49話 クエストの準備~……
受け取った冒険者ギルド証を眺めていると、モッキンバードがボクの腕を引っ張って、様々な依頼が書いてある黒板の所に来た。
「初心冒険者のカサード様は、この2つの依頼なんかどうですか?」
と、指を差した依頼は。
【薬草採取 10個 銅貨5枚】
【アルミラージ討伐 15匹 銀貨1枚】
う~ん、薬草ってハーブでも良いのかな? それと、アルミラージってどんな動物だったっけ? と色々と考えを巡らすが、やはり『百聞は一見にしかず』と言うことで、二つの依頼を受けることにした。
期限とかは書いてないので、少し遅くなっても大丈夫なのかもしれない。
「うん、この二つの依頼を受けてみるか。んで、受けるときはどうすればいいんだ?」
良く解らないので、ボクはモッキンバードに聞く。
「あぁ、受付にこれとこれの依頼を受けます。と言えばいいんだよ」
モッキンバードの助言を聞き、ボクは受付に行き、受けたい依頼を伝える。
「えっと……薬草採集の依頼と、アルミラージ討伐の依頼を受けたいんだけど……」
「はい! 薬草収集とアルミラージ討伐の依頼を受けるのですね? では、貴方の冒険者証をご提示ください」
どうやらこの木札……もとい、冒険者証は前世世界で言う『IDカード』の様な物なんだな~、と思いながら冒険者証を受付さんに渡す。
「はい、暫くお預かりします」
う~ん、実に丁寧な対応だな……と思いながら受付さんの仕事を眺める。
登録のときに使ったタブレット端末を、冒険者証に翳すと『コン!』と木の棒で木の板を叩いたような音がした。
う~ん、ボクの国にも、あの魔道具を仕入れれば、事務仕事が捗りそうだな……と思っていると。
「どうぞ、冒険者証をお返しします。それでは、ご健闘を」
受付さんから、冒険者証がボク手元に戻ってきた。
これで二つの依頼を受けることが出来たのだろう。
「カサード様、早速狩りにいきましょう!」
と言って、僕の腕を引っ張って、冒険者ギルドの外へ出るモッキンバードは、何だか嬉しそうだ。
「……ん? モッキンバードちょっと待って。リリアーナの武器と防具どうする? 狩りに行くんだろ? それなりの格好しなきゃいけないんじゃないか? 武器屋と防具屋行ってからでも遅くないと思うのだが……」
今のリリアーナのお洒落服姿を見て、モッキンバードに提案を出してみた。
「あっ そうだね! その薄い服装じゃ大怪我してしまうね。馴染みの店を案内するよ、付いて来て」
冒険者ギルドから出て、そのまま狩りに行くつもりだったらしい。
頭を掻きながら引き返し、冒険者ギルド近くの武器・防具屋に針路変更した様だ。
モッキンバードの言う馴染みの店は、冒険者ギルドのすぐ隣にあった。
店内へ入ると、まず目に飛び込んできたのは立派な鎧だ。
そして、奥へ入ると剣や弓といった武器が並べてある。
この店は、初心者向けの武器や防具を販売してるのかな。
よく見ると、防具販売コーナーと、武器販売コーナが分かれている様だった。
とりあえず、魔法使い用の装備品を見繕ってもらおうと思い、店員を探す。
盾展示コーナーで、盾を磨いている人が居た、この人が店員だろうと思い、声をかける。
「こんにちは、魔法使い用の装備を見繕ってください。少し高くても良いです」
「あぁ 解った。装備を選ぶから、少し待ってろ」
店員は磨いていた盾を元に戻し、早歩きで魔法使い用の装備を選びに行った。
暫く待つと、店員が持ってきたのは、先端がTの形をした杖と、絹の様な素材で織られたローブを持ってきた。
「この杖はエンシェントトレントを素材として作られた杖で、このローブはアラクネの糸で織られた物だ」
装備の説明を聞いて、何か凄そうだなぁと思っていると。
「えっ!? エンシェントトレント!? アラクネの糸!?」
とリリアーナが物凄く驚いている様だった。
「ん? 何だ? そんなに凄いのか? この杖とローブは」
いまいち素材となる名前の凄さにティンと来ないボクが、リリアーナに聞いてみた。
「凄いとかそんな次元じゃないです! エンシェントトレントの素材で作られた杖を持って、魔法を使うと通常比3倍の効果! アラクネの糸で織られた物は、魔法防御最強で剣で攻撃されても矢で射られても傷一つ付かない、と言う代物の超高級品なんだから!」
えー! イキナリそんな凄い物を売りつけてくるなんて……どうかしてるぜ!
「えっと……その二品でいくらになるのです?」
とりあえず、その武器防具の値段を聞いてみることにした。
「はい、この杖とローブ二点を合わせた値段は、金貨1400枚です」
「……………………え?」
ボクは思わず絶句&目が点になる。
一品の値が、エタンダール国で購入した、打刀以上の値段だった。
えっと……商人ギルドでいくら下ろしたっけ? チラッとシャロミーに目線を送ってみるが、首を横に振った。
所持金が足りない様だ……。
性能が凄そうな杖とローブを諦める事にし、自分達だけで武器防具を見る事にした。
「私はそこそこの杖だけでいいのです……」
リリアーナはいつもの態度は何処へやら、遠慮気味に言ってくる。
色々な種類の杖の展示品を眺めて、そこそこの値段の杖を購入。
ボクは購入した杖をリリアーナに渡した。
「カサード様、装備を買ったんだから早く行きましょう!」
ボク達が武器防具屋から出ると、もう待ってられないという勢いで、モッキンバード達が是中を押す。
「も~、仕方ないなぁ」
モッキンバードに、背中を押されて歩くカサードの顔は、笑顔だった。
さてと、クエストに行くか……。
('、3)_ヽ)_ だらんぬー




