46話 イケメンに出待ちされ……
ガヤガヤと、騒がしいので、周りを見ると、学院の生徒や教師達が遠巻きに見ていた。
「おや……? この人達は? ……あっ、魔物の叫び声で、何が起きてるのか見に来たのか」
首を傾げ独り事を言いいつつ、リガルディーの方に顔を向ける。
「その様だな、俺はこの騒動の理由を説明しに行くから、日が落ちて来ているので、キミ達はもう帰りなさい」
ん……そういえば、結構暗くなってきてるな。
「解りました、今日は見学をさせて頂き、ありがとうございました!」
ボク達はリガルディーに礼を言い、カサード一行は学院出入り口の、分厚い門の所から出る。
「貴様! やっと出てきたか! ぼくと勝負しろ! もう逃がさないぞ!」
えー? なにこれ? 待ち伏せ? ストーカー? マジめんどくさい奴だなぁ……。
インハルトもどうすれば良いのか困っている。
「お前、ボクがここにいた事を良く知ってたなぁ。でも、どうしてボクに執着するんだ?」
しつこいのでボクは思った疑問をぶつけてみる。
「貴様が酷い事を言うからだ! 会う奴全員、私の料理を褒めてくれてたのに! 勝負して貴様をねじ伏せなければ私の気が済まないのだ!」
あー……変なプライドを傷つけたようだな。
どこぞのお坊ちゃまだ?
「なぁ……インハルトさん。コイツ何なの?」
正体不明のしつこい料理人は誰なのか、小声で聞いてみる。
「えっと……この方は伯爵を持つ、セジョンデワン家の次男坊のサンダーと言う男です。とにかく甘やかされて育った、と聞いております」
インハルトは、ボクにこっそりと耳打ちして、説明してくれた。
あー ナルホド、身内にもお客にもチヤホヤされてたので、キツイ本音を言われて、腹を立ててるだけか。
「えーっと……サンダー氏、店の方はどうしたのです?」
今の時間、お客が集中する時間帯なので、ちょっと聞いてみた。
「ふん! お前が店を出た後、何故かお客が全員帰ってしまった! 待っていたが、誰も来ないから店は閉めた! それとお前のせいで、私のプライドが傷ついたんだぞ!」
あれまー……ヘソ曲げてやんの。
お客が帰っちゃったのは、お前の対応が酷いからだと思うんだが……。
「そうなのかー、今日はもう暗くなってきてるから、お家に帰りなさいな、サンダーちゃん」
ボクは、彼の呆れた性格にもう嫌気が差して、おちょくる様な言葉を使った。
「きっさっまぁぁぁぁぁぁぁ! もう許さんぞ! 勝負はもういい! 殺してやる!」
あっ、おちょくりすぎてぶち切れさせてしまった様だ。彼は怒り狂って、ボクの首を絞めようと襲いかかって来た。
「貴方、止めなさい! カサード様も! 酷い事を言い過ぎです!」
シャロミーが、サンダーとボクの間に割って入る。おちょくり過ぎたボクも、シャロミーに怒られてしまった。
「あー……すまない、言い過ぎた」
とりあえずボクは、サンダーに謝罪する。
「っと、自己紹介がまだだったかな? ボクはエタンダール・カサードだ。エタンダール国の王子だったりします」
ボクは自己紹介する。
「へ?!」
エタンダール国の王子辺りの下りで、サンダーが目と鼻と口を全開という風な、間抜けな顔のまま固まって(フリーズ)しまった。
イケメンもこうなってしまっては台無しである。
「あれ? サンダー様? おーい?」
シャロミーが、サンダーの異変に気が付いて、顔の前で手を振るが、間抜けな表情は固まったままだった。
「とりあえず、和解できたと思うからもう宿に戻ろう。彼は、その内に気が付くだろうから、そのままにして置くしかないんじゃないか?」
そう言って、サンダーをそのままにし、馬車が留めてある場所に行き、馬車に乗り、ボク達が泊まっている宿まで戻ることにする。若干、彼のしつこさが気になっていたが。
「カサード様の魔法は凄かったですね。カサード様も、魔法の勉強をすれば宜しいのではないですか?」
リリアーナがそう言って褒めて来て、魔法の勉強したらどうかと促された。
「そうだなぁ 暇が出来たら勉強してみるよ」
とりあえずボクはリリアーナにそう答える。
「リリアーナ、シャロミー、夜ご飯はどこで食べる? 昨日と同じ店に行く?」
ボクは二人の顔を見ながら質問する。
「私は、昼間の店以外の高級店で食事したいですわ」
リリアーナは庶民的な店には行きたくないと言い出した。さてどうしたもんかなぁ……。




