39話 ドッキリかよ?!
ボクは憲兵に手枷を付けられ、護送車の様な馬車に乗せられる。
その時、ちょっと横を向いて見ると、野次馬の後方にチラッと黒い服の人が見えた。
なんでやろ? 8番……
なんて事を心の中で思って、和んでみる。
「そこの二人、証人として私の馬車にお乗りください」
シャロミーとリリアーナが上等な服装の男が乗ってきた馬車に乗るように促される。
「あ~……アジの刺身~……」
そんな事を嘆きながら床に転がって、護送車の中を見渡す。
う~ん、光を入れるための天窓があるが、横の窓が無い。
「どこに連れてかれるのか、解んないなこりゃ」
ガラガラと護送車に揺られ、このまま牢屋行きなのかと思っていた。
不意に護送車が止まり、暫くして後方の扉が開かれた。
憲兵に降りるように促されて降りると、何処かの立派な屋敷の広場だった。
「えっと……こんな豪華な留置場ってあったっけ?」
ボクは惚けた事を言ってみる。
「おい、早く手枷を外して差し上げなさい」
憲兵がボクに掛けられた手枷を外してくれた。
立派な衣装の人が、恭し跪く。
「エタンダール・カサード殿下、突然の無礼をお許しください。私はサルベーヌ共和国元老院議員のオルランド = モビージャと申します。モビーと呼んでも構いません。以後お見知りおきを。とまぁ、ここで立ち話は何ですから、中へどうぞ」
彼はボク達はルネサンス城風館の建物の中へ入るように促す。
玄関に入ると広いエントランスだ。そこから二階の応接室に案内される。
応接室の中は、豪華な装飾品が飾られ、真ん中にテーブルと向かい合うようにして椅子が置いてある。
「どうぞ、お座りください」
モビーにカサード達は座るように促されて、大人しく座る。モビーはボクの正面に座る
「いやぁ 急にしょっ引かれてビックリしたなぁ。普通に連れてきてくれれば良かったのに」
ボクは本音を吐露する。
「カサード様、この国で、あのような活け作り為る調理法は禁忌とされていて、教会がうるさいのですよ。もし教会の異端審問官に捕らえられたとすれば、異端扱いされ、尋問・裁判の果てに。火あぶりにされたかもしれないのです。先に見つけて、捕縛偽装で連れてくるしかなかったのです」
モビーはかなりやばい状況だった事を、ボク達に説明してくれた。
「えっ? そうだったのか……知らなかった……。 それにしても火あぶりか……」
説明を聞いて物凄く驚き、その地域国の風習に関して何も勉強してなかった事を後悔する。
「カサード殿下、この国での変わった行動を慎んでください」
モビーにやんわりと忠告された。
「はい……」
ボクはショボンとするしかなかった。
モビーはあの時、偶然その場に居合わせて助けてもらったが、二度目も助けてくれるとは限らないしなぁ。と心の中で冷や汗を出す。
「とにかく、カサード殿下には監視を付けます。護衛は間に合っていそうですからねぇ」
ぐぬぬ、皮肉っぽく笑われてしまった。
「解った、とりあえずボクは、この国にどんな食べ物があるか興味があって訪れただけなのだ」
本当の事なのだから、隠していても仕方がない。
ゴーレム技術の事はまだ聞く時期ではないだろう。
「まぁ 兎に角、海産物が新鮮なのが揃ってる事は解った。肝心の海草等が見当たらなかったような気がするが、そこの所どうなっているのだ?」
昆布が無ければ、みそ汁のダシや具材が......。
「あぁ 海草等は魚人の許可が無ければ獲れないのだ」
「ほぅ? なら……いや、なんでもない……なるほど、許可か……」
おっと、要らないことを言って、事を荒立てる所だった。
「海草が並んで無い理由は解ったから、そろそろお暇しようか。それと、危ない所を救ってくれて感謝する」
ボクは礼を言い席を立ち、部屋を出ると、リリアーナとシャロミーが後に続く。
階段を降り、玄関エントランスを抜けて屋敷を出る。
「オルランド = モビージャ様の命令により、監視をさせて戴くインハルトと申します。この町の事で解らないことがあったら、何なりとお申し付けください!」
おおぅ がちがちの軍人さんかなぁ?
「ハイ 解りました」
心の中で苦笑する。そしてモビー氏所有の馬車に乗せて貰い、町に戻ることに……




