78話 空からトラブルが落ちて来てた
人だかりを掻き分けて広場に出ると、大きな鳥が不時着したのか、グッタリしている。
その大きな鳥から少し離れた所に、だれかが不時着の衝撃で投げ出されたのか、うつ伏せのまま動かない。
「こら! これ以上入るんじゃない!」
大きな鳥のそばに倒れている人物の所に行こうとすると、警備兵に止められた。
「ボクだよ! カサードだ! 解ったら通してくれ」
「あっ! カサード殿下でしたか! 失礼しました!」
警備兵はカサード殿下だったことに気がつき、慌てて敬礼しながら通してくれた。
「おい! だれか医者を呼べ! それと念の為、上空を要警戒だ! 早く!」
ボクは倒れている人物の方に駆けながら叫ぶ。
人だかりを制していた警備兵達は、カサードの指示で即時に動いてくれた。
うつ伏せになっている人物を、ゴロンと転がし仰向けにし、首の動脈部分に指を当て、脈があるかを調べる。
トクントクン……
うん、脈はあるようだ、次は呼吸をしているかを確認する為に、口元に耳を近づける。
スー……スー……
よし! 呼吸も大丈夫、これなら心臓マッサージは要らないな。
等と考えながら色々と調べていると、『カーンカーンカーンカーン……』と鐘の音が警備塔の方から聞こえてきた。
「なんだ?!」
まさかと思い、フェアリー(ドローン)を召喚し、カサードの真上数十メートルまで飛ばし、警鐘の鳴る方角をドローンの望遠機能でカサードの網膜に投影されるAR画面を眺めると、ドラゴンの群れがこちらに向かって飛んで来ている様だった。
「警備兵! 民たちの避難誘導だ! ドラゴンの群れがこちらに向かって来てるぞ! 早くしろ!!」
カサードの言葉を聞いた民たちは、叫びながら逃げ惑い、たちまち街はパニックに包まれる。
警備兵は民たちに、落ち着いて行動するよう呼び掛けながら避難誘導している。
カサードは振り返り、倒れている謎の人物と大きな鳥を見ながら。
「まさか、空からトラブルがやって来るとはなぁ……。人は何とか担いで移動できるが、この大きな鳥は……どうしよう?」
突然の空からの来訪者を眺めながら、カサードは腕を組みながら、自分が出来ることを考える。
「……ん!? そういえば、なんとかケイジってのがあったな。ちょっとやってみっか……っとその前にこの鳥、よく見ると胸に大きな擦り傷があるな……即席治癒魔法で治せるかな?」
AR画面のメニューから魔法スキルを展開し、大きな鳥の擦り傷のある場所に掌を向けて、初級治癒魔法をかけるとジワジワと傷が治療されていく。
「よし、鳥の方の怪我は治した。あとはこの人……を?!」
倒れていた人物の生存確認に気を取られていたが、改めて全体をよく見ると胸が大きい女性だった。
「えっと……どうやっても担ごうかなぁ?」
周りを見渡しても、警備兵達や草民達は緊急避難で手一杯の様で、誰もカサードを見る者は居ない。
「とりあえず煙幕張って『メタモルフォーゼ』能力を使ってみるかな……? ブラインドスモーク!」
カサードは魔法創造スキルで、煙幕を貼ってからAR画面に意識移し、カーソルで『メタモルフォーゼ』を選び、YESを選ぶとカサードの体が淡く光り始めた。
「え……? なんだ?!」
カサードが困惑していると、カサードが光に包まれ、グググッ……とカサードの体形が変化し始める。
暫くして光が次第に薄くなり、そして光が消える、メタモルフォーゼが完了したようだ。
煙幕の中、カサードは自分の体がどうなったのかを調べる為に、まずは手から順番に触って調べる事にする……。
「え……? なんじゃぁこりゃぁ?!」




