82話 戻ったら大変な事になってきた
「ったく……街を燃やすとか信じられねーよなぁ、あんな野蛮な連中にホイホイと街を案内出来るわけないだろ……」
カサードは愚痴を言いながらエタンダール国に高速移動している。
少し時間を遡る……。
見張り塔の警備兵達が、カサードの開発した双眼鏡と言う魔道具で、戦闘の一部始終を見ていた。
「すげぇ……あの白い奴がドラゴンの群れをあっと言う間に倒しちまった……おい、ちょっと抓ってみてくれ」
警備兵の一人が夢じゃないかと思い、仲間に抓ってみてくれと言い出した。
「そうだな……お互いに抓るか……せーのっ!」
「「…痛てぇ!!! 夢じゃない!!!」」
兵士二人が再び双眼鏡を覗くと、ドラゴンの群れを倒した白い奴は何かの魔法で、倒したドラゴンの死体を焼却している様だ。
その後、凄い煙が立った。
「おい! 白い奴がこっちに向かってくるぞ! 総員戦闘準備!」
「なぁ、ちょっと待てよ。あの白い奴って城下町の中心部辺りから飛んでってドラゴンを倒したんだよな? だったら味方じゃね?」
「お……おぅ……」
そんな会話をしている間に、白い奴は見張り塔の警備兵達の上を通って城の方に向かっていった。
「おい、城の方へ行ったぞ?! どうすんだよ?!」
「そんな事俺に聞くなよ! 後で城に居る警備兵に聞くしかねぇだろ……」
カサード視点に戻る。
「とりあえず、空からの襲撃に備えて訓練方法を何か考えなきゃなぁ……」
等と呟きながら、自分の部屋のベランダに着地する。
「ん……この姿のままじゃ、ちょっとマズイから変身の解除するか」
ARを操作して返信を解除すると、カサードが光に包まれグググッと小さくなり元の姿に戻る。
「ん~……とりあえず警戒態勢は解いて~……うんとー、警備の方針の会議で防空警備の強化を進言するかな……他にはあれもこれも必要かなぁ……あっ、第二波が来るかもしれないから警戒態勢はこのままで……いいのかは警備大隊長に聞いてみなきゃ解らないか……」
元の姿に戻ったカサードは、管轄外だが今後の防衛体勢について色々と考え始めた。
「ん?! そういえば奴等が実験体とか言ってなかったか? もしかしたら、倒れていた女性か大きな鳥のどっちが実験体なのかを、彼女から聞き出さなきゃいかんな……うわぁ~、どれを先にしよう」
やる事が多すぎてどれを優先しようか頭を抱え始める。
その時、やや乱暴にドアが開く。
「カサード様! ドラゴンが数匹、コチラにやってきてます! お逃げください!」
シャロミーがボクに逃げろと言ってくる。
う~ん、「実はボクが変身して倒しました~」とか言っても、信じてくれなそうな気がしたので、シャロミーの言う事を聞いて避難する事にした。
『ん? 待てよ? ボクが召喚した使い魔でドラゴンの群れを撃退したって事にすればいいんじゃね?』
シャロミーの後について非難する道中で、そんなことを考えていた。
だが、そんな考えも杞憂に終わる。
「シャロミーさん、カサード殿下、ドラゴンの群れは撃退された様です」
シャロミーと一緒に非難する途中で出会った警備兵にそんな報告があった。
「お……おぅ……」
「え? 誰がドラゴンの群れを倒したのですか?! 武勲章物です! 直ぐに倒したものを探し出して!」
シャロミーが、若干混乱気味に報告した警備兵の肩を揺さぶりながら問い詰める。
「け……警備塔の兵からの連絡によれば、白い髪の亜人らしき女性がドラゴンの群れを撃退したそうです」
警備兵の報告にシャロミーが目の色を変える。
「その亜人の女性を今すぐ探しなさい!!」
『うわぁ……何かとんでもないことになって来たなぁ……』
カサードはシャロミーの行動に対して冷や汗をかき始める。




