40話 商人ギルドへ……
馬車は人通りの少なくなった漁港近くの所で止めて貰い、カサード・リリアーナ・シャロミーの三名が降りる。
監視の為のインハルトが、その後から慌てて降りてくる。
う~ん、人通りの多い所で、あんな事(活け造りパフォーマンス)したから駄目だったのかなぁ? などと考えてみる。
「とりあえず、この国の商人ギルドに行ってみるかな……っと、ついでにセールスでもするか」
と呟き、ニヤリとほくそ笑む。
「シャロミー、ちょっとキュウリ買ってきてくれ。二〇本程な」
「んにゃ? キュウリ買ってきて何をするつもりですにゃ?」
「ん 後で解る。買ったら商人ギルドに来てくれ! ボクは先に商人ギルドへ行ってるから」
「んにゃ~? 何だか解んにゃいけど買ってくるにゃ」
シャロミーに指示を出し、食菜市場へ向かわせる……あっ! ちょっとあれを持っていくか。
そう思い、カサード所有の馬車の所へ向い、あれをケースから取り出し、商人ギルドへ向かう。
「あっ! そういえば、商人ギルドってどこにあるの?」
振り向いてインハルトに商人ギルドが在る場所を聞く。
「えっ?! あぁ あそこだ。あそこの三階建てのレンガの建物がそうだ」
インハルトはギョッとした表情になったが、商人ギルドの場所を教えてくれた。
「ん……あっ あの建物か。インハルト様ありがとう」
格下相手に様付けしてみると、見事にオロオロしはじめ、挙動不審になるインハルト。
してやったりと思いながら、インハルトが挙動不審のままだが、そこはワザと放置して商人ギルドへ向かう。
商人ギルドの前に立ち、建物を見る。
エタンダール国の商人ギルドよりも、入り口のドア……と言うよりも門、と言ったほうが良い程大きかった。
その大きな門をくぐり、中へ入る。
まず、受付にエタンダール国の商人ギルドで貰った書簡を渡す。
受付さんが書簡を開き、内容を確認している……が、途中まで読んだのだろうか、顔を蒼白にして奥の部屋に慌てて駆け込んでいった。
ボクは壁際に置いてある椅子に座り、しばらく待っていると、奥の部屋からニカーブを被り、目だけ出した服装の女性? と受付さんが出てくる。
ボクの方を指差し、ニカーブの人が紙を片手に何か話している。
と、ニカーブの人と目が合った瞬間に、何故か鳥肌が立った。
全てを見透かされそうな目で見られ、背筋に冷や汗が伝う。
受付さんが話し終えたのか、元居た席に戻り、仕事を再開した様だ。
そして、ニカーブの人がボクの方へ近づき。
「お初にお目にかかる、カサード殿下。わたくしはサルベーヌ共和国の商人ギルド長、シュティーナ = オロフソンでございます。立ち話も何ですので、奥の部屋へどうぞ」
彼女は恭しくお辞儀し、奥の部屋に案内される。近くに来て解ったがこの人、高身長で単眼だ! もしかして、サイクロプスかな?
衣装の方は、多分宗教的な何かだろうなぁ……。
部屋に入ると、エタンダール国の商人ギルド長の部屋とはまるで違う、豪華な調度品等を全く置いて無い事に驚いた。
部屋に置いてあるのは、仕事用の机、交渉用の机と椅子があるだけで、実に殺風景に感じる。
とりあえずボクは席に座る。 その向かい側席にギルド長シュティーナが座る。
「カサード殿下、何用で参った? 預かっている金貨を下ろすのか?」
「いえ、もう少ししたら連れの者が来る。」
「ん? そうか」
という会話をしてる間に、受付側の方が騒がしい。
「にゃにゃ?! カサード様はどこだにゃ! カサード様ー!」とシャロミーの声。
「何ですか貴方は! ここでは静かにしてください!」と受付さんの声。
「シャロミーうるさいですわ!」とリリアーナの声。
「お? 来たようだな。彼女達を、ここに通してくれないか?」
ボクは、ドアの傍で静かに立ってる女性にお願いする。その方はコクンと頷き、ドアの向こうへ。
ガチャリとドアが開き、シャロミーが頼んで置いたキュウリの入った箱を持って入ってくる。その後ろからリリアーナも続く。
材料は揃った、ボクはニヤリとほくそ笑む。
「殿下、何を企んでる?」
ボクの笑みを見てシュティーナが警戒する。
「いや、単にキュウリを食べて欲しくてな。特別な方法で……」
ボクは懐の味噌の入った竹筒をぎゅっと掴む。
次回
中世ファンタジー世界に東洋の食文化を突っ込んでやる!




