53話 再びお買い物......またお前か!
「そういえば、岩塩と海水から作った塩って、どうちがうんです?」
リリアーナが聞いてきたので、ボクは簡潔に説明する。
「岩塩にはミネラルという栄養素が無いのだ」
「みねらる? えいようそ?」
その時にボクはハッとした。
そういえば、ここはそんな時代だった事を思い出す。
栄養素とか、ミネラル等の言葉や知識は、この時代には無いのだから。
「あー……すまない、今の事は忘れてくれ」
とりあえず無かったことにしようとするが、リリアーナが好奇心で詰め寄ってくる。
「カサード様、みねらるとかえいようそとは何ですか?! 意味を教えて下さいませんか!?」
ボクは、う~んと悩みながら歩いてると、目的地のマルシェのある場所に到着した。
「あっ マルシェに着いたぞ。何を買おうかな~?」
そう言って、リリアーナの質問をはぐらかして、マルシェのある通りにそそくさと入る。
「も~! カサード様のバカッ!」
リリアーナが話を逸らされたと思い、頬を膨らませて地団駄を踏んでいる。
シャロミーは、そんな二人を見て、苦笑していた。
マルシェには、流石貿易国、と思われる程の野菜や香辛料を扱った店が、所狭しと並ぶ。
「おぉ~……凄いなぁ。とりあえず何があるのか見て回るか」
追いついたシャロミーとリリアーナ、三人で色々と売っている物を見て回る。
色々な種類の野菜や果物が並ぶ通りを、キョロキョロと見めて回るカサード達。
「お? 美味そうなパイナップルだ。おっ?! あそこのぶどうも新鮮そうだなー。流石は貿易国、品揃えが豊富ですね!」
チョコマカと店から店に動き回るカサードの速さに、付いて行くのがやっとなシャロミーとリリアーナ。
「カサード様、どんな用事で来たのか解りませんが、少し落ち着いてください!」
シャロミーが困惑して、ボクに言ってくる。
「ん? そうだなぁ……おや? ここから先はニンジンとかジャガイモを売ってるのかぁ……じゃがいも……うん、これを買って国に戻り、植えて増やすか。店主、このジャガイモを一箱買おう」
ボクは、ジャガイモを見て少し目を瞑り、思案した後に一箱程を買うことにした。
ジャガイモは、様々な料理に使えるからと思っての行動だ。
「はいよ! 銀貨3枚ね。ボウヤ持てるかい?」
野菜売りの店主が、木箱に入ったジャガイモをカサードに渡される。
ボクは店主に銀貨3枚を払い、ジャガイモの入った木箱を受け取り、シャロミーに持たせた。
野菜売り場を通り過ぎると、次は様々な香辛料を出している店が並んでいた。
「ふむ、ここはスパイス通りだな、唐辛子とか在るかなぁ?」
ボクはそう思いながら、色々な種類の香辛料が入れられた麻袋が並んでいる店舗の通りを、キョロキョロと見て歩く。
「う~ん? 別にいいか……香辛料位だったら、エタンダール国の商人ギルド長に頼めば良い訳だし……じゃがいもを買ったから、一度馬車に戻るか」
どの香辛料を買おうかカサードが眺めていたが、気が変わったので顎に手を当てて独り言のように呟く。
「シャロミー、リリアーナ、一度馬車を留めた所に戻るぞー」
馬車が留めてある場所に戻ると、シャロミーが持って来たジャガイモの入った木箱を荷台に積む。
「ふぅ……お芋って結構重いですねぇ」
シャロミーは、額から流れる汗を腕で拭く。
「すまないなシャロミー、運んでくれてありがとう」
ボクは笑顔でシャロミーに感謝の意を伝える。
「お返しは美味しい物で返してくださいね。カサード様」
そう返して来たか、と思い、ボクは微笑む。
「カサード様、お腹が空きましたわ。今日は何処へ連れてって下さるのかしら?」
リリアーナが話を振って来た。
「う~ん、そうだねぇ……また『黄弓』に行くか?」
ボクはちょっとからかう様に返答する。
「今はあそこの店では食べたくないですわ! あっさりした物が食べたいです!」
リリアーナが、頬を膨らませてソッポを向く。
「う~ん? じゃあどこで食べようかなぁ?」
三人で歩きながら、食事が出来そうな店を探していると、遠くからバタバタと誰かが走ってくる。
が、そんな事は気にしないで歩いていると、見た事がある男がボクの目の前で止まり、両肩を掴まれる。
見ると、あのキザな甘ったれ料理人のサンダーだった。
「カサード殿下! 俺の弟子になれ!
三度ヤツがやって来た! カサード君はどんな対応をするのだろうか?




