第16話 カサードの受難 (後編)
シャロミーが騒いだおかげで、俺達の周りには人集りができた。
あまりの人だかりに憲兵もやって来た。
「ちょいとどいておくれ!」
そんな声が聞こえたと思ったら、モーゼのなんちゃらの如く人だかりが割れて、道が出来る。道の奥には女性が立っている。こちらに近づきながら。
「患者はおまえさんかい? ワシが診てやろう」
そう言うと、腰に下げていた鞘から剣を抜く。
徐ろに俺の体勢を仰向けにし、柄の宝石の部分をおでこに当てた。
俺のVR機能では【毒検知無し 原因不明】と出ている。
剣の柄に付いている宝石に[Azoth]と刻み込んである。
「ふむ……ほうほう……なるほど。これはパニック障害じゃ」
え? パニック障害……だと? えらい近代的な用語出てきたな……。
その病名を聞いたシャロミーや周りの人々の頭の上に ? が浮かんでいる。
「坊やは最近、過労気味ではないかね? 薬をやるから口を開けなされ」
無理矢理口を開けさせられ、強引に薬を飲まされた。良薬口ににが……くなかった。ライチ味で美味しい……!。
「うむ、のんだようじゃの。5分ほど横になっていなされ。じきに良くなる」
そう言って去ろうとした時、シャロミーが俺を治療してくれた女性の前に立ちはだかり。
「この度はカサード様をすくって頂き、感謝の念しかありません! 是非とも貴女の名前をお教えください!」
と騎士式に頭を下げる。
俺の容態は良くなってきたので、上体を起こしてシャロミーの様子を見ている。
「ふむ、仕方がないのぅ……、ワシの名はエリザベトじゃ」
「おお! エリザベトというのですね! その恩名、忘れません!」
とシャロミーは感動している所に、俺は水を指そうと口を開く。
「エリザベト? 偽名を言っては駄目ですよ、…………!?」
俺が本当の名前を言おうとすると、エリザベトと名乗る女性がアゾット剣を俺に向ける、すると言葉を発せられなくなった。
「折角ワシが楽な生き方を見つけたというのに、野暮な事を言う坊やだねぇ!」
その目から怒りが垣間見えたので、俺は両手を上げ降参ポーズを取った。エリザベトと名乗る女性がアゾット剣を鞘に収める。
「あー、あー、アメンボ赤いなアイウエオ! おぉ、しゃべれるしゃべれる」
俺がしゃべるのを見て、ウンウンと頷き、何やら暫く思案して、再びウンウンと頷く。
そして彼女が、こう言った。
「うむ、この町が気に入った! 坊や! 名前はなんていうんだい?」
「ボクはカサードと言います」
「では、カサードちゃんや、何処かに空いた家は無いかい? 暫くワシは宿屋に泊まってるから、見つけたらワシに連絡しておくれ」
「うん! わかったよー!」
そう言って、俺とシャロミーはエリザベトと名乗る女性と別れた。
しんどい…_(:3 」∠)_だらんぬ




