56話 イノシシ捕獲完了・・・?
突進してくるイノシシを待ち構えていて、ふと気が付く、逃げ惑う人々と突進してくるイノシシを見比べると、イノシシの方が若干大きい様に見える。
「えっ? ちょっと待てよ…マジか?」
そう呟く間に、巨大イノシシは目の前に迫ってくる。
「こなくそっ! ダメ元で止めて見せる!」
どこを攻撃すれば良いのかを、瞬時に思考する。
足を斬るか、タイミングを合わせてジャンプして踏みつけるか……どっちにする? うむむ……。
「よし! 踏みつけ攻撃で、つんのめった時に術を発動させよう、頼むぞノーム」
カサードは地面に意識を向けて言い、イノシシに向かって走り出す。
カサードはイノシシに向かって走り出すが、近づくにつれ恐怖感が半端無く高まり、冷や汗が流れる。
微妙な距離で走りながら、タイミングを見計らって前転ジャンプ! 左足で鼻っ柱、右足で目と目の間の眉間を踵落としの様に攻撃をすると、突進力が下へ向けられた為、顎から地面を擦るように停止した。
「よし、立ち上がってまた走り出す前に術を発動させるよっ! イノシシの胴体の下にストーンテーブルを出してっ」
ズゴゴッと言う音と共に、イノシシの胴体の下の地面がせり上がり、イノシシの足が浮く。
イノシシは何が起こったのか解らない様子で、目を白黒させている、とりあえず足を動かすが、空中を掻いている。
「うん、このイノシシの機動力を無力化させたから、もういいかな? ノームありがと」
カサードは頭を掻いた後、イノシシの頭から飛び降り、ノームが居る地面に向けて一人呟く。
その様子を見ていた街の人々がワラワラと集まって来て、最初はザワザワされたが、拍手喝采される。
「いえ、ボク達は急いでいるので、後の処理は衛兵達に任せます」
カサードに近寄ってきて、握手してこようとした住民に対してやんわりと断りを入れる。
そこにシャロミーが駆け寄って来る。
「カサード様凄いですにゃぁ。こんな大きなイノシシを止めちゃうにゃんて……」
シャロミーは、巨大イノシシを見上げながらカサードに言う。
「正直、チビリそうなのを我慢してましたよぅ。あとシャロミー、ちょっと肩を貸してください……」
気を抜くと、ペタリと地面に臀部が張り付いてしまい、立てなくなりそうな気がしたので、シャロミーに肩を貸して貰い、馬車の所まで歩いて行く
「も~、カサード様ったら無茶ばっかり……。まぁ、そこがカサード様の良い所なんですが……」
シャロミーはカサードに肩を貸し、歩きながら優しく微笑む。
カサード達はその場から馬車で立ち去り、そのままサルベール国から出る。
「う~ん……このままエタンダールに戻るか、ちょっと寄り道するか……? どうする?」
カサードは、数メートル程先にある三叉路の標識を見て、不意にシャロミーにそんな提案を投げかける。
標識にはこう書かれている。
【⇗ エタンダール国】
【⇖ ドライアドの森】
「う~ん、私に聞かれても……にゃむむ……」
シャロミーは馬車を止め、悩み始めた。




