れ込んだ。
倒れて動かなくなった女性に、黒ずくめの男たちが近づき両手に手鎖を付けようと手を伸ばす――。
「な……なんだこりゃ?!」
地面から蔦が急速に生えてきて、黒ずくめの男達に絡みつく、男達は絡みつく蔦を引きちぎるが、絡みつく蔦の方が早く、男達は身動きができなくなった。
そこへ大きな鳥が、倒れている女性を上空からかっさらった。
「あっ?! 実験体がさらわれたぞ! あのでかい鳥を追え! 俺たちのことはいい! 早く追え! クッソ! 誰の仕業だこれは?!」
蔦に絡まれて身動きが取れない黒ずくめの男たちの背後に、スッと現れたのは精霊王のオベロンだ。
「あぁ、間に合わなかったね……、近くの村に住んでいるボロワーズ達の頼みで来たのだが、村人はみんな殺されてしまってるね……。でも彼女だけは救い出せたな。鳥は害が及ばない彼の国まで運んでくれるだろう」
オベロンはそう呟く、そんな彼の上をドラゴンの群れが巨鳥を追うように飛んでいく。
彼女が、パヨティーン国が作り出した人造兵器だとも知らずに、巨鳥はエタンダール国に向かって飛んでいく……。




